気持ちが決壊して、人に気持ちをぶつけてしまった。ああ、ダメになってしまった。そんなときこそ、「人間ってこうなるんだな」という現実を知るチャンスなのだと思ってください。

心身ともに健康でパフォーマンスの高いときには、人は同じことを他人にも期待します。人の弱さを理解できません。しかし、人間の弱さを身をもって知ると、次には他人への尺度もゆるめていくことができます。

だからこそ、まず自分に優しくなることによって、人にも優しくなれる。寛容力を高めていくには、自分に優しくなることが近道です。

――人間の本質は変わらない、という考えもあります。一定の年齢を過ぎても、物事の捉え方を変え、寛容力を高めていくことはできるでしょうか。

もちろんです。繰り返しますが、人はこうあるべき、ということをみなさんは子どもの頃に学校で習いすぎていて、その価値観を基準に、人を、そして自分を評価するクセがついてしまっています。

私はたくさんの人と接し、自衛隊の中で、戦場に行ったら、あるいは災害時に人はどうなるのか、ということも学んできました。その結果知ったことは、人間はきわめて動物的であるということ。疲れ次第で機嫌も変わるし、意見もコロコロ変わるのが人間です。今日は「NO」と言っても、明日は「YES」と言う。それくらい、常に揺れ動くのが人間なのだということをおなかの底から理解できれば、人に対しても優しくなれるものです。

(この項おわり)

【『寛容力のコツ』著者に聞く】

第1回 「ささいなことでイラッ」 寛容力が下がるワケ

第2回 寛容力低下は「暴走老人」予備軍 価値観を洗い直そう

下園壮太さん
 心理カウンセラー、MR(メンタルレスキュー)協会理事長、同シニアインストラクター。1959年鹿児島県生まれ。防衛大学校卒業後、陸上自衛隊入隊。1996年陸上自衛隊初の心理教官に。自衛隊の衛生隊員(医師、看護師、救急救命士など)やレンジャー隊員などに、メンタルケア、自殺予防、惨事ストレスコントロールについて指導、教育を行う。2015年退官。近著に『寛容力のコツ』(三笠書房 知的生きかた文庫)。

(ライター 柳本操)

[日経Gooday 2017年7月25日付記事を再構成]

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