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伊勢志摩サミット1年、観光効果は「賢島の一人勝ち」

2017/5/26

横山展望台から望む英虞湾(三重県志摩市)

しかし、波及効果は「結局は局所的だった」と冷めた声も広がる。観光でにぎわいが続いているのは賢島周辺と伊勢神宮だけだ。賢島から10キロほど離れた浜島地域のホテルの担当者は「今年1~2月から客足はぐっと落ちた。こちらには、もうサミット効果はない。賢島の一人勝ちだ」とこぼす。海女(あま)の町として民宿旅館が集まる鳥羽市の相差(おうさつ)は、サミット前は警備の警察官であふれたが、サミット後に大きく減った一般客の客足はいまも元に戻らない。民宿の女将は「サミット効果といっても、ピンとこないね」と話す。

■「賢島の一人勝ち」サミット効果に格差も

志摩市商工会が2月にまとめた市内の小規模事業者を対象にした景気動向調査によると、サミットの波及効果が「なかった」は38%にのぼり、「あった」の30%を上回った。詳しく見ていくと賢島のある旧阿児町だけは「波及効果があった」は38%に上ったが、他地域は2割強にとどまった。同じ市内でも地域差が顕著だ。「恩恵を受けたのは一部だけ」「期待していたほど客数が伸びなかった」「期待外れ」と冷ややかな指摘も目立った。

三重県と愛知県の企業を対象にした百五総合研究所のアンケートでも、サミットの影響を「プラス」「ややプラス」と答えたとのは3割弱にとどまり、効果が一部地域に限定されていることが浮き彫りになった。県はサミット関連に約94億円を支出したが、国の補助などを除くと県の負担は約49億円に上る。その費用対効果をしっかり検証する時期がきている。

百五総研の津谷昭彦主任研究員は「影響は業種や地域によって差があり、偏る傾向がある。ただ、今後に期待している企業もある。観光客の入り込み状況をみると、日本人観光だけでなくインバウンド(訪日外国人)が増えているのはサミット効果によるもの。サミットで知名度が向上して観光客を呼び込むチャンスが広がったのは間違いない」と指摘する。

伊勢神宮を訪れる外国人観光客は大幅に増えた(三重県伊勢市)

5月17日、タイの女性たち約20人が志摩市の真珠養殖場を訪れた。ゴルフと観光を組み合わせた「ゴルフツーリズム」を推進する三重県が、外国人観光客を呼び込もうと、タイのゴルフ場関係者などを招いたツアーを実施。訪れたのはその配偶者の一行だ。アコヤ貝から真珠を取り出す体験に挑戦し、白い真珠を見つけると歓声をあげた。

体験ツアーを準備したのは、昨年末に設立した旅行会社「伊勢志摩ツーリズム」。インバウンド(訪日外国人)を積極的に受け入れるための組織として老舗菓子店「赤福」の持ち株会社の浜田総業(伊勢市)が立ち上げた。伊勢志摩ツーリズムの西田宏治社長は「サミットは政治のショー。サミットが開催されたからといって、こぞって観光客がやってくるようなものではない。ただ、沖縄、北海道という日本を代表する観光地に次いで地方で開かれたサミットとしては三重県は3番目だ。これは当面、大きなセールスポイントになる」と強調する。

県は、サミットで上がった知名度を生かし、ゴルフツーリズムの誘致やインセンティブツアー(報償旅行)へのプロモーションを展開。国際会議や学会などMICE(マイス)の誘致に力を入れる。県内のMICE開催件数は16年は17件。今年も8件が見込まれる。県は補助金を支給するなどして学会の誘致を後押しし、担当職員も増やして、東京や大阪での営業活動も進める。

鈴木知事は「2020年の東京五輪とその翌年の三重国体。それまでに知名度向上を生かし、いかに持続可能な情報発信や地域の魅力づくりができるかが課題だ。伊勢志摩サミットで好評を博した食をどう発信していくかという点にも力を入れたい」という。24日には津市内でシンポジウムを開き、東京五輪の組織委員会の顧問で「みえの食国際大使」をつとめる三国清三シェフと対談。「三重の食材が世界に通用するようオール三重で取り組みたい」と強調した。

地元の志摩市も知恵を絞る。4月、志摩市の竹内千尋市長は東京・日本橋の三重県のアンテナショップ「三重テラス」で、在京のIT企業の若い経営者らを集め、意見交換会を開いた。「伊勢エビやアワビなど志摩の豊かな食材が注目されたが、海女さんは高齢化で減り、耕作放棄地も増えている。皆さんの知恵と力を借りながら、志摩の豊かな資源を守り、活性化していきたい」と呼びかけた。若い経営者たちの発信力に期待し、地元の商工会などと連携しながら観光や水産物の情報発信を進めていく考えだ。

三重県真珠振興協議会は、サミット開催決定を受け、地場産業である真珠のPR活動をしようと、生産や加工、流通の各業界が一体となって発足した。同協議会の中村雄一さんは「サミットはきっかけであって、これをどう今後の活性化に生かすかが焦点」と話す。世界に発信された伊勢志摩。そのブランドイメージを高める息の長い取り組みが必要だ。

(津支局長 岡本憲明)

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