星野源、吉岡里帆で若返り どん兵衛CM、自己最高位
2017年6月度 CM好感度月間ランキング
日清食品「日清のどん兵衛」がCMの新キャラクターに星野源と吉岡里帆を起用。CM総合研究所が発表する6月度の銘柄別CM好感度ランキングで、自己最高となる総合4位となった。どん兵衛は発売から41年目を迎えたロングセラーだが、若い世代へブランドを訴求するため、CMのキャストや内容を一新した狙いが当たった。
「♪どん兵衛のきつね食べてたら いつでも私と一緒だよ」という歌が流れるなか、部屋で星野がどん兵衛を食べていると、きつねの耳をつけた吉岡ふんする「どんぎつね」が現れる。そして星野がおあげをかじるたびに、吉岡が「あ、痛っ」と体を押さえる。この「どんぎつね」編と、どんぎつねの存在を疑う星野に、吉岡が「ほら触って」などと言う「どんぎつね出てきません」編の2つが5月18日からスタートした。
モニターの感想は、2人の表情やしぐさ、やりとりが「かわいい」という声が圧倒的。吉岡が歌う曲や、「♪孤独な男のまぼろしです」と歌い踊るダンスも好評だ。
日清食品ホールディングス宣伝部の安武雅之係長によると、「狙いは若い人にあらためてブランドを身近に感じてもらうこと」。というのも、どん兵衛の喫食率が伸びているのが18~25歳の男女。近年展開している若年層をターゲットにしたCMやウェブでの宣伝が効いており、それをさらに強化するため今回の新シリーズを立ち上げた。
星野源と吉岡里帆の起用も、若い世代を意識してのこと。星野は音楽や演技などマルチに活躍するアーティストで、2016年に出演したドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』で大ブレイク。ファンは女性だけでなく、コントやラジオで若い男性からの支持も高い。吉岡はNHKの連続テレビ小説『あさが来た』で注目され、ドラマ『カルテット』(TBS)での悪女の演技が評判になり、ドラマ、CMなどに引っ張りだこの女優。いずれも、今が旬のタレントだ。
「ブランドを訴求するにあたり、ふっくらしたジューシーなおあげがどん兵衛きつねうどんの特徴なので、おあげの別名でもある『きつね』をキャラクターにして、おいしさやふっくら感を訴求しようと考えました。そこで、ふっくらかわいい『どんぎつね』の役を吉岡さんに。彼女とのバランスを考えて、相手役の淡々とした男性を星野さんにお願いしました」と安武氏は起用の狙いを語る。
設定も、どん兵衛のCMとして初めての試みに挑んだ。10年以上キャラクターを務めた中居正広に続き、前作は加山雄三と佐藤健のコンビと、男性で和のイメージが続いていたのに対して、今回は初めて恋愛の要素を取り込んだ。「今まで手を出さなかったキュンキュンする世界観を、あえてブランドとしてやってみたかった。ネットでの反響などを見ても、2人の関係がこの先どうなるということも含めて、想像力をかきたてる展開が若い世代に受け入れられているようです」(安武氏)
続編を秋に向けて制作中
CM総合研究所によると、好感要因は「商品にひかれた」が全銘柄中で1位、「かわいらしい」と「セクシー」が同じく2位、「心がなごむ」が同じく3位だった。関根心太郎代表は「40年以上売れ続けているロングセラーで、誰もが食べたことがあると思いますが、それでもなお『商品にひかれた』が1位になるのはすごいこと。具材のおあげを訴求するとなると、厚さや製法を言いたくなるものですが、それをせずに、2人のやりとりで食べてみたい気持ちにさせるのはキャストとクリエイティブの力ですね」と評価する。
CMのクリエイティブディレクターを務める福部明浩氏は、大塚食品「MATCH」やアキタのブランドたまご「きよら グルメ仕立て」なども手がけている。最近では、NTTドコモとMr.Children(ミスターチルドレン)の25周年ムービーを手がけて話題を呼んだ。
キャストや設定を一新して、変化を打ち出したどん兵衛のCMだが、実はストーリー自体のどん兵衛らしさは変わっていない。「1970年代の山城新伍さん、川谷拓三さんの時代から、2人のかけあいで、ほのぼのとしたストーリーが続いていくのはどん兵衛のCMの王道。そこは外さずに、続編を秋に向けて制作中です」(安武氏)
長く愛されているロングセラーの核となるテイストは継承しつつ、キャストや設定で旬の要素をうまく取り入れ、ブランドを若返らせたCMの好例といえそうだ。
(日経エンタテインメント! 小川仁志)
■当月オンエアCM:全2668銘柄
■東京キー5局でオンエアされたすべてのCMを対象に、関東在住の男女モニター3000人に、好きなCM・印象に残ったCMをヒントなしに自己記述してもらい、その得票数を足し上げたもの
■同商品の複数作品にオンエア・好感反応がある場合、代表作品は最もCM好感度の高い作品
■企業・銘柄名・作品名はCM総合研究所の登録名称であり、正式名称と異なる場合がある
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