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ブラジル「屋台おばちゃんの味」 政府公認の文化遺産

一方、地域限定のローカル色が強く、いまだにその土地でなければあまり食べられないのがブラジル北東部、バイア州の郷土料理「アカラジェ」だ。

「アカラジェ」とは、黒目豆をすりつぶし、刻んだタマネギなどを混ぜ、よく練った生地を丸めてデンデ油(オニヤシ油)で揚げたもの。外見は日本のカレーパンのようだが、食感はやや硬めのドーナツという感じで、軽くサクッとした味わい。それを半身に切って、エビや特製の具をはさんで食べる。お好みで、ブラジルの辛味調味料「ピメンタ」をたっぷりかけるのも一興だ。

「アカラジェ」の屋台。赤い色が特徴のデンデ油で揚げる

特製の具は主に2種類。一つは、水に戻した干しエビをすり身にし、キャッサバ粉を混ぜて練り、オクラとデンデ油を加えて煮る「カルル」。もう一つは、やはり干しエビを材料に、ココナツミルクや生クリームを使ってトマトやピーマンなどを煮込む「ヴァタバ」だ。それぞれは「アカラジェ」にはさんで食べるほか、ご飯のおかずとしてもよく食べるという。

バイア州では、バイアーナと呼ばれる伝統衣装を着たおばちゃんたちが屋台で「アカラジェ」を売っている。まさにブラジルの食を代表する「地域料理」の風物詩だ。ただ、この地域が、食材の黒目豆やデンデ油、干しエビの特産地で安く調達でき、どの家庭でも作り、古くからたくさん食べられてきた「庶民の味」かというと、そうとも言えない面がある。

干しエビなどの食材は高いし、手間もかかる。日常的によく作るというものでもなく、「アカラジェ」だけを売っていては赤字になるので、同じ油で揚げる揚げ菓子などをいっしょに売るなど、工夫しながら商売を続けているのが実情だ。

「アカラジェ」売りのバイアーナ。無形文化遺産に登録された

実は「アカラジェ」は、アフリカ民族信仰に起源を持ち、ブラジル先住民インディオの神霊主義と融合して確立した宗教の儀式における、神への捧げものとして作られてきたという。「アカラジェ」という言葉もアフリカの部族の由来で、「火の玉」を意味する「アカラ」と「食べる」を意味する「ジェ」が結合してできた。植民地時代、アフリカからブラジルに渡った奴隷の女性は「女主人の怒りが収まるように」と願い、神に「アカラジェ」を供えたのだ。

神聖なものとはいえ、お腹がすけば自分たちも「アカラジェ」を食べ、そして大きな盆に載せて「アカラジェ」を町で売ってささやかな小遣いを稼ぐなどして、バイアーナは「アカラジェ」とともに厳しい時代を生きてきた。

それが、ブラジルの食と文化の歴史を形成してきたのだ。

そんなブラジルを代表する食の担い手として生き抜いてきたバイアーナは2005年、ブラジル政府によって無形文化遺産に登録された。

屋台料理の「アカラジェ」は手でつかんでそのままほお張る

無形文化遺産に登録されたこともあり、大都会のリオデジャネイロやサンパウロでも、「アカラジェ」売りのバイアーナをよく見かけるようになったとのこと。ただ、ブラジル人でも「アカラジェ」がどういったものか、正確に知っている人は多くないらしい。大使館を取材をしたときも「アカラジェ」について尋ねると、「この取材の席にブラジル人が5人いますが、残念ながら『アカラジェ』を日常的に食べたことがあるものは一人もいないのです」とコヘアドラゴ大使も苦笑い。

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