大人気の「糖質制限」 他の方法より効果的?データで見る栄養学(2)

日経Gooday

「低糖質でも低脂質でもどちらでも、とにかく摂取エネルギーを控えれば減量効果が期待できる」と佐々木さん(c)Andrey Cherkasov -123rf

佐々木 体重の増減はエネルギー摂取量の問題が大きいので、まず、摂取エネルギーを少し控えてみてください。体が軽くなった気がしたらウオーキングにも挑戦しましょう。

編集部 体重計にのるのが楽しくなったら、もっと体に良いことをやりたくなるかもしれませんね。しかし、なぜ、糖質制限ダイエットはこんなにも人気になったのでしょう?

佐々木 脂質やエネルギーの制限が比較的ゆるいところや、「パレオリシック・ダイエット(旧石器時代食)」に似ていて体や遺伝子に「自然」な感じがするから、などが考えられます[注8]。確かに魅力的ではありますが、問題もあります。

編集部 体重に目立った影響をもたらさない点ですか?

佐々木 いいえ。糖質制限ダイエットは食料生産効率[注9]が悪いのです。糖質制限ダイエットでは、食事に占める肉や野菜の比率が高まりますが、動物を生産するには、植物(穀類)を生産する場合よりもエネルギーを使います。なかでも肉、とりわけ牛肉は生産効率が悪く、牛肉を生産するには、米を生産する際の71倍ものエネルギーを投入しなければなりません。これは、71人の中の誰か1人が米を食べる分を牛肉に変えると、残りの70人が飢えることを意味しています。

編集部 なるほど。私たちがダイエット法を検討している一方で、飢餓に苦しんでいる人がいることを忘れてはいけないですね。それに、主食である米やパンより肉や野菜のほうが高価なので、「糖質制限はお金がかかって続けられなかった」という声も聞きますね。

佐々木 ダイエットも経済と関係していますし、「サスティナブル・アース(持続可能な地球)」という視点も持ちたいものです。さあ、あなたはどんなダイエット法を選びますか?

[注8]ヒトの遺伝子は狩猟採集民時代にほぼ固定されたため、そのころの食環境に似ている今の「低糖質食」に適応しているという考え方。

[注9]収穫できるエネルギーに対して人為的に投入しなければならないエネルギーの比。

【データで見る栄養学】

第1回 健康情報の落とし穴 「××は体にいい」を疑ってみる

佐々木敏さん
東京大学大学院医学系研究科 社会予防疫学分野教授。医学博士。1994年、大阪大学大学院医学系研究科博士課程修了、ルーベン大学大学院医学研究科博士課程修了(ベルギー)。2007年より現職。早くからEBN(evidence-based-nutrition:根拠に基づく栄養学)に注目し、日本初の食事摂取基準の策定に貢献。日本の栄養疫学研究の中心的存在。近著は『佐々木敏の栄養データはこう読む! 疫学研究から読み解くぶれない食べ方』(女子栄養大学出版部)。

(ライター 村山真由美)

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