早退したいとき 日本人が避けるべき3つの英語
デイビッド・セイン「影の英語」(30)許可を取る
ひとつの言葉は様々な顔を持っています。日本人の言葉が意図していない意味合いで伝わることもあります。日本人向けの英語教育で豊富な経験を持つデイビッド・セインさんが、日本人が使いがちな言葉から「影にある意味」を紹介します。今回は早退する許可をもらう場面です。
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どうも朝から体調がすぐれない。家族の事情でどうしても早退する必要が出てきた。言いにくい言葉でも時には言わなければならないことがあります。
「早退してもよろしいでしょうか?」。さて、どう言えば相手が抵抗なく受け入れてくれるのでしょうか。
正しい訳:早く家に帰ってもいいですか?
影の意味:早く帰っていい?
許可を得るときはMay I …? で、と覚えている人は多いと思います。
May I …? は、生徒が授業中に先生に許可を求める場面でよく使われます。May I go to the toilet? なら「先生、トイレ行っていい?」のニュアンスになります。この場合であれば「早く帰っていい?」すなわち、非常に子供っぽい響きになります。
正しい訳:今日は早く帰ろうと思っています。いいですね?
影の意味:早く帰るからね、分かった?
I'm going to … は、今思いついたことではなく、前々から予定を立てていた、心づもりをしていたときに使われる未来表現になります。これでは許可を求めるというよりも「~しますからね」と自分の気持ちを伝えるだけの表現になります。上から目線と捉えられる可能性があります。
正しい訳:今日は早く帰らせてください。
影の意味:頼みますよ、早く帰らせてくださいよ。
「何とか頼みますよ」と必死な感じがする言い回しになります。
これなら「影の意味」はない!
本日早退してもよろしいでしょうか。
Would it be okay if… 「(もし、~であっても)よろしいですか?」の意味の仮定法の文です。丁寧であり、切り出し方としては申し分ありません。この後に理由、例えば、I have to take care of a family emergency. 「家族の急用に対応しなければなりません」 とか I'm not feeling very well. 「気分がよくありません」などと説明します。この流れがが一番のお勧めパターンです。
もし可能でありましたら、今日は早退しなければなりません。
仮定する場合はいろいろあります。「まあ、十中八九大丈夫だろう」という場合。その逆に「まあ、無理だろうなあ。可能性は相当低いだろうなあ」という場合。if at all possibleは「まあだめでもともとだけど、ひとまず言ってみようかな」と言うニュアンスなので、許可を求める場合でも控えめさを表すことができます。
早退してもよろしいでしょうか?
「帰ることができるとお思いでしょうか?」の意味。非常にへりくだった言い方になります。このような言い回しは、場面を選ぶ必要があります。不必要な状況で使えば、「へりくだり過ぎている」と感じる人もいるかもしれません。多用は避けましょう。
あなたが知らない本当の使い方―― may
mayは「~してもよい」という「許可」と「~するかもしれない」という「推量」を表す助動詞です。助動詞は使いこなせれば、非常に英語の守備範囲が広くなります。
・May I ask, is it far to the museum from here? 失礼します。ここから博物館は遠いですか?
* May I ask… 「質問してもいいですか?」の「許可を請う」フレーズ。「失礼ですが」のように質問などをする前のひと言になります。いきなり質問を始める前にワンクッションを置きます。
・May I make a suggestion? I think you should make reservations. ひとつ提案がございますが、予約をされたほうがよいと思います。
* May I ask… は「提案してもいいですか?」は「提案がございます」ということ。
May I ask on… であれば「~に関してひとつ提案がございます」ということになります。
・May I trouble you for some coffee? コーヒーを取っていただけますか?
* trouble:煩わす May I trouble you for… 「申し訳ないのですが~を取っていただけますか?」 May I trouble you for some salt? 「申し訳ないのですが、お塩を取っていただけますか?」
・That may or may not be true. 真実かどうか分かりません。
* That may (be true) or may not be true. 「真実かもしれないし、本当でないかもしれません」。これは「許可」ではなく「推量」の意味になります。
・Whatever may happen, I'll finish this job by Friday. たとえ何が起ころうとも、この仕事は金曜日までには終わらせます。
* whatever may happen:たとえ、どんなことがあろうとも、何が何でも
・Come what may, we have to fix this problem. たとえ何が起ころうとも、この問題を解決しなければなりません。
*Come what may, = Whatever may come
・As you may be aware, the trains are running late today. お気づきかもしれませんが、今日電車は遅れています。
*「(もしかしたら)気づいているかもしれませんが、ご承知かもしれませんが」は、控えめさを表す表現になります。As you are aware 「お気づきの通り、ご承知の通り」という場合、万が一相手が気づいていない、承知していない」場合、相手には失礼な表現となります。それを避けるために、推量のmay を入れることで意味がずっと和らぎます。
・This plan is very risky, if I may say so. 言わせていただければ、ですが、この計画はかなり危険です。
* if I may say so:そう言うことが許されるのであれば、こう言っては何ですが
* if I may venture to say so:あえて言わせていただければ venture to: 思い切って~する
・I may be crazy, but I don't want to lose this opportunity. 狂っているかもしれませんが、この機会は失いたくありません。
* I may be crazy:人から見たらもしかしたらおかしいかもしれません、狂っているかもしれません
・Let the chips fall where they may. It's not my fault if he fails. たとえどんな結果になろうとも気にしない。彼が失敗しても私のせいじゃないから。
*let the chips fall where they may: チップを落ちるがままにする
*chips は賭け事、ルーレットなどのチップのこと。「いったん置いたら後は、どこに落ちていこうともそのままにする」こと。「たとえどんな結果になろうとも、あとは野となれ山となれ」の意味になります。
「許可」を表すのはmayです。mayの過去形はmight ですが、両方とも「かもしれない」という現在の「可能性/推量」を表します。一般的にはmay の方がmightよりも「(起こる)可能性」が高いのですが、丁寧なニュアンスがあるのはmight です。特に日常生活で両者を厳密に区別することもありませんが、日常生活ではmight の方がより多くの場面で使われます。
「過去の推量(過去に~したかもしれない)」を表すのは<might + have + 過去分詞> です。He might have left Japan. なら「彼はもう旅立ってしまったかもしれないね」。
Stay on the road to success!
:D セイン
※デイビッド・セインの「ビジネス英語・今日の一場面」は木曜更新です。次回は6月8日の予定です。
米国出身、20数年前に来日。 翻訳、通訳、執筆、英語学校経営など活動は多岐にわたる。企業や学校の人気セミナー講師。英語関連の出版物の企画・編集を手掛けるAtoZ(http://www.atozenglish.jp)・AtoZ 英語学校代表。