「話がある」とき 日本人が気をつけたい3つの英語
デイビッド・セイン「影の英語」(32)話さなければいけない
ひとつの言葉は様々な顔を持っています。日本人の言葉が意図していない意味合いで伝わることもあります。日本人向けの英語教育で豊富な経験を持つデイビッド・セインさんが、日本人が使いがちな言葉から「影にある意味」を紹介します。今回は話があるとき、部下に声をかける場面です。
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「今日は彼には話をしなくてはいけないな」。部下の顔を思い浮かべながらそんなことを考えるとき、少々憂鬱になるのは下手な言い方をして感情をこじれさせたくないからに他なりません。
正しい訳:私たちは話をする必要があります。
影の意味:お前には言いたいことがある。
特に問題があるとは思えない表現です。need to talk に特に問題はないのですが、ネイティブがWe need to talk と言う場合はイライラしていることがほどんどです。それを聞けば相手はビビってしまいそう。We need to talk about something. 「ちょっと話をしなければならないことがあります」We need to talk about the budget. 「予算について話をする必要があります」のように内容を言えば問題はないでしょう。
正しい訳:あなたに伝えなければならないことがあります。
影の意味:いやなニュースを伝えなければなりません。
have to … 「~しなければならない」は自分が原因ではない「外的要因による必要性」すなわち「~せざるをえない」という意味があります。この場合であれば「あなたに対して何か言わざるをえない」ということ。あまりいいニュースでないことが分かります。
正しい訳:あなたに何かを伝えようと思っています。
影の意味:あなたには言っておきたいことがあります。
be going to は未来形ですが、「ちょっと思いついて言いおく」のではなく、すでに「あなたに言うことは決定している」のニュアンスがあり、場合によっては少々強く感じられるかもしれません。
これなら「影の意味」はない!
ちょっと話せますか?
Could we …? 「私たち、~できますか?」は相手に対してソフトに同意を求める言い回しです。これなら相手に抵抗感はありません。
このあとに Let's go to the meeting room. 「では会議室に行きましょう」のような流れになります。
あなたと確認したいことがあります。
run … by ~は「~と共に…を確認する」。「相手に尋ねる、確かめる」という片道の話ではなく、双方向で参加する「一緒に~しましょう」であれば、相手は一方的に言われるというイメージを持ちません。
ちょっと時間ありますか?
答えはYes. か No. これだけで「話しましょう」の意味になります。特に上司から部下への言葉です。
日本人が知らない本当の使い方―― talk
・I got a talking-to from my boss. 上司からお小言を言われました。
* talk to には「言い聞かせる」の意味があります。そこからa talking-to は「小言、お目玉」の意味。 get a talking-to で「叱られる、お小言/お目玉を頂戴する」
・George is under me, so I don't need to talk up to him. ジョージは私の部下なので、私は彼に対してへりくだって話す必要はありません。
*talk up to:~にへりくだった態度で話す
*underは「~の下に」を意味する前置詞で、そこから上司、部下などの地位などの位置関係も表します。over 「~の上に」はこの場面では反対の「上司」を表します。
・Sally told me something different. She's talking out of both sides of her mouth. サリーは私に別のことを言いました。彼女は矛盾することを言っていますね。
*talk out of both sides of one's mouth:口の両端から話をする、すなわち「矛盾したことを言う」の意味。
・There's a lot of misunderstandings. Let's talk things out. かなり誤解があるようですね。徹底的に話し合いましょう。
*out には「表に出す」の意味があるのでtalk things out は「物事を話して表に出す」すなわち「徹底的に話し合う」の意味。
・I tried to talk Steve out of quitting. 私はスティーブに退職するのを思いとどまらせようとしました。
*talk … out of ~:人を説得して~するのを思いとどまらせる、… に~しないように説得する。
・Linda talked me into investing in her company. リンダは私に自分の会社に出資するように説得しました。
* talk … into:… に~するように説得する
・I got talked into investing in Linda's company. リンダの会社に投資するように乗せられてしまいました。
*get talked into:~に乗せられる、説得される
・If you talk back to me one more time, you're fired! 後一度口答えをしたら、解雇だ!
* talk back to: ~に口答えする
・Stop talking behind people's backs. You'll just make enemies. 人の陰口を言うのを止めろよ。敵を作るだけだ。
* talk behind one's backs:人の陰口を言う、陰で人の悪口を言う
・Let's talk about this over a cup of coffee. この件はコーヒーでも飲みながら話をしましょう。
*talk over a cup of coffee: コーヒーを飲みながら話す
・Sally was in a talkative mood. She told me everything. サリーは話したい気分でした。それで私にすべてを話しました。
*in a talkative mood: 話をしたい気分で Sally wasn't in a talkative mood. であれば「サリーは話したい気分ではありませんでした」。
「話す」といえば、talk, say, speak , tell が思い浮かびます。talk であれば「相手としゃべる」が基本的な意味ですが、その相手は不特定多数の人ではなく、すでに知っている人との少人数での会話のニュアンスです。sayは特に重要なことを話すというよりも思ったことや聞いたことを口にしているというイメージです。say to oneself なら「独り言を言う」またThey say… であれば「彼らは/皆そう言っている」すなわち「~だそうである」の意味になります。speakは speak English「英語を話す」から分かるように「言葉を発する」の意味になり、情報を伝えるのが主目的となります。講演会などでスピーチするときなどは speak が使われます。I spoke at the international conference last night.であれば、「昨夜国際会議でスピーチをしました」となります。 tell も同じく「情報を伝える」場合に用いられますが、会議などで多くの人に伝える情報と違い、相手を認識して情報を伝えると考えればよいでしょう。
ちなみにtalk to 「~に話しかける」talk with 「~と話す」と覚えている人も多いとが、ネイティブはあまりそのような分け方をしていません。多く使われるのがtalk to。「~と話す」という意味でも使われます。
Hang in there!
:D セイン
※デイビッド・セインの「ビジネス英語・今日の一場面」は木曜更新です。次回は6月22日の予定です。
米国出身、20数年前に来日。 翻訳、通訳、執筆、英語学校経営など活動は多岐にわたる。企業や学校の人気セミナー講師。英語関連の出版物の企画・編集を手掛けるAtoZ(http://www.atozenglish.jp)・AtoZ 英語学校代表。