「役職インフレ」はカッコ悪い 体面重視の肩書は不要ワークスアプリケーションズの牧野CEO

ワークスは、今でも変わり者が多いと思います。でも昔はもっと変わった人が多かったのです。当時、私は採用、特に中途採用の場面で「試験の結果がよくて、面接受けが悪い人を信じて採用しろ」と話していました。口下手だとか、コミュニケーションが苦手な人は、多くの会社の面接でうまくいきません。高い能力があって人当たりもいい人が、有名でもない、将来どうなるかわからない会社にくるはずがないと思ったから、そう指示したのです。

牧野氏は「スペシャリストを大事にしたいと思っていた」と話す

本当に優秀なら、今いる会社で活躍できるからやめるはずがないですよね。だから、一見すべてがそろっているような人がいても、「なぜ中途採用で当社に来ようというのか」と疑問にも思ったし、採用もしなかったくらいです。そういう社風だから、そもそもマネジメントに向いている社員が少ないのです。

スペシャリストとマネジャー、どちらがえらいのか

「スペシャリストを大事にしたい」という思いもありました。多くの企業では、ある特定の分野で経験を積み、能力があっても、スペシャリストは、組織の部長よりどうしてもポジションが下になってしまいます。しかし、私は「優れた社員だが、マネジメントには向かない人も大事にしたい」と思っていました。そこで仕事はスペシャリストだとしても、1人でも部下がいれば「マネジャー」ということにしたのです。部下が増えたら、うまく管理できないかもしれないけれど、「能力を発揮する背中を見せている」なら、マネジャーでもいいということです。

評価のシステムにも、この考え方を反映しています。当社の評価制度は「複数の上司・同僚による多面評価」です。他社では、上司からも部下からも評価を受ける360度評価というのがはやっています。当社の場合も「部下が上司を評価する」仕組みはありますが、その結果を給料などを決める人事考課には反映しません。当社の人事評価の軸が「マネジメント能力」ではないからです。上司について、部下が「きちんと組織のモチベーションを上げる行動ができていない」と評価したとします。これで、その人が部下に信頼されていないというのはわかります。しかし、それと「優秀で会社に貢献しているか」という評価は別なのです。

絶えずジレンマはあります。今、会社は社員6000人を超えるまでに大きくなっています。「こうなるとマネジメントも必要だ。きちんとやっていこう」ということになり、マネジメントの責任者である阿部(COO)とも意識的にマネジャー教育に力をいれています。しかし、「年齢が上がったから」「ベンチャーだからこそ、ハッタリも必要」といった理由で役職をつくる気はありません。マネジメントは、社員のパフォーマンスを引き出すためにこそ必要で、役職やポストはその目的に沿っていなければならないからです。

牧野正幸
建設会社などを経て1996年にワークスアプリケーションズを設立。2017年2月まで、中央教育審議会委員も務めた。兵庫県出身。54歳。

(松本千恵)

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