通勤から旅行まで スイス発「変幻自在バックパック」
多種多様なパーツを組み替えることで、旅行や出張、日々の通勤、街歩きから自転車旅行まで、さまざまな用途に対応するバッグが登場した。それがスイスに本拠地を置くデザインハウス、FLINKの「SLICKS」(2017年6月下旬発売予定)だ。
SLICKSは、用途に合わせていちいち別のバッグを用意して収納場所に困ってしまう私のようなバッグ好きには、ありがたいコンセプトのバッグだ。しかも、いかにも多機能という雰囲気ではなく、シンプルなデザイン。今までにないコンセプトなだけに、その魅力を伝えるには多少の説明が必要だろう。
基本的なデザインは、ソフトシェルタイプのバックパックだ。ただ、メインコンパートメントの開き方は長辺をちょうつがいにしたスーツケースっぽい感じで、開けた中の様子もキャリーバッグなどの旅行カバンに近い。
片側は大きなメッシュのオープンポケットの下にさらに2つのポケットがあるという3段重ね仕様で、着替えやタオルの収納に使える。もう片側は56cm×33cm、奥行きも8cmと、広々としたスペースになっている。これだけでも旅行カバンとしては十分なのだが、さらにこの広いスペースにさまざまなオプションパーツを入れて使うのが、このバッグの面白いところだ。
「かゆいところに手が届く」気配りポケットがたくさん
バックパック用のストラップは、下部を外して背面クッションの中に収納できる。そうやって収納してしまえば、大型のブリーフケースかボストンバッグのように使うことが可能だ。また、このストラップを一本だけ出して斜めにセットすればワンショルダーのバッグとして使える。これで、3wayの持ち方ができるバッグになる。ちなみにストラップを収納するスペースと、メインコンパートメントの間にあるファスナーを開くと、そこは15インチまでのノートパソコン用のポケットになっている。
バックパックやワンショルダーとして使う場合、メインの収納にしてもよいくらいの大きなポケットがバッグ中央のファスナーの中に用意されている。ここはメインコンパートメントから独立しているので、歩きながら出し入れするものを入れておくと便利に使える。SLICKSはもともと自転車用として開発されたそうで、本来はここにヘルメットを収納する予定だったというだけあり、容量も十分。かさばるものの収納もできる。旅行カバンとして使う場合にも、水筒やヘッドホンなど、移動中に出し入れするものはここに入れる。また、このポケットの脇にも小さなポケットを装備。手帳や筆記具、デジカメ、カードケースやピルケースなどの収納に使える。
さらに、このバッグ中央のポケットとメインコンパートメントの間にもファスナーがあって、ここにサイドポケットがある。開口部は30cmもあり、サイドポケットとしても十分な大きさだ。スーツケースとして使う場合はここには靴を入れるのだが、ファスナーが露出しないように、また開口部を開きやすいようにタブが付いているため、隠しポケットとしても使える。背負ったままでも出し入れしやすい位置なので、タブレットや本、地図などの収納に使うのも手だろう。
これだけでも十分に機能的で、しかし大げさにならないよくできたバッグなのだが、本領はこの先、セットされている各種オプションとの組み合わせで、使い勝手が向上し、さらに用途も広がるところだ。
オプションパーツの充実ぶりがスゴイ!
オプションで最も重要なのはスーツカバー。ガーメントバッグのように、スーツのジャケットをしわにならないようにバッグの中に収納するためのツールだ。形状は4つ折りの板のようになっていて、中にはハンガーが入っている。このハンガーにジャケットを掛けてカバーのファスナーを閉めたら、ジャバラ状に4つ折りにする。あとは、SLICKSのメインコンパートメント内に用意されたストッパーで固定すればいい。メインコンパートメントの底部にすっぽりと収まる。ホテルに着いたら、ケースのままクローゼットに掛けておける。ハンガーのフック部分が折り畳めるのも気が利いている。
さらに、衣類を収納する小分け用ケースも用意されている。こちらは、メインコンパートメントにちょうど収まるサイズで大きめの上部ポケットと小さめの下部ポケットがある。そして上部ポケットの中にはシャツを畳んで収納するボードが入っている。つまり、上部はシャツや下着などの衣類を収納。大体2~3泊分の服や下着が入るサイズで、内側にもポケットが用意されているので仕分けしての収納が可能だ。さらに脱いだ下着などを入れておくナイロン製の袋が入っている。ぬれタオルなどを入れても水がもれず、防臭加工もされているという周到な設計だ。下部ポケットは、アメニティー関係や小物入れに使うのにぴったりのサイズ。
シャツ畳みが簡単にできるボード付き
上部ポケットに入っているシャツ畳みボードが優秀で、説明書通りにボードにシャツを当てて畳んでいくと、不器用な人でも簡単にシャツが畳める。さらにバッグに入れたときに襟がつぶれないように、そしてしわにならないような形に作られているのがすごい。これだけ別に売ってほしいくらいよくできているのだ。とても軽い素材を使っているのもよい。
さらにもう一つ、アメニティーグッズなどを入れられる小型のポーチも用意されている。このポーチは蓋を開けると内部にフックが付いていて、ホテルの洗面台の脇などに掛けることができるから、洗面用具やアメニティー関係、ひげそりなどは、ここにまとめておくと、宿泊先でラクだ。このポーチは前述の衣類ケースの下部ポケットにちょうど収まるサイズなので、下部ポケットが着脱するようなスタイルでの使用も可能。
これら、スーツカバー、衣装ケース、シャツ畳みボード、ポーチを組み合わせて、そのときに持ち歩くのに最適なバッグに組み合わせて使うのが、このSLICKSのスタイル。スーツカバーも衣装ケースもメインコンパートメントに固定できるから、バッグの一部のように扱えるのも、使い勝手の良さのポイントだ。フル装備だとさすがに重くなるが、背中に背負うことを考えるとさほどではない。また、ストラップを使ってキャリーバッグのハンドルに差し込むことも可能。また、オプションを使わないとかなり軽量なので、用途に合わせてフレキシブルに使い分けたい。
これだけでも機能としてはおなかいっぱいというくらいの充実ぶりだが、さらに、レインカバーを内蔵している。本体もPUコーティングナイロン製だから、雨にも十分に強いのだが、レインカバーを掛ければさらに安心というところだろう。レインカバーはリフレクターボードも搭載していて、夜の行動の安全性を高めている。バッグの表にも一部リフレクターボードが付いているが、このあたりも自転車用バッグから始まったアイデア商品らしい部分といえるだろう。
これだけの機能がありながら、見た目はシンプルだし、必要な機能だけを選んで装着できるアイデアも、細かすぎず、大ざっぱでもなく、使う人が迷わずにサッと準備できる程度に抑えられているのがうまいと思う。何より、それぞれのパーツにピッタリはまる感じや、出し入れのスムーズさを考えたファスナー位置や大きさなど、使う人が気持ちよく使えるように考えて作られているのが伝わってくる。新しいけれど、使い始めればすぐなじむのが、なんといっても魅力的だ。
(ライター 納富廉邦)
[日経トレンディネット 2017年6月13日付の記事を再構成]
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