8月は日本にとって特別な月のような気がします。8月6日は広島原爆の日、8月9日は長崎原爆の日、そして8月15日が終戦の日。6日と9日の式典は必ずテレビ中継があり、原爆が投下された時刻にテレビの前で一緒に黙とうされる方も少なくないでしょう。
この時期は戦争関連のドラマやドキュメンタリー、映画、アニメーションなどの放映が増えます。戦争を直接体験した世代はだんだん少なくなり、ドラマなどを通してのみ戦争の時代を知る人たちが増えているのでしょう。私もなるべく見ておきたいと思っていますが、最近は痛ましくて見るのがつらいと感じることが多くなりました。
戦争には関連しませんが、やはり8月になると思い出す出来事があります。1985年8月12日は、日本航空123便の墜落事故が起きた日です。墜落した地点が私の住む群馬県内であったため、毎年ご遺族が御巣鷹山に登っていることが伝えられると、やはり胸が痛くなります。
月遅れのお盆がある8月は、祖先の霊と向き合う時期でもあります。子どもの頃はただ「夏休み」としか思っていませんでしたが、今は8月は「鎮魂の月」という思いが強くなっています。
外国人観光客が「訪れてよかった」という広島、長崎、沖縄
原爆が投下された2つの都市にある広島平和記念公園と長崎平和公園は、修学旅行も含め、訪れたことがある方も多いと思います。両者に比べると、沖縄の平和祈念公園はやや知名度が低いかもしれないと思っていましたが、ジャパンガイドの統計から意外なことが分かりました。
ジャパンガイドでは、ウェブサイト上で、紹介している観光地に行ってきた人の「満足度」を常に調査しています。2014年に夫ステファン・シャウエッカーが上梓(じょうし)した『外国人が選んだ日本百景』(講談社+α新書)はその調査結果をまとめたランキング本で、外国人観光客が「行ってよかった」と評価した100位までの観光地とその理由を、シャウエッカーが解説しています。
驚いたのは、戦争関連施設である広島平和記念公園、長崎平和公園、沖縄平和祈念公園の3カ所すべてが100位以内にランクインしていたことです(沖縄については平和祈念公園、旧海軍司令部壕=ごう=、ひめゆりの塔なども含めた「沖縄の戦争遺跡」という総称になっています)。
出版当時は全国約900の観光スポットを掲載していたので(随時増えています)、その中でトップ100に入ること自体、すごいことでした。戦争関連施設の3カ所を外国人観光客がそんなに高く評価しているとは……と非常に感激したことを覚えています。ちなみに広島平和記念公園は15位、沖縄の戦争遺跡は34位、長崎平和公園は60位でした。
外国人観光客がこれらの戦争関連施設を訪れ、現在も高い評価を示している理由は何でしょうか。改めて夫のステファン・シャウエッカーに聞いてみました。以下、シャウエッカーが語ります。
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ステファン・シャウエッカー: 旅の目的は人それぞれですが、日本国内の戦争関連施設について「見よう」「見ておきたい」と思う外国人観光客は必ずいます。「楽しい体験」「ショッピング」「リラックス」を主な目的として日本を訪れる人は多いですが、「勉強」のために来る人もいます。
私の出身国スイスの人たちは「学ぶため」に日本に来る人が多いと思います。自分もそうでした。日本に行ったら文化や歴史を学ぶのと同時に、広島と長崎にも絶対に行きたいと思っていました。原爆については本などで読んで知っていたので、必ず両方行くと強く心に決めていた記憶があります。