白河 経営者が判断軸を示して、そこからブレてはいけないということですね。
青野 そうです。目先の利益よりも、社員が余裕を持って働ける方が大事だということを、経営者自身が明確にしなければ、現場は混乱します。本当にビジョンの強さが試される時代になってきたと感じますね。
働き方改革とは、「多様性」にシフトすること
白河 経営者の皆さんに「働き方改革とは何ですか?」と聞くと、「ITを導入することだ」とか、「マネジメント改革だ」とか、「ただの残業削減だ」とか、様々な答えが返ってきます。青野さんにとって、働き方改革とは何ですか?
青野 日本の働き方改革は、「均一化した、単一的な、一律的なもの」から、「多様な、柔軟性の高いもの」へのシフト、というイメージを持っています。
例えば、男は働き、女は家庭に入るとか、年功序列で給料が上がっていくとか、そういう従来のモデルが崩れて、どんどん多様化が始まってきています。すると、一律のルールでみんなを幸せにすることはできないのです。
僕は、働き方も価値観も多様な方向に切り替えていくことが、働き方改革の本質だと思っています。残業に関しても、極端なことを言えば、健康で仕事をバリバリやりたい人にとっては、労働時間を制限する必要はないはずです。その一方で、働く時間をもっと短縮したい人もいる。
でも、今はこれを、みんな一律でやらなければなりません。本当は、多様な方向にシフトしていけばいいのではないかと思います。
(以下、来週公開の後編に続きます。後編では働き方改革に伴う、評価と報酬の問題、副業社員への期待、取引先との関係、社員の業務生産性などについて伺います。)
白河桃子
少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「婚活時代」(山田昌弘共著)、「妊活バイブル」(講談社新書)、「産むと働くの教科書」(講談社)など。「仕事、出産、結婚、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。7月16日に「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)が発売。

(ライター 森脇早絵)