「白い」オランウータン、ゴリラ、キリン その理由は
2017年5月の初め頃、インドネシアのある村で檻の中に閉じ込められていた珍しいアルビノ(先天性白皮症)のオランウータンが救出された。
5歳になるこのオランウータンが見つかったのは、ボルネオ島のカプアス・フル県だ。その後の数週間で体重は4.5キロほど増加し、順調に回復している。
英紙「テレグラフ」によると、このオランウータンを保護したのは、ボルネオオランウータン・サバイバルファンデーションという団体だ。オランウータンは絶滅寸前とされる近絶滅種(critically endangered)とされ、現在500頭ほどがこの団体に保護されている。団体のリハビリテーションセンターは設立されて25年になるが、アルビノのオランウータンが保護されたのは初めてだという。
オランウータンの名前は、公募によって「アルバ」に決まった。ラテン語で「白」、スペイン語で「夜明け」を意味する言葉だ。
インドネシア紙「ジャカルタ・ポスト」に掲載された団体の声明には、「貴重なオランウータンたちに新たな夜明けが訪れることを願っています」と書かれている。
通常、ボルネオオランウータンの長い毛はオレンジがかった茶色をしている。また、オランウータンはとても賢いことでも有名だ。アルビノのオランウータンは非常に珍しいが、霊長類のアルビノの事例は他にも報告されている。スノーフレークという名前のアルビノのゴリラや、ホンジュラスで見つかったクモザルはその一例だ。
「ジャカルタ・ポスト」によると、団体はアルバを育てる最善の方法を探るため、類人猿の先天性白皮症について詳しい調査を行っている。このような遺伝子の状態のオランウータンが見つかったのは初めてのことで、感覚神経や目などの器官に影響が生じている可能性もある。学術サイト「SciELOアルゼンチン」に掲載されたある論文によると、霊長類やその他の脊椎動物では、孤立した群れの中での繁殖をはじめ、環境から強いストレスを受けるとアルビノが増えるという。
国際自然保護連合(IUCN)は、ボルネオ島に生息するオランウータンの数を約10万4000頭と見積もっている。1973年の28万8000頭に比べると、かなり減っている。IUCNの予測では、狩猟や森林伐採による生息地の喪失によって、2025年までに4万7000頭まで減少すると見られている。
(次ページで、希少な白い動物たちの写真9点を紹介)
1歳になるマサイキリンの子供、オモ。タンザニアのタランギレ国立公園で暮らしている。先天性白皮症ではなく、たてがみや目などには色素がある白変種。
カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州のグレート・ベア・レインフォレストに生息する白いアメリカグマは、アメリカクロクマの変種でアルビノではない。
南アフリカのサンボナ野生動物保護区でガゼルを食べる白いライオン。アフリカの伝承によると、白いライオンは太陽神の子供であり、地球に遣わされた神からの贈りものだという。
知られている限り唯一のニシローランドゴリラのアルビノだったスノーフレーク。皮膚ガンのため、2003年にスペインのバルセロナ動物園で死んだ。
2012年にミャンマーのネピドーで水浴びをする白いゾウの赤ちゃん。お隣のタイでは、ブッダの生誕と関連があると言われる白いゾウは幸運の印だ。
北米には、黒や白を含むさまざまな色のリスが生息している。だが、白いリスが本物のアルビノであることはほとんどない。
2011年にオーストラリアのウィットサンデー島沖で発見されたアルビノのザトウクジラ。アルビノは目立つので、野生環境で生き延びるのは大変だと考えられている。
白いバッファローが生まれるのは1000万頭に1頭。珍しいだけでなく、ネイティブアメリカンにとって神聖な動物でもある。アルビノではなく、白変種である可能性もある。
ザリガニなどの無脊椎動物にもアルビノは存在する。
(文 Heather Brady、訳 鈴木和博、日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2017年5月26日付]
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