急坂も楽々、足漕ぎできる電動バイク 折りたたみ可能

日経トレンディネット

ハイブリッドモードでペダルをこぐと、クランクに設置されたセンサーが感知し、自動的に後輪の電動モーターが駆動。背中を押されたような加速力を実感できた
ハイブリッドモードでペダルをこぐと、クランクに設置されたセンサーが感知し、自動的に後輪の電動モーターが駆動。背中を押されたような加速力を実感できた
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「glafitバイク」は、一見、今どきの小径自転車だが、実は後輪にインホイールモーター、フレーム内に細長い小型バッテリーを搭載する電動バイクだ。スロットルを回すと電動モーターで走る他、電動アシスト自転車のように、足こぎとモーターの推進力の両方を使った「ハイブリッド走行」も可能。坂道もスイスイ上れて、万が一バッテリー切れしたときは、ペダルをこいで走れるため、街乗りでも遠出でも、安心・快適に走行できる。国内クラウドファンディング史上最高支援額を達成した斬新な電動バイクの特徴と魅力とは? クルマのパーツ開発・販売会社で開発元のファイントレーディングジャパン社長の鳴海禎造氏に聞いた。

ファイントレーディングジャパン社長の鳴海禎造氏

モーターを人力が助ける「逆転の発想」

――どこからどう見てもスタイリッシュな小径自転車……と思いきや、実は原付き免許が必要な電動バイクにペダルを付けた新しい乗り物ですね。しかも、クラウドファンディングのMakuakeで実施しているプロジェクトでは、1台税込み12万7500円と電子アシスト自転車並みの価格です。

見た目はスタイリッシュな小径自転車だが、実は最高時速30km、フル充電でスペック上は約45km走行可能なペダル付き電動バイク。カラーは、ホワイトツートン、スーパーブラック、ファッションカーキ、ミカンオレンジ(写真)の4色

鳴海禎造氏(以下、鳴海): ハンドル部のスロットルを回すことによって電動モーターで走行でき、ペダルをこいで進むこともできます。あるいは、ペダルこぎと電動モーターの推進力を合わせた「ハイブリッド走行」も可能です。ハイブリッド走行モードでペダルをこぐとセンサーが感知して、自動的にモーターが回り始める仕組みです。人力と電動の両方を使って走ることができることから、私たちは「ハイブリッドバイク」と呼んでいます。

電動バイクはさまざまなメーカーが販売していますが、「万が一バッテリーが切れたら」と不安に思って購入を躊躇(ちゅうちょ)する人も多いのではないかと思います。「そうであるなら、ペダルを付ければいいのでは」と発想して作ったのが、このglafitバイクです。これなら、少なくとも動力がゼロになることはないので、毎日、安心して乗ることができます。車体重量は18kgで、一般の自転車より少し重い程度なので、足こぎだけでも難なく走ることが可能です。

――従来の電動アシスト自転車との違いは何ですか?

鳴海氏: 電動アシスト自転車はペダルのクランク部にモーターを搭載し、足でこぐ力をモーターによって補助(アシスト)するもの。法律でモーターの力はこぐ力の最大2倍に、時速24km以上ではモーターアシストをゼロにするように制限されています。つまり、主に走り始めのペダルが重いときに、あくまで足こぎをラクにする目的で作られています。一方、glafitバイクは後輪に搭載されたインホイールモーターが独立して駆動し、それに足でこぐ力が上乗せされます。また、あくまで電動バイクなので、電動アシスト自転車のようなモーターの力の制限もなく、推進力は電動アシスト自転車よりも段違いに高まります。

――実際走ってみましたが、足でこぎ出して後輪のインホイールモーターが回り始めると、背中をポンと押されたような小気味よい加速力を実感しました。それに、急な坂道も人力と電動のハイブリッド走行によって、スイスイと上れて、全く疲れなかったのには驚きました。

鳴海氏: 坂道がスムーズに上れることもglafitバイクの大きなメリットです。実は、従来の電動バイクのユーザーが最も不満に思うことの一つが、モーターの力が弱いため急な坂道を上り切れないこと。であれば、モーターの出力をもっと上げればいいと考えるかもしれませんが、そうすると、今度はバッテリーの減りが早くなってしまいます。モーターとバッテリーのバランスを考慮すると、どうしても現状の出力が限界で、正直、多くの電動バイクが坂道を苦手としているのが実情。

glafitバイクのモーターも他の電動バイクと同じ程度です。しかし、glafitバイクには「人力」という武器があります。モーターの力で上っているとき、足でペダルを軽くこぐだけで、推進力が増すため、坂道を難なく上れるわけです。電動アシスト自転車は人力でこぐ力をモーターが助ける。それに対して、glafitバイクは逆にモーターを人力でこぐ力によって助ける。そうした逆転の発想によって、電動バイクの課題だった急坂の登坂問題をクリアしているわけです。

「100年後にも残るブランド」として立ち上げた

――glafitバイクの開発元のファイントレーディングジャパンは、そもそも車載カメラやLEDヘッドライトなど、クルマのオプションパーツを開発・販売していた会社ですよね。なぜ、ハイブリッドバイクを開発したのですか?

鳴海氏: 情報通信コンサルティングや経営コンサルティングを手がけるフォーバルの創業者、大久保秀夫さんとの出会いがきっかけです。大久保さんの著書『在り方』や『決断』を読み、それまではただ目先の楽しめる事業だけを追いかけてきた私は、経営やビジョンの大切さを説く内容にただならぬ感銘を受けました。ぜひ直接話を聞きたいと、講演会に顔を出し、結局弟子入りしてしまったのです。

弟子になったからには売り上げアップの秘訣や成功の法則などを教えていただけるだろう――。私はそう期待したのですが、最初に言われたのが、「どれだけノウハウやツールを身に付けても、自分の中で在り方(軸)がないと、絶対に成功しない」ということ。そして、「100年ビジョンを創れ」と発破をかけられました。つまり、100年後に自分がこの世からいなくなっても、会社として成し遂げたい大きな志をトップ自らが掲げ、それに向かってまい進することが重要だということです。その考え方が自分の中で腑に落ちて、自分はどうしたいんだろうと顧みたときに、乗り物というカテゴリーで世界の人たちに驚きや感動、笑顔を届けられる存在になりたいという強い思いが込み上げてきたのです。

その後、社内コンペによって「glad(うれしい)」と「fit(適切な)」を合わせた造語である「glafit」を100年後にも残すブランド名として決定。そのブランドから出す第1弾の乗り物が、電動バイクにペダルを付けた斬新なglafitバイクというわけです。

――ハイブリッドで走行できること以外にも、優れた特徴があるようですね。

鳴海氏: 折りたためて、持ち運びができること。約18kgなので、大人の男性であれば、片手で持てますし、専用ケースに収納して電車に乗って携行できます。クルマのトランクに積んで、レジャー先の手軽な移動手段に使うことも可能。あるいは、会食でお酒を飲んだ後、タクシーのトランクに積んで帰ることもできます。さらに、ハンドル部にUSBポートを取り付けられ、容易に外出先でスマホをはじめとするガジェットを充電できます。車体の鍵には、通常のキーシリンダーに加えて指紋認証システムを採用し、ユーザーの指先一つで開閉できます。指紋は20人まで登録可能で、数人の仲間でシェアするできます。このように便利な機能、先端のテクノロジーが随所に備わっています。

車体重量は約18kgで、一般的な自転車より少し重い程度。コンパクトに折りたたむことができ、男性であれば片手で持てる。専用ケースに入れて、電車で携行して移動することも可能
後輪に備え付けた鍵は、一般的なシリンダー方式に加え、指紋認証システムを採用。登録した指の指紋をタッチするだけで、鍵の開閉ができる。指紋は20人分登録が可能
オプションでハンドル部にUSBポートを付けられる。2.1Aの高出力のため、スマホなどを素早く充電できるのがメリット

――安全面やデザイン性のこだわりは?

鳴海氏: glafitバイクは自転車の厳しい安全規格を満たすため、あえて検査機関でフレームの耐性試験を受けて合格しています。また、ブレーキは、プロトタイプではホイールを挟み込んで制動し、軽くて安価なVブレーキでした。しかし、ブレーキパットが減ると制動が落ちる可能性があるリスクを考慮し、フレーム設計を見直して、前後ともにディスクブレーキに変更しています。デザイン面では、電動アシスト自転車のようにバッテリーが見えてしまうことを避けるため、フレーム内に収める構造を採用。見た目がスタイリッシュになり、フレームで守ることによって、バッテリーの変形によるショートや発火の防止にもつながります。

バッテリーは直接、家庭用電源(100V)の電気プラグを本体フレームの差し込み口に接続して充電する方法のほか、バッテリーを取り出して充電することもできる。また、外出先などで別売りの予備バッテリーと交換も可能

――実際にスピードや走行距離はどのくらい出るのでしょうか?

鳴海氏: 原付きバイクの法廷制限速度は時速30kmなので、約30km以上は出ないようにリミッターを設定しています。バッテリーは空っぽの状態からフル充電に4~5時間かかり、カタログスペック上ではフル充電で最大45km走行が可能です。これは乗車する人の体重、道路状況(平たんかどうか)、気温によって変わってきますが、ハイブリッド走行にすれば、それだけバッテリーの消費は抑制されるため、航続距離は45kmよりもっと伸びるはずです。普段からハイブリッドの省エネ走行をメインにするなど、自分に合った使い方を楽しんでいただければと思います。

Makuakeの支援額は1億円を突破

――ペダルが付いた電動バイクは国内では斬新ですが、海外にはありますか?

鳴海氏: 海外では多くの製品が販売され、街中でも見かけます。海外でペダル付き電動バイクは法律的に自転車のカテゴリーに区分されているため、手軽に乗れて、普及が加速しています。ですが、日本では原付きバイクに区分されるため、運転免許やヘルメットが必要で、歩道を走ることもできません。さらに、海外製品をそのまま輸入しても、ヘッドランプやブレーキランプなど保安部品が日本の法律に適合していないため、登録はできず、公道も走れません。これが今まで国内での普及を妨げてきた主な理由でしょう。そうした制約があるなか、当社では市場性があると踏んで、今回、日本の保安基準を満たしたペダル付き電動バイクをリリースしました。

クラウドファンディングで華々しくデビューしたglafitバイク

――国内のマーケットについてはどのように考えていますか?

鳴海氏: 電動バイク市場は日本ではまだ小さく、年間1500~2000台売ると、歴代で最も売れた電動バイクになります。それくらいまだ小さな市場なのです。そうであるなら、新しいマーケットを作ればいいというのが私の考えです。

第一ステップとしては、年間1000台を安定的に生産、出荷できる販売力を付けたいと考えています。ターゲットユーザーとして、まずクルマも原付きバイクも持っている人には絶対に刺さると思っています。その次に、クルマかバイクのいずれかを持っていて、チョイ乗り用として興味を示していただけるユーザー。もう一つが、自転車を所有し、今後電動アシスト自転車へのステップアップを考えている方。最後にバイクにもクルマにも乗ったことがない方々。これらのユーザーをglafitバイクの斬新さ、スタイリッシュさを武器に、掘り起こしていきたいですね。

――クラウドファンディングのMakuakeで5月末にプロジェクトを立ち上げると、わずか3日足らずで初回分の405台が完売し、好調な滑り出しでしたね。

鳴海氏: 年間で最低でも1000台の出荷を目指しているわけですから、初回分があっという間に完売してくれないと困ると思いつつ、内心はどうなるかことかとハラハラしていました。ただ、実際に需要の大きさを目の当たりにして、市場性があると踏んだ私たちの判断に間違いはなかったと、今は自信を深めています。Makuakeは8月29日までプロジェクトを続行しており、595台を緊急追加しました。大きな需要があることが判明したので、2017年9月以降の一般販売に向けた生産計画、販売計画を大幅に見直している最中です。

Makuakeのプロジェクトサイト

――Makuakeの追加分も順調に消化され、支援額は1億円を超えて日本のクラウドファンディング史上最高額を達成しました(2017年8月9日現在、約1億2335万円)。調達した資金はどのように活用されますか?

鳴海氏: 各パーツの金型を作るなど、量産化に向けて設備を整える資金にしたいと考えています。今回のMakuakeで売れる見込みが立ったため、近い将来に銀行融資なども受けやすくなるでしょう。現在は中国の工場で組み立てを行っていますが、今後認知度が広がって、ユーザーがさらに開拓できるめどが付いたら、次のステップとして、地元和歌山で大量生産できる工場の建設も進めていきたいですね。glafitバイク自体もシリーズ化し、例えば買い物などに便利なようにカゴを取り付けたモデルや、スポーツモデルなども展開していきたい。その次の一手につなげるためにも、今回のファーストモデルを着実に売っていくことに力を注ぎます。

※glafitバイクは、ナンバー登録、自賠責保険の加入、ヘルメット着用、免許携帯が必要

(文 高橋学、写真 高山透)

[日経トレンディネット 2017年7月26日付の記事を再構成]

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