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ヒットの原点

「八ッ橋」に新風吹き込む 京大卒後継ぎ娘の挑戦 聖護院八ッ橋総本店(上)

2017/9/7

聖護院八ッ橋総本店の鈴鹿且久社長(左)と一人娘で専務の鈴鹿可奈子氏

 創業1689年、京都で320年以上続く老舗菓子メーカー「聖護院八ッ橋総本店」(京都市)が新ブランド「nikiniki(ニキニキ)」を立ち上げたのは2011年のことだ。おなじみの八ッ橋を美しく仕上げた菓子は京都人に愛され、結婚式の引き出物にも使われている。手がけたのは、鈴鹿且久社長の一人娘で専務の鈴鹿可奈子氏。京都大学在学中に米国に留学し、プレMBA(英語での議論の仕方や課題の取り組み方などを学ぶ、MBAの準備プログラム)を修了した彼女は老舗にどんな新風を吹き込んだのだろうか。

■幼い日に食べた味が原点

 阪急電鉄の河原町駅を出てすぐ、近くを鴨川が流れる京都一番の繁華街に「ニキニキ」の本店はある。間口は狭いが、アーケード街の端に立地しているので、足を止める客は多い。なかでも評判なのは「カレ・ド・カネール」だ。

 フランス語で「カレ」は正方形、「カネール」はニッキ(シナモン)を意味する。季節ごとに変わる餡(あん)やコンフィチュール(フランス語でジャムを意味する)を、正方形の生八ッ橋で包んだ新感覚の菓子だ。店内でイートインもできる。

 取材の日、店に並んでいたのはブルーやピンクなど色鮮やかな5種類の生八ッ橋と、プラム、マンゴー、シトロン、ピーチなど8種類の餡・コンフィチュールだ。組み合わせは自由。注文すると、小さなカップに入った花びらのような生八ッ橋が出てきた。組み合わせによって値段は多少異なるが、1個あたり200円に満たないのはお手ごろと感じられる。

 「オープン当初はどういう形で提供するのがいいのか、まだ決まっていなくて……」と、鈴鹿可奈子専務は話す。カップで提供することだけは決めていたという。最初のうちはただ漠然と生八ッ橋でコンフィチュールを包んでいたのだが、社員の一人が「四隅を押さえると、花びらのようになってきれいです」と提案し、現在の形に落ち着いた。可奈子氏はこのカレ・ド・カネールに特別な思い入れがある。

 「小学生のころ、母がプロデュースしていたカフェで、生八ッ橋とリンゴのコンフィチュールを組み合わせたデザートを出していました。学校帰りに店に寄り、宿題をしながら食べていました。店はもうないのですが、もう一度食べたい、お客様にもあの味を知ってほしいと思ったことがニキニキの原点です」

 可奈子氏は京都大学経済学部在学中の04年、米カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学し、プレMBAを受けた。大学卒業後、1年間は大手信用調査会社に勤務。06年、父親の経営する聖護院八ッ橋総本店に入社した。両親に言われるまでもなく、幼いころからいずれ家業を継ぐつもりでいたという。

 「自宅から歩いて5分とかからない場所に本社があり、赤ちゃんのころから抱かれて本社に出入りしていたようです。油脂分を使用していない生八ッ橋は離乳食にもなるので、母が小さく切って食べさせてくれていました。父は仕事が忙しく、あまり一緒にいる時間がとれなかったものですから、小学校に上がると、よく学校まで送ってくれていました。その際、いつも先に工場に寄り、父と一緒に朝礼に出てから登校していました」

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