現代女性は卵子を無駄遣い? 「正しい生理」とは
現代の働く女性は、意外にも生理に対する正しい知識が圧倒的に不足!産婦人科医の吉野一枝さんに「正しい生理とはなんぞや」を教えていただきます。
生理とは、出産準備行為である
・「婦人科の問診で『出血は多いですか』と聞かれますが、そもそも他人のものを見たことがないので答えに困ります。生理について、平均値のような分かりやすい指標がほしい」(34歳)
日経ウーマンオンラインの読者からはこのように、「普通の生理って何?」という声が多く寄せられています。そこで今一度、分かっているようで意外と知らない生理について、よしの女性診療所の産婦人科医・吉野一枝さんに聞いてみることに。
そもそも、私たちにとって生理はどんな存在なのでしょう?
「女性だけが太古から生理を繰り返している理由は、それが出産のための準備行為に他ならないからです。
皆さんが『生理』と呼んでいる定期的な子宮からの出血の正式名称は、『月経』といいますが、ここでは慣れ親しんだ『生理』でお話ししますね。
排卵した卵子が精子と出合って受精卵となり、それを迎え入れるためのベッドのような役割をするのが子宮内膜です。生理はこの子宮内膜が剥がれ落ちることで起きるのですが、精子がやってこず受精が成立しなかった場合、用意していたベッドは不要になります。こうして要らなくなった子宮内膜が体外に排出される現象が生理であり、逆に言えば生理とは、妊娠しなかったからこそ起きる現象といえます。
こうしてみると、生理が単なる月一度の出血ではなく、いかに妊娠・出産と結び付いたものであるか感じていただけるのではないでしょうか」(吉野さん)
痛みや不調に気を取られがちですが、私たちの体は毎月、出産に備えていそいそと準備をしていたんですね。ちょっとだけ生理がいとおしいものに思えてきました。毎月悪態をついてごめんよ、生理……。
正常な生理の基準とは?
そして本題である「普通の生理」の基準についても、吉野さんに教えてもらいました。
「正常な生理」とは、月経周期日数が25日~38日、出血持続日数が3~7日ほどといわれています。日経ウーマンオンラインの読者アンケートの回答を照らし合わせてみると、大半の人は「正常な生理」の範囲内でした。
8日以上出血が続いている人や、1日で生理が終わってしまうという人は、婦人科を受診したほうがいいとのこと。また、3カ月以上、正常な生理の範囲を外れている人も注意が必要だといいます。
「ストレスで1回くらい生理がこない月があっても問題ないですが、それが続いていたら危険です。また、『2カ月に1回ペースだけど定期的に生理があるからいいや』と思っている人もいますが、この場合も正常な周期範囲外ですので、ぜひ受診をしてください」(吉野さん)
現代女性は出産の高齢化や出産人数の減少により、昔に比べて10倍以上、生理がきているといわれています。そしてこの生理過多が、体のマイナートラブルや子宮内膜症といった婦人病を引き起こしているのです。
「女性の社会進出が進み、誰もが主体的に生きられる道が開けたことは喜ぶべきこと。しかしその一方で、生物学的観点から見れば、妊娠せずに生理がずっと継続している現代女性の生き方は不自然といわざるを得ません。生理は健康のバロメーターですが、生理があり過ぎる今の状況は、実は不健康なんです」(吉野さん)
私たちは卵子を「無駄遣い」している?
「毎月排卵があることも問題」だと吉野さんは続けます。
「というのも、卵子は質のいいものから排出されていってしまうため、妊娠の予定がないのに毎月排卵していること自体、非常にもったいない状態です。出産を考えているなら、排卵や月経は卵巣や子宮に負担をかけているだけなので、お休みさせることも大事です」(吉野さん)
将来妊娠・出産を考えている人はもちろん、生理の悩みを抱えている人に吉野さんがおすすめするのが、ピルの服用です。ピルというと避妊薬のイメージが強いですが、生理をコントロールする上でも非常に有効で、生理痛や病気の予防にもなり、肌がきれいになる効果もあるのだとか。現在、生理痛の治療薬として保険適用されているピルは5種類あるそうです。
「まだまだ日本では誤解されている面が多いですが、生理痛を抑えるために鎮痛剤を飲むより、ピルを服用したほうがよほど安心で安全です」(吉野さん)
この人に聞きました
産婦人科医・臨床心理士。よしの女性診療所院長。高校卒業後、"フリーター"、CM制作会社を経て、32歳で帝京大学医学部入学。著書に「婦人科医が教える 誰にも聞けない生理のお悩み解決法」(彩図社)「40歳からの女性のからだと気持ちの不安をなくす本」(永岡書店)など。
(ライター 小泉なつみ)
[nikkei WOMAN Online 2017年8月17日付記事を再構成]
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