管理職は率先して休暇を取れ! 任せてチーム力も向上ダイバーシティ進化論(村上由美子)

2017/8/19
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夏休みの季節がやってきた。私の勤務する経済協力開発機構(OECD)は本部がパリにあるため、多くの職員が1カ月近い夏季休暇を取る。欧州諸国では長期休暇が普通であり、オンとオフのメリハリをつけた働き方をすることが労働生産性向上の必要条件であるという考え方が浸透している。確かに、世界中を飛び回り仕事をする同僚達の集中力には脱帽する。彼らは8月になるとバカンスで頭と体をリセットし、休暇後は再びエネルギッシュに働き始める。

日本人の長時間労働は問題視されているが、欧米でも過酷な激務が横行している職種もある。長年働いた米国の投資銀行業界は、その一つだ。ニューヨークで初めてマネジャーになった頃の私は、休暇をほとんどとらず、毎日長時間仕事をしていた。周囲には体調不良や家庭の事情で職場を去る同僚も少なくなかった。優秀な部下を引き留めるには休暇をしっかりとってもらい、働きやすい環境を整えることが必要だと感じた私は、チームに休みを取得するよう常々言っていた。

しかしその年の勤務評価で意外な指摘を受けた。360度評価システムでは、部下や同僚からも匿名で評価される。上司である私が休暇を取らないので、いくら休めと言われても休みづらい雰囲気がある、との部下からの指摘だった。大いに反省をした私は、その後長期休暇を取得し始めた。

思い切って休んでみると、自分がいなければ回らないと思い込んでいた仕事を同僚や部下に任せることで、チームワークの向上や人材育成に役立つことが分かった。私自身も、仕事に無関係の環境に一定期間身を置くことが、人生や仕事に対する大局観を育むことになり、やる気を起こさせてくれることに気付いた。

日本の法的な有給休暇日数は世界標準だが、取得率は5割未満と先進国最低レベル。主因は職場の雰囲気ではないだろうか。まずは管理職が先頭をきって休暇を消化し、休みやすい社風を醸成することが必要だ。

昭和のモーレツサラリーマンの価値観はミレニアム世代には共有しづらい。優秀な人材を引き付け育成するために、休暇取得は企業として真剣に取り組むべき課題である。ちなみに私は3週間の休暇から戻ったばかりなので、このコラムも一気に書き上げることができた。休暇明けは特に生産性が高いと我ながら実感しているところである。

村上由美子
経済協力開発機構(OECD)東京センター所長。上智大学外国語学部卒、米スタンフォード大学修士課程修了、米ハーバード大経営学修士課程修了。国際連合、ゴールドマン・サックス証券などを経て2013年9月から現職。米国人の夫と3人の子どもの5人家族。著書に『武器としての人口減社会』がある。

[日本経済新聞朝刊2017年8月14日付]

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