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井上芳雄 エンタメ通信

井上芳雄 演技は「背中」で演じるのが一番難しい 第1回

日経エンタテインメント!

2017/7/15

 井上芳雄です。ミュージカルやストレートプレイの舞台を中心に、コンサートなどの音楽やテレビ、映画といった映像の仕事もしています。今年はラジオやナレーションも始めました。舞台を本業としながら、これだけいろんな分野のエンタテインメントで活動している俳優は珍しいと思いますが、とにかく何でもやってみるのが僕の信条。活動が多岐にわたる分、日々新しい発見や感動があります。そんな僕が感じたり、考えたりしたことを「エンタメ通信」として、お届けしたいと思います。

『グレート・ギャツビー』 東京、愛知での公演を経て、7月4~16日大阪・梅田芸術劇場メインホール、7月20~25日福岡・博多座で上演 写真提供/東宝演劇部

 5月から7月にかけて『グレート・ギャツビー』というミュージカルの舞台に立ちました。原作はF・スコット・フィッツジェラルドの小説で、何度も映画化されている名作です。映画ではロバート・レッドフォードやレオナルド・ディカプリオが演じたギャツビーを僕が演じました。

 原作を世界で初めてミュージカル化したのは宝塚で、1991年に初演しました。今回の上演は、その宝塚版を手がけた小池修一郎さんが脚本・演出を新たにして、ブロードウェイでも活躍されているリチャード・オベラッカーさんが音楽を書き下ろしたオリジナルミュージカルです。

 舞台は1920年代、禁酒法時代のアメリカ。ギャツビーは大邸宅に住み、毎夜豪華なパーティーを開いている大富豪ですが、その過去は謎に包まれています。実は、彼には裏の顔があり、パーティーを開いているのも、かつて愛し合いながらも別れてしまった最愛の女性デイジーとの再会を願ってのことなのです。

 原作や映画と比べると、今回のミュージカル版はロマンチックな部分が強調されているのが特徴だと思います。ギャツビーの性格は、原作の印象よりもはるかにロマンチストで、いつデイジーに会っても恥ずかしくない男でありたいという一途な愛に生きる男の姿が押し出されています。セットも豪華で、衣裳も華やか。演出の小池さんの美学やロマンがすごく出ていて、演じていても面白いなと思いました。

 やはり音楽の力は大きいですね。歌にのせて思いを語られると、物語がドラマチックでロマンチックなものになって、高揚感をもたらすのがミュージカルの醍醐味です。

■初めての徹底したアウトロー役

 僕自身のことでいうと、ここまでアウトローの役は初めてでした。20歳のときに『エリザベート』の皇太子役でデビューして、38歳になった今まで、陽というか善のイメージの役が多かったんです。苦しい状況にあったとしても、耐えて皆のことを愛するといった役柄です。ところが今回のギャツビーは、自分の思いを遂げるだけのために悪にも手を染めるという徹底したアウトロー。そういう役はやってこなかったので、最初は戸惑いました。でも稽古を始めたら、今までやってきたいろんな役の要素を彼が持っていることがわかり、あまり違和感なく、楽しく演じることができました。

 これまでの役との共通点で一番強く感じたのは、ハムレットに似ているということ。彼は、とても孤独な人です。誰も信じずに生きてきて、裏社会での地位を築き、デイジーへの愛も自分の中だけに秘めてきた。本当はデイジーと結ばれることで、その孤独感が消えたのでしょうが、かなわなかったことが悲劇を招きました。

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