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キャリアコラム

成長しながらモテる働き方 パラレルワークのすすめ エッセイスト・講演家 潮凪洋介

2017/9/17

7つの仕事をするパラレルワーカーの矢加部英達さん

 好きな仕事をいくつもやりながら、毎日を楽しく豊かに過ごしたい――そんなことを言うと、多くの人は「それは無理だ。夢みたいな生活などできっこない」と否定が先にくる。だが、時代は転換のときを迎えている。働き方改革の一環として副業を解禁する企業が増え、政府も「モデル就業規則」を見直して原則容認する方針だ。関心が高まるパラレルワーカーの先達を例に、公私ともに充実した日々を過ごすためのヒントを紹介しよう。

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矢加部英達さん

 矢加部英達さん(47)は、現在7つの仕事に携わる。アパレル関連の人材紹介会社と完全出来高制の業務委託契約を結んでいるほか、異業種交流イベントの主催、アパレルショップの運営アドバイス、結婚相談所の運営、人生設計コーチング、コミュニケーション力を向上させるためのコンサルティング、司会業と、その内訳も多彩だ。

 以前は会社の仕事一本だったが、10年前から現在のワークスタイルに移行した。40歳のときに離婚したものの、今は独身貴族を謳歌。東京湾岸のファミリータイプのマンションで一人暮らしをしながら、休日は8人乗りのワンボックスカーを操り年代を超えた仲間とのレジャーを楽しんでいる。

■まずは何でも顔を出してみる

アクセサリーショップの運営コンサルティングで

 矢加部さんはパラレルワーク成功の秘訣を「興味を持ったら何でも関わってみること」だと語る。実際に現場に行ってみると、「あ、これ面白いな」とどんどんハマっていくケースもあれば、「やっぱり違う」とそれっきりになることもあるそうだ。

 「お金にならなくても、人脈が広がったり、技能が身についたり、あるいは心底楽しいと思えるものには関わっておいた方がよいですね。お金を出しても買えない感動やときめき、未来への投資となる人脈や知識、感性、そして友情や恋愛などが手に入るからです。お金持ちになっても簡単に手にできないのは、そうした『人生にとってかけがえのないもの』じゃないですか」(矢加部さん)

 「逆に、お金を稼ぐためだけの仕事を増やすのは失敗の原因になります。苦しいだけでは疲弊してしまいますから」(同)。すぐにお金になるもの、今を充実させるためのもの、未来に向けて投資するものを分け、バランスをとりながら取捨選択していく。そのためにはまず行動し、自分でじっくり相性を確かめることが大切だという。

■本業と相乗効果が得られる社外ワークを選ぶ

矢加部さんが主催する異業種交流会

 異業種交流会を頻繁に開催し、月に10万円前後を手にする矢加部さんだが、それは交通費などに消える。しかし、そこで得た人脈は本業であるアパレル関連の人材紹介業に大いに役立っている。「販売スタッフのリクルーティングに欠かせない場になっています。明るくて第一印象の良い女性を企業やショップに紹介します。もちろん仕事を探している本人からも感謝されます」(矢加部さん)

 一方で、「好き」なだけで始めたレストランへの投資は失敗したという。「東京・恵比寿の美食レストランには大きなお金をつぎ込みました。実はこのとき、私は一時的に人材紹介会社と正社員の契約をしていて、店のことを大々的に宣伝したり、ウェブやメディアに出たりできなかった。もし業務委託や契約社員の立場だったら、その店を拠点にさまざまな仕事をつなぎ合わせて相乗効果を出せたと後悔しています」(矢加部さん)

■きっかけは会社の仕事への違和感

熊本地震被害に対するボランティアツアーの打ち合わせ

 矢加部さんは新卒時の1990年代、アルバイトニュース「an」を発行する学生援護会に就職し、午前9時から午後9時ごろまで経営企画室での業務に没頭した。2006年に同社がインテリジェンスに吸収合併されたことに伴い、アパレル系の人材紹介の仕事に就き現在の本業のスキルを得るが、08年にUSENの連結子会社となりスマートフォンの法人営業に業務転換した。

 しかし、自分が本当にやりたい仕事と実際の職務との乖離(かいり)を感じ、パラレルワークを本格的に開始する。さまざまな場所に顔を出し、好奇心の赴くままに行動した。最初に手掛けたのが、マクロビオティック料理教室のイベント。開催は2年間に及び、多くの新たな人脈を得ることができた。

 その頃、私生活で離婚を経験したが、あえてパラレルワークを強化していく。培った人脈の中からビジネスパートナーを見つけ、人材紹介会社も立ち上げた。本業で思い通りの仕事ができず、離婚という厳しい現実に直面しながらも、起業やその他の社外ワークが「自己喪失を防ぐ命綱」になり、よいスパイラルを生み出したという。

■求められるプロフェッショナル意識

矢加部さんが運営する結婚相談所のクリスマスパーティー

 「10年前は複数の仕事をしているというと信用されない時代でした。正社員になれないから派遣や業務委託になるという見方をされていたと思います」と矢加部さんは振り返る。「でも今は違います。それぞれの分野でプロフェッショナルとして見てもらえる。その分、プレッシャーもあるし顧客の見る目も厳しいですが、自己成長につながります。一つ一つの仕事がシナジーを発揮して、より質の高いサービスが提供できていると感じます」(矢加部さん)

 「収入も安定しているし、充実感も大きい。逆に、45歳を過ぎて会社から与えられた仕事をこなしているだけでは、老後のことを考えても怖いし、何よりつまらない。それにいつも楽しそうにしているからか、こんなオジサンが会社員のときとは比べものにならないほどモテますね(笑)。孤独を感じる暇もありません」(同)

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 好きな仕事で効率的に稼ぐため、あるいは定年後の公私の充実や、結婚・出産後の在宅ビジネスにつなげるため、パラレルワークを選択する人が増えている。矢加部さんのように、旺盛な好奇心と行動力、コミュニケーション力で、自分の適性に合った仕事を見つけ、ネットワークを広げることが成功の第一歩かもしれない。

潮凪洋介
 エッセイスト、講演家、ハートランド代表取締役、潮凪道場代表。「好きを仕事にする」パラレルワークを推奨する講演、ワークショップ、コーチングなどを実施。2016年に「目黒クリエーターズハウス」を開設。著書は「もう『いい人』になるのはやめなさい!」(KADOKAWA)、「大人の男の気遣い」(SBクリエイティブ)など50冊以上。早稲田大学卒。

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