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白河桃子 すごい働き方革命

出口治明氏「メシ・風呂・寝る」から「人・本・旅」へ ライフネット生命保険創業者 出口治明さんインタビュー(前編)

2017/8/23

白河 長時間労働をすると、能率が上がっているのではなくて、「仕事をした気分」になっちゃうんですね。

出口 その通りです。生産性とは全く関係のない、脳の自衛作用なんです。例えば、次のような興味深い話があります。福島第一原発事故が起こった時、東京電力の幹部たちが必死で会議をしていました。

その時の録画を見ると、気力・体力・能力に優れたエリートたちが必死になって議論しているのに、時間の経過に従って能力が下がっていくことが確認できたのです。相手の発言がすぐに理解できずに、聞き返す頻度が増え、ボキャブラリーの数が減っていくのです。物理的に長時間労働は持たないということを端的に示した例でNHKで放送されました。

では、どうすれば生産性を高められるかと言えば、僕はいつもこんなことを提案しています。労働時間を2時間×3、4コマにして、ちゃんと休んで、「人・本・旅」の生活をすることです。

「人・本・旅」とは、人に会う。本を読む。最後の「旅」は、現場のことです。おいしいパン屋さんができたら、行って、買って、食べて、初めておいしさが分かります。脳に刺激を与えなければ、アイデアなんか出てこないんですよ。

長時間労働をして、ただ「メシ、風呂、寝る」を繰り返す生活では、日本の経済はもう持たないのです。

出口さんは「女性が輝く社会にしないと、経済は伸びない」という

■生産性向上に、女性活躍は必須条件

出口 もう一つ、生産性を伸ばすために大事なことがあります。それは、「女性の活躍」です。

今、サービス産業は、全産業の約74%を占めています。サービス産業のユーザーの多くは、女性です。例えば、デパートに行くと分かりやすいですよね。

白河 確かに、デパートが8フロアまであったら、そのうち婦人服売り場は4フロアくらいあって、紳士服売り場は1フロアしかありません。

出口 サービス産業のユーザーの6~7割が女性であれば、供給サイドにも女性がいなければ、いいアイデアが出るはずがありません。もっと分かりやすく言えば、「日本経済を支えている」と自負している50~60代のおじさんに、消費を支えている20~40代の女性の欲しいモノが分かるか? ということなんです。

無理でしょう? 需給をマッチングさせなければ、経済は伸びません。実は、これが、欧州でクオータ制(企業の取締役会の一定数を女性とすることなどを義務づけた制度)が導入された理由なのです。

白河 世界各国でも、売れるモノやサービスを作ろうと思えば、そのマッチングに女性は不可欠ということですね。

出口 そうです。女性が輝く社会にしないと、経済は伸びません。そのためには、みんな分かっていることですが、男性が早く帰って、家事、育児、介護をシェアしなければなりません。

まとめると、生産性を上げるためには、二つのことが必要です。一つは、「メシ・風呂・寝る」から「人・本・旅」に切り替えるために、長時間労働をやめること。もう一つは、サービス産業の6~7割を消費しているのが女性なのですから、女性を積極的に登用しなければならないということです。

白河 本当にその通りだと思います。政府が掲げる「一億総活躍プラン」で最初に挙げられたことは、女性活躍、男性の家庭参加のために、欧州並みの労働時間上限をつけましょうということでした。

ところが、働き方改革実現会議に入ると、だんだん「女性活躍」や「男性の家庭参加」がなくなって、生産性の軸だけが強くなってきてしまったんです。経営者を説得するためには仕方ないとは思いますが。「生産性=業務効率改革」という働き方改革がはやっていますが、私は、それは違うのではないかと思っています。

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