暑い日が続くが、酷暑を乗り切るために、スポーツ栄養学の知見を活用してはどうだろう。立命館大学スポーツ健康科学部の海老久美子教授に「スポーツ栄養学を活用した夏バテ防止のための食対策」について聞いた。猛暑とも闘う高校球児を支えた、栄養満点のそうめんレシピもご参考にどうぞ。
夏野菜で水分補給を
「夏バテは複数の原因が重なって起こる」と、海老教授は話す。例えば、
・暑さによって強いストレスと脱水が起こる
・食欲が低下するために、エネルギーや栄養素が不足する
・冷たい食物を食べることが多いために、消化力が低下する
・室内と屋外の温度差が激しいために、自律神経が乱れる
……こうした要因が複合して、夏バテは引き起こされる。
夏バテの原因の一つである脱水を予防するためには、水分補給が重要だ。喉が渇いたと感じたときには、すでに体内の水分は不足しているので、運動の前後や運動中、入浴前後、睡眠前、起床後などには時間を決めて水分補給をするとよい。
我々は食べ物からも水分補給をしているので、食欲不振で食べる量が減ると水分量も減ってしまう。海老教授は、「野菜は約9割が水分なので、少し塩を振りかけて食べれば、まさに天然のスポーツドリンク。新鮮な夏野菜や果物を食べることは、夏場の大切な水分補給になる」と語る。
夏の疲労回復に重要な栄養素は糖質とビタミンB1
夏の疲労回復に役立つ栄養素について、海老教授は「まず、糖質とビタミンB1をしっかりとること。ビタミンB1は糖質をエネルギーに変えてくれるので重要」と話す。
ビタミンB1は、肉類では豚肉、穀類では玄米や全粒粉、豆類では大豆や大豆製品、魚介類ではウナギ、サケ、アユ、魚卵、小魚、小エビなどに多く含まれる。ほかにも、ゴマ、クルミ、キノコ、海藻などにも含まれている。
さらに海老教授は、「食欲が落ちる夏は、たんぱく質、ビタミンCが不足しがちになるので、これらの栄養素を含む食材を意識的にとるとよい」と続ける。
たんぱく質を多く含む食材は、肉類、卵、乳製品、豆類、魚介類など。ビタミンCを多く含んでいて夏にとりやすい食材には、モロヘイヤ、キウイフルーツ、ブロッコリー、ピーマン、芋類、ゴーヤなどがある。ビタミンCは、紫外線や活性酸素から体を守ってくれるので、夏には欠かせない栄養素だ。
そして、「夏バテを防止するために、ぜひ活用してほしいのが『一物全体(いちぶつぜんたい)』の食材」だと海老教授は話す。一物全体とは、丸ごと食べられる食材のこと。卵、貝類、小魚のように、一部分ではなく丸ごと食べることのできる食材には、その生命体を維持するための多種類の栄養素が含まれている。食欲が低下して、多くの品目を食べることが難しい夏には、一物全体は効率良く栄養がとれる食材である。
栄養価の高い具を入れたそうめんは夏に最適
海老教授は、滋賀県立彦根東高等学校野球部の食事指導をしているが、同校が2013年に夏の甲子園大会に出場した折、選手たちは暑さと疲労で食欲が落ちてしまった。「そうめんなら食べられる」という選手の声を聞き、関係者や父母とともに、そうめんの上にのせる具を工夫して、不足しがちな栄養素をとらせて大会を乗り切ったという。
そうめんは食欲の落ちがちな夏でも喉を通りやすく、糖質はもちろん、具でたんぱく質、ビタミンB1、ビタミンC、その他の栄養素をとることができるので、夏バテ防止には格好の食事だ。以下にレシピを紹介するので、ぜひ活用してみよう。