しんどかった婚活 男性全員が「子どもを希望」
[川本麻里さん(仮名) 第4回]

こんにちは。ライターの大宮冬洋です。今日は、10年間恋人がいない川本麻里さん(仮名、35歳)とのおしゃべりの最終回です(前回記事はこちら)。愛知県内の中堅メーカーで総合職として働く麻里さんとは、名古屋の住宅街にある総菜カフェでランチをしながら話しています。
麻里さんはインタビューにも快く応じてくれて、楽しくおしゃべりしてくれます。昔はワガママだったそうですが、緊張感漂う製造現場でもまれた今では気遣い上手の大人になっています。ただし、プライベートでは不器用な一面が出てしまうようです。
「結婚にはずっと興味がありませんでした。両親の仲が悪かったので、ロールモデルが身近にないんです。幸せな結婚生活が想像もつきません」
とはいえ、パートナーは欲しいという気持ちもあります。いろいろな感情があって当然ですよね。2年前から1年間、結婚相談所とネットを併用した婚活をやってみたそうです。
「命をすり減らした1年でしたね……。10人ぐらいと会いましたが、好意を持てない人と一緒にいることはしんどいです」
背が低いのを気にする男性 私は気にならないのに
麻里さんが会ったのは26歳から42歳までの男性たち。かなり年齢に幅がありますが共通点があります。全員が「子どもが欲しい」と希望していることです。子どもが欲しいと思ったことはないし子育てをする自信がない麻里さんは戸惑いを覚えました。恋愛感情よりも結婚生活の条件などが先立つと重苦しい気持ちになってしまいますよね。
それでも「嫌じゃない」と思った男性がいました。会社員の智明さん(仮名、42歳)です。3回ほど会い、結婚を前提に交際しようかどうか迷ったという麻里さん。なぜ先に進まなかったのでしょうか。
「お付き合いするのが面倒になってしまいました。彼は自分の背が低いことを何度も口にします。あまりにネガティブ発言を繰り返すので、私の上司にも背が低い男性がいるけれど、そんなことを感じさせないぐらいすばらしくて器が大きな人だと何度も言ってあげました。でも、相変わらず気にするんです。私はヒールの靴を履くと170センチを超えてしまうので、変に気にされるとオシャレもできません。同じぐらいの身長の男性と目の高さを合わせて笑ったりできることをうれしく感じる女性もここにいるのに……」
自分の体にコンプレックスがない人はむしろ少数派だと思います。僕だっていろいろありますよ。Lサイズの男性用帽子でも入らないほど頭がでかい、などです。でも、気にして引っ込み思案になっていたら自分は損をするし、周囲は面倒臭いだけですよね。
腹回りや口臭など改善できることは努力したほうがよいですが、頭蓋骨を小さくすることはできません。「昔の俳優はみんな顔が大きかった。小顔ではなく、いい顔になることを目指そう」ぐらいに割り切る必要がありますよね。僕たちはとっくに大人です。自分のコンプレックスぐらい自分で処理しましょうよ。
ずっと一緒にいたいと思える10歳年下の後輩
つい自分に言い聞かせてしまいました。麻里さんの話に戻ります。彼女は、結婚相談所などを介して知り合った「赤の他人」と結婚を前提にデートを重ねるのは自分には合わない、と判断したようです。今、再び職場の男性に目を向けています。10歳年下の後輩である洋一郎さん(仮名)です。
「仕事に勢いとガッツがあります。若いので経験値は足りないけれど、すぐに成長するはずです。先輩の私に対しても変にへりくだることはなく、自分の思ったことを率直に言ってくれます。私も彼の前ではポンポンと言葉が出てくる。どうでもいいような話もできて、笑いもあって、スルーや否定をされず、打てば響くような会話ができるんです。そういう人って貴重ですよね。ずっと一緒にいてもいいな、と思ったりします」
洋一郎さんは未婚ですが彼女がいるようです。女性と対等なコミュニケーションを楽しめて、仕事にも励んでいる25歳。これからますますモテそうですね。成長が楽しみです。
最後に、麻里さんにささやかなアドバイスをしてもいいでしょうか。それは、人を好きになる前に自分を好きになる、です。これが意外と難しい。先ほど言ったように、僕たちは皆コンプレックスを抱えているからです。
どうにも自分の価値が低いように思えてしまうときは、自宅で「今朝の私、イケてる。かわいい!」とか「今日も一日頑張った。エラい!」などと口に出して言ってみましょう。実は僕も時々実践しています。ちょっとバカみたいですけど、自分の声であっても褒め言葉はうれしいものですよ。テンションが上がり、少しだけ自分を好きになったりします。そうすると、自分に好意を寄せてくれる人の姿が見えてくるものです。お互いに好きだと思える相手を見つけられるといいですね。候補者は麻里さんの周りにきっといます。
(来週は新たなキャリア女子が登場します)
フリーライター。1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに就職。1年後に退職、編集プロダクションを経て02年よりフリーに。著書に『30代未婚男』(共著/NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました』(ぱる出版)など。電子書籍に『僕たちが結婚できない理由』(日経BP社)。読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京・愛知・大阪のいずれかで毎月開催中。
ライター大宮冬洋のホームページ http://omiyatoyo.com/
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