2017/6/25

脳科学で鍛える仕事力

ヤフーのオフィスには各フロアに畳の休憩コーナーがある

ヤフーは東京・紀尾井町の新オフィスに移転した際、フロアごとに休憩専用コーナーを設けた。ヤフーは「畳の休憩コーナーがあり、昼寝したり、休息したりできます。マッサージチェアも置いてあります。評判は上々ですね」という。ソフトバンクグループ社長の孫正義氏は以前のオフィスの社長室に畳敷きの部屋をつくり、そこでアイデアを考えたり、仮眠をとったりしていた。IT企業には、ユニークな休憩スペースを設けているところが多い。

世界51カ国に400以上の拠点を構える米不動産サービス会社、CBRE(シービーアールイー)の日本法人(東京・千代田)も昼寝コーナーを設けるなど快適オフィスを探求しているが、欧米の企業でこのような空間を導入しているケースは少なくないという。

ただ、一般の会社でオフィスに昼寝スペースを設けている会社はまだ少ない。「上司や部下の前で自分の席で昼寝なんてできない」(東京・大手町の大手メーカー幹部)というのが実情だ。10分程度の仮眠のつもりが、寝過ごして重要な会議や商談に遅れれば一大事。「昼寝した方が結果的に仕事の効率が上昇する、という認識が会社全体に行き渡っていないと実行は難しい」と枝川教授も話す。週末の寝だめ、平日の昼寝では根本的な解決策にはならない。

「睡眠ホルモン」をバランスよく分泌する

「当然、夜7~8時間しっかり寝て、規則正しい時間に朝起きればいいわけです。そのためにはメラトニンをうまいタイミングで体内に分泌させなくてはいけません」と枝川教授はいう。メラトニンというのは眠りを誘う「睡眠ホルモン」だ。メラトニンが分泌されると副交感神経系が優位になり、体温や血圧などが低下して、睡眠の準備ができたと脳が認識し、自然と眠りを促すことになる。

通常、メラトニンは昼間はほとんど分泌されず、夕方から夜間にかけて多くなる。ポイントは、光の強さにあるといわれる。太陽の下で光が強ければ、メラトニンの分泌は抑制されるわけだ。しかし、現代人の生活スタイルではこのメラトニンの分泌バランスが崩れがちだ。夜でも蛍光灯が照らす明るい室内で過ごし、ブルーライトを発するパソコンやスマートフォン(スマホ)を深夜まで見ている人が少なくない。このブルーライトはメラトニンの分泌を抑制する作用があるとされる。

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大事なのは朝の光を浴びること