南イタリアの洒落者は、力を抜いて「白」を着る
お宅訪問・私物拝見 「服は体を表す」
装いで個性を発揮することに手間を惜しまないと言われるイタリアの男性たち。どんな暮らしがファッションセンスを磨くのでしょうか? 南イタリアで洒落(しゃれ)者のご自宅を突撃訪問。コーディネートはもちろんクローゼットまで見せていただきました。スタイルにしっかりと核がある人は、それが男のカッコよさとしてにじみ出ています。
兄弟でテーラーを営んでいた父親と叔父の会社を、5年前に31歳で受け継いだマウロ・ジャンフラーテさん。トラディショナルとモダンを融合した斬新なテーラーリングで知られる、南イタリアのマルティーナ・フランカを本拠地とするアウターブランド「イーヴォ」のオーナーです。これまでの大量生産式ビジネスを続けるか、自分の求めるハイクオリティーな少量生産に転向するか悩んだ末、新たな道を選んだといいます。
「詩人がその思いを詩に残すように、それぞれの世代が自分の信じる道を選び、それをまた次世代が共感し、共用していく。先代と違うことをすることが、彼らの意思に背(そむ)くということではないと思うのです」と語ります。
たしかにマウロさんのスタイルは、Tシャツ&スニーカーが基本。イタリアのクラシコスタイルとは一線を画します。しかし、この新しいエッセンスとの融合により、単なるラフではない、モダンでエレガントな新しいカジュアルスタイルが確立されているのです。
こなれた印象を作る白T 白スニ使いのお手本
基本スタイルはミニマムなカジュアル&スポーティー。「夏でも冬でもホワイト、グレイのグラデーションを着ることが多いですね。差し色で、くすんだパステルカラーを取り入れることも」(マウロさん)。
テラコッタカラーのイーヴォのアウターが、石造りの建物に映えます。
マウロさんの5スタイルとクローゼットのアイテムをご紹介!!
【STYLE 01】 カラーTシャツも、×(かける)白で大人っぽく着られます
スタイルの基本といえるTシャツ。お洒落に見えるその秘訣は、オーダーメードにありました。絶妙なサイズ感はクラスアップにつながります。 「風景、建物、自然…。空間に溶け込むようなコーディネートが好きなんです」とマウロさん。スポーティーなのにあくまでも品よく見えるのは、サイズ感や素材感に妥協のないこだわりがあるからこそ。どのスタイルもホワイト系ですがすがしい印象です。
最初のスタイルは、海沿いの港町モノーポリの入り江で撮影。
「南イタリアの海と空の色に溶け込むような、美しい発色のTシャツをチョイス。白のパンツ&スニーカーで爽やかに着こなしました。青の文字盤が気に入っているパテック フィリップの時計も合わせてコーディネート」(マウロさん)。
【STYLE 02】 シックな色合わせもリネンコートで洒脱(しゃだつ)に
背景の建物は、マウロさんの別荘。アルベルベッロの有名な建築物"トゥルッリ"で、世界遺産にもなっています。
「リネンのコートに黒のパンツ&シューズを合わせた、シックでメリハリの効いた装いが白い壁に映えます。Tシャツはなじませ色のグレイを選択」(マウロさん)。
【STYLE 03】 グレイのパンツで引き締めた白が主役のコーディネイト
今回はマウロさんの愛する故郷である、プーリア州の美しい街で撮影しました。海と太陽と白い建物…。クラシックながら明るくて爽やかな街並みには、ジャケットよりカジュアルなショートブルゾンが映えます。大人の着こなしを披露していただきました。
白のショートブルゾンには、ダークグレイのパンツを合わせて落ち着いた雰囲気にコーディネート。
「必ずどこか一点に、ポイントカラーを入れて引き締めます。パンツは緩めのシルエットが最近の好み。週末の散歩のときは、いつもこんなスタイルです」(マウロさん)。
【STYLE 04】 大人のエレガンスを叶えるリネンブルゾン
「ナイロンとリネンのリバーシブルブルゾンは、カジュアルすぎないところがお気に入り」(マウロさん)。
友人とアペリティフするときや、ディナーでもよく登場するアイテムの一つだそう。パンツとシューズをブラックにすることで、自然にブルゾンがコーディネートの主役に。
【STYLE 05】 スポーツモードなアウターはシンプルに徹して攻略する
ハイネックショートブルゾンはスポーツ度が高いため、難しそうに見えますが…。
「ライトグレイのベーシックパンツとホワイトのTシャツ&スニーカーを合わせて、シンプルに着れば簡単です」(マウロさん)。黒よりも紺のアウターのほうがモードになりすぎず攻略しやすい!
【ITEM 01】スニーカーは真っ白、革靴は黒と決めています
「カジュアルなコーディネートしかしないので、白スニーカーの出番が多いですね。逆に革靴はブラックのみ。肝心なのは、スニーカーを真っ白に保つこと。ヴィンテージ仕様のスニーカーは私のスタイルではありません。コモンプロジェクトがお気に入りです」(マウロさん)。
夏前から初秋にかけて滞在するというトゥルッリの別荘にて、クローゼットを拝見。
【ITEM 02】Tシャツはすべてオーダーメードです
「シャツよりTシャツが、今の私には合っていると思います。気に入った形にオーダーメードしているので、既製品とは着心地がまったく違います。カラーはホワイト、グレイやブラックが主流。たまに差し色として、水色やくすんだピンクを着ることもありますよ」(マウロさん)。
【ITEM 03】テラコッタやグリーンなどアースカラーのアウター
夏はコットン、リネン、もしくは風よけ用にナイロン製を選ぶことも。色のトーンにはとても敏感だそう。
「ベーシックカラー以外では、太陽の光に映える素焼き陶器のようなテラコッタ色、岩壁に生える野生の草木色など、アースカラーを合わせるのが好きです」(マウロさん)。
【ITEM 04】いちばんのお気に入りはブレスタイプのパテック
「特に時計のコレクターというわけではないですが、やはり美しいものには惹かれます」(マウロさん)。
写真上は、IWCのポルトギーゼ。中央のパテック フィリップのノーチラスはいちばんのお気に入り。下のゼニスは友人の結婚式の立会人(証人)をしたとき、お礼にプレゼントされたものだそう。
【ITEM 05】抜け感のあるスタイルには薄い色のレンズが合います
「レンズの色は、どれも透明感のある薄めのものばかり。白を基調にしたスタイルに映えます」(マウロさん)。
写真上が、サンローラン。中央のオリバーピープルズは、夏場に愛用しているサングラスの一つ。下もオリバーピープルズ。ダーク系のコーディネートによく使うそうです。
【ITEM 06】ベルウィッチのパンツは色違いで購入しています
「パンツはほとんどがベルウィッチ。最近でいちばん気に入っているブランドなので、白、グレイ、黒のものはすべて購入しています。ジャケットより、ブルゾンを合わせることが多いですね。パンツは新しいマテリアル、素材のよさを重視しています」と、マウロさん。
Photograph/Massi Ninni Composition & Text/Minako Shimada Edit/Yumi Matsubara
[MEN'S CLUB 2017年7月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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