紅ショウガは「夏の味」? 冷やし中華などに不可欠
紅ショウガ(4)
青森県の方との間で「たぬきケーキ」が話題にのぼった。ぽんぽこたぬきの形をしたケーキで、中は大方バタークリーム、表面がチョコレート。お目めも耳もついているケーキである。
私は甘いものを食べないのでお菓子・ケーキ関係にはとても暗く、たぬきケーキの容貌にはニヤリとするものの、そのなんたるかを全く知らない。
何十年も前から全国に点在し、大手パンメーカーも商品化したことがあるらしいのだが、世代や育った場所によって「知ってるとも」という人と「何それ」という人に分かれるのだそうである。
デスクとベティー隊員は知らず、アミー隊員は「子どものころ食べていました」と言う。
そのたぬきケーキを置いている店が、なぜか青森県の南部地方に集まっているという話で、B-1グランプリ発祥の地である八戸の老舗お菓子屋さんにもあるとのことであった。
紅ショウガいってみよう。
一方、どれも美味しいオフィス街のオアシス・手作りパンの移動販売『エッセン』の焼きそばパン。いわゆる"焼きそばロール"風ではなく、丸っこいパンの中の具が焼きそば。頂に紅ショウガをトッピング。
コレはアレですよ、《記号》ではないでしょうか? 例えばお土産とか差し入れで各種1個ずつ多数を買ってって消費を他人に委ねた場合、紅ショウガがトッピングされてるコトから何となく"具は焼きそば?"とみんな何となくわかる気がするンです。実際、私自身が《紅ショウガののった丸っこいパン》からは《具が焼きそば》と連想してしまいますから(中林20系中林52さん)
私は焼きそばパンを食べないので詳細に観察したことがない。しかし何となく「紅ショウガがついているもの」と思いこんでいた。意外にそうでもなかったようである。ではこれからは安心して焼きそばパンを食べることにしよう。
と言うより、関西にしろ東京にしろ紅ショウガがやたら多いような気がします。稲荷寿司になんで紅ショウガがくっついてくんの…まぁ東京の稲荷寿司は確かに甘いから、ああいう味のとんがったのがくっついてくるのかもしれないけど。透明な出し汁で作り、ナルトの入った中華ソバにも紅ショウガは入れない。
ところで「おらぶ」という言葉は広島でも使っていました(広島県人@三茶さん)
確かに東京の食べ物では紅ショウガが活躍している。大阪ではもっと活躍しているのではないか。九州も同様であろう。
東北の状況については中林20系中林52さんから、もう1通のメールが届いている。
《肉&ご飯には紅ショウガ》って、東北においてはY野家以外あまりなじみのないものなんでしょうか? そもそも東北って漬け物自体が多種多様だし。入り込む余地がない?
漬物王国である東北には紅ショウガ不要論というのはスルドイ指摘かもしれない。チョロギの漬物もあることだし。
ただ冷やし中華(冷めん、冷やしラーメン、冷風めん)の季節になると、いやでも全国的に赤いものが氾濫することであろう。よけるの大変なんだよね。
デスク 紅ショウガだけ大盛りにしてもらうのも大変なんだよね。
この国ではこうなの?
1.本当に日本人の経営(味OK)
2.実は中国系とか韓国系の人が経営(味は許容範囲なんだけど、何か少し違う)
3.オージーがとりあえず日本風な感じのメニューで(???な組み合わせや素材で、味は問題外)
という3パターンがあります。
その中で2と3の日本人以外の経営の和食屋さんでは、みごとに何にでも紅ショウガがのっている確率が非常に高いです。親子丼に紅ショウガ、カレーに紅ショウガ、餃子に紅ショウガ、トンカツに焼き魚に紅ショウガ…しかしさすが、世界的に有名な和食の代表格の「すし」には、ガリがついても紅ショウガはつきません。「すし」のチカラを見たような気がします(きんさん)
2と3の業態で働く非日本人には、日本人は何にでも紅ショウガを添えて食べる民族であると認識されていると考えられる。こんなことでいいのであろうか。アメリカ人にはケチャップさえ与えていれば何とかなるとか、野瀬にはチャンポンさえ食わせていれば3日はもつとかいうのと同じレベルの認識ではないだろうか。
間違っているのである。私は4日はもつのである。
突然だが、紅ショウガ問題は今回で終わる。テーマ設定の誤りである。私が悪かった。めんご。
それで次回からテーマを「ご当地アイス・冷たいもん」とする。青森のチリンチリンアイスについてでもよく、今はなき甘太郎のアイスキャンデーでもよく、冷やしあめでもよく、次のような内容でもよい。
卵+練乳+氷をミキサーで破砕し、作るタイプです。この作り方は祖母から教えてもらったいわゆる家庭の味らしいです。もしかすると、製氷機の普及や氷屋さんの軒数に、食べるミルクシェーキが広がらなかった要因があるのではないでしょうか(眞島さん)
「ミルクセーキとプリンアラモード」のときに登場した「食べるミルクセーキ」。長崎が発祥らしいが、佐賀や久留米にも存在する。
再論になるものがあっても、この際かまわない。
北部九州の一部地域では「せ」が「しぇ」になることは広く知られている。森昌子のデビュー曲はその地域にあっては「しぇんしぇい」であった。
デスク片足立ちで、右手を上げ手首を曲げて シェーっ!
その伝で「ミルクセーキ」が「シェーキ」と発音されるのであるが、偶然にも英語の「シェイク」により近い発音になったのはめでたいことである。
かつて日本はご当地アイスの宝庫であった。地場のアイスクリーム、アイスキャンデーメーカーがたくさんあった。しかしその数は急激に減ってナショナルブランドの数社寡占状態になりつつある。
広く販売したくても輸送と保管コストが壁になって、薄利多売のアイス業界で中小が生き残るのは大変なのだという話を当事者から聞いたことがある。ここいらで地場メーカーの状況を把握し「ご当地アイスの現在」を知りたいのである。
幼いころ、国道を挟んだ向こうにアイスキャンデーを作っている家があった。冷却用のアンモニアのにおいがいつもしていた。そこによく買いに行ったものである。
街中のアイス屋さんは、どのくらい残っているのだろうか。絶滅寸前ではなかろうか。そうでもないのか。
ともかく趣旨はそういうことである。
(特任編集委員 野瀬泰申)
[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]
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