熱中症は大きく2つに分けられる。炎天下など気温が高い中で体を動かすことで起こる「労作性熱中症」と、体を動かさなくても起こる「非労作性熱中症」だ。

死亡者のうち、8割は「非労作性熱中症」

前者は若者から中年が起こしやすく、圧倒的に男性が多い。一方、後者は高齢者に多く見られるタイプで、男女差はない。また、発症しても治療すればすぐに回復する労作性熱中症に対し、「非労作性熱中症は予後が悪く、熱中症による死亡者の8割はこちらのタイプです」と三宅教授は指摘する。

「熱中症の実態調査 ―日本救急医学会Heatstroke STUDY2012最終報告―」のグラフをもとに編集部で改変

それぞれ典型的な症例を見てみよう。

【労作性熱中症】18歳男子・アメフト試合中:
 キャプテンで中心選手だった。数日前より風邪気味で前日は緊張もあってよく眠れなかった。高校最後の大会で活躍を期待されていた。試合途中から吐き気と倦怠(けんたい)感、頭もぼんやりして手足のしびれを自覚。ハーフタイムにベンチに座ったまま動けなくなった。

「試合中に体調が悪くなったが、自分が頑張らないと、という責任感が強く『休ませてほしい』と言い出せなかった。スポーツによる熱中症が起こりやすい典型的な状況で、無理することで重症化しやすくなります」(三宅教授)

【非労作性熱中症】78歳女性・老老介護中:
 脳梗塞で寝たきりになっている81歳の夫を一人で介護していた。本人のパーキンソン病も進行していた。エアコンは嫌いなので使わない。梅雨明けで暑さの続く7月下旬、夕飯の準備をしているときに倒れる。数日後、連絡が取れず心配して訪ねてきた娘が発見。室内はサウナのような状態で、夫婦ともに熱中症になっていた。

「老老介護の場合、介護しているほうが熱中症で倒れると、介護されているほうも熱中症になってしまう。特に梅雨明けの7月下旬は一気に熱波が来るにもかかわらずまだ体が暑さに慣れておらず、最も熱中症を起こしやすい時期です」(三宅教授)

応急措置は「FIRE」(炎)と覚える

日本救急医学会では熱中症を重症度でI度、II度、III度に分類している。I度は意識障害がなく、応急措置と見守りで済むレベル。II度は集中力や判断力の低下が見られ、医療機関の受診が必要なレベル。III度は特に症状が重く、入院が必要なレベルだ。

「一般の人はI度とII度を見分ける知識が求められる。ポイントは意識の有無と、自力で水を飲めるかどうか。ペットボトルなどを容器ごと手渡して、一人で水を飲めるかを確認してください。うまく飲めなければ意識障害があるII度ということ。すぐに医療機関に連れていきましょう」と三宅教授。

日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2015」の図をもとに編集部で改変

応急措置については、「FIRE」というキーワードを覚えておこう。F(Fluid)は水分補給、I(Icing)は冷却、R(Rest)は安静、E(Emergency)は119番通報だ。「意識がもうろうとしていたら、すぐに救急車を。その場合は逆から、つまりE、R、I、Fの順番で応急処置をしてください。意識がない場合、無理に水を飲ませてはいけません」と三宅教授はアドバイスする。

なお、環境省では熱中症の基本情報、予防法、応急措置などをまとめた「熱中症環境保健マニュアル2014」を出している。環境省のホームページから無料でダウンロードできる(http://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_manual.php)ので、ぜひ目を通していただきたい。

三宅康史さん
 帝京大学医学部救急医学講座教授。帝京大学医学部附属病院高度救命救急センター長。1985年、東京医科歯科大学医学部卒業。さいたま赤十字病院救命救急センター長、昭和大学医学部教授などを経て、2016年より現職。日本救急医学会評議員。熱中症環境保健マニュアル編集委員。

(ライター 伊藤和弘)

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