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「渋谷キャスト」 クリエーターが街と溶け合う新名所

日経トレンディネット

2017/5/29

2017年4月28日(しぶやの日)にオープンした新施設「渋谷キャスト」
日経トレンディネット

2020年に向けて着々と進む東京大改造プロジェクト。そのポイントとして注目されているのが渋谷だ。大改造の最大の目的は、駅周辺の建物によって渋谷と周辺の街をつなぎ、“広域渋谷圏”を作ること。その狙いを象徴するかのような新施設「渋谷キャスト」が、2017年4月28日(しぶやの日)にオープンした。

■創造活動を刺激する空間を作る

同施設は、東京都都市整備局による「都市再生ステップアップ・プロジェクト(渋谷地区)」の第1弾事業。「クリエーターが住み、働き、発信する機能を有した複合施設」だという。場所は明治通りを挟んだ宮下公園の向かいで、“裏渋谷”ブームの発信地であるキャットストリートの入り口。渋谷と原宿、青山、表参道という、トレンドスポットが交わる地点だ。

地下2階、地上16階建てで、グランドフロア(以下、GF)には交流のプラットフォームとして、緑とアートに囲まれた広場を配置。GF、1階には落ち着いた空間を提供するレストランや、キャットストリートの空気感をつなぐセレクトショップ、東急ストアが展開するミニスーパーなど、日々のライフスタイルを彩る店舗が入居。1~2階はフリーランスや企業人のクリエーターが集まり、交流・連携しながら働けるシェアオフィスがあり、隣接するようにカフェも設置されている。2階~12階は約400坪の大規模賃貸オフィス、13~16階は80戸の賃貸住宅だ。

2017年4月26日に行われたメディア内覧会で、事業主体会社・渋谷宮下町リアルティの西澤信二統括部長は「当施設は創造活動を刺激する空間を作るのが最大の目的。住む人や通う人、訪れる人=キャストが集うことで、新しいアイデアが生まれる舞台にしたい」と抱負を語った。一方、東京急行電鉄の都市創造本部 開発事業部渋谷開発二部の工藤力課長は同施設が都営宮下町アパートの跡地であることに触れ、「緑があふれ、人々のふれあいの場だった土地の記憶を念頭に作った。最大の特色は、建物前面の広場。渋谷キャストに集まるクリエーターと街との接点にしたい」と、クリエーターと地域住民との融和を強調した。

立地特性を生かし、クリエーターの活動をバックアップすることで渋谷のイメージアップにつなげたい狙いは分かった。だが、はたしてどれだけ楽しめる施設なのか。内覧会でチェックした。

施設のデザインコンセプトは「不揃いの調和」。形状・機能・素材といった空間の多様な要素が、それぞれの個性を表しながらも共鳴し合い、まとまりのある全体像を織りなすのが狙いだという
「PULP 417 EDIFICE」に併設されたデリカフェ「PULP」(GF)。 「マイスタイルデリ」をテーマに、野菜たっぷりでヘルシーなデリと、焼きたてのワッフルコーンアイスなどが楽しめるデリカフェ

■バブルチックなレストランに驚がく!

3店舗ある飲食店の中でも際立って目を引くのが、テラス席にずらりとソファが並べられた「リゴレット」。そのさまはまるで、海外の豪華リゾートホテルのよう。リゴレットとしては11店舗目だが、それらのすべてでコンセプトが違う。同店のコンセプトは「グルメな肉屋が作ったリゴレット」とのこと。内装の豪華さに圧倒されつつ2階に上がると、2階奥には巨大な肉が並んだ冷蔵庫(ミートセラー)があり、その隣のオープンキッチンでは大きな肉をさばいている。バブル時代をほうふつとさせる雰囲気は、カジュアルな店が圧倒的に多い渋谷で、新鮮だった。

「リゴレット」の入口にはキラキラのバーカウンターがあり、右手にはこれまた豪華なシガールーム。2階の天井からつるした巨大なワインセラーには、約600本のワインをストック
リゴレットの「牛肉のタルタル」は宮崎県産の牛肉を使い、自家製の粒マスタード、隠し味のマンゴーチャツネなどを、テーブルで混ぜ合わせて提供する

同施設を訪れる楽しみになりそうなのが、その時々で変わる広場のフードトラック。2017年のゴールデンウイーク期間中は、自家製ソースをかけたアイスクリームのフードトラックや、スペシャリティーカリースタンド「J.S. CURRY(ジェイエス カリー)」、フランスパンでソーセージを巻いた「フランスドッグ」、ハワイのドーナツ「マラサダ」、そして英国で最もファッショナブルなデリカフェといわれる「フランツ アンド エヴァンス ロンドン」など、個性的なフードが多く出店していた。

内覧会で見たフードトラックはどれもハイレベルだった。アイスクリーム店ではバジルクリームにオリーブのコンフィのトッピングという変わり種も
「J.S. CURRY(ジェイエス カリー)」は同施設に本社を置くベイクルーズが運営する神南カリーの新業態。いち押しの「J.Sカリー」はトッピングの青唐辛子とパクチーで清涼感のある辛さ
ハワイのドーナツ「マラサダ」のフードトラックも出店していた
「英国で最もファッショナブルなデリカフェ」といわれ、表参道の日本1号店も大人気の「フランツ アンド エヴァンス ロンドン」のフードトラック

■コンビニサイズの東急ストアもすごかった

GFの奥にあって目立たないが、同施設にはミニスーパー「東急ストアフードステーション」もある。東急ストアとしては東急文化会館の地下にあった店舗が閉店して以来、14年ぶりの渋谷復活だ。

広さは195平米と、少し大きめのコンビニ程度。だが「生鮮品は地域の住民が夕食の調理ができる程度にそろえていて、抜けがないようにしている」(東急ストアの山田亮課長)。地域住民向けには生鮮食品を、オフィスワーカー向けにはデリを充実させているほか、街歩きを楽しむ人向けにはワンハンドフードや、から揚げやポテトなどカップに入って持ち歩きできるカップデリなど、渋谷の街を意識したラインアップを展開している。

「東急ストアフードステーション」の営業時間は7~23時。コンビニサイズの店舗ながら生鮮食品が充実。東急線沿線(横浜地区)を中心とした生産者の直送野菜を提供する「農家の直売所」のコーナーもあり、渋谷の街を意識したスナックも種類が豊富

敷地内の導線としては、青山方面とつながる貫通通路に加えたほか、商業施設「cocoti(ココチ)」との接続通路を設け、回遊性向上を図っているのもポイント。建物で注目したのは、青山方面とつながる貫通通路の3本の柱に溶け込むように設置された、インスタレーション(場所や空間全体を作品として体験させる芸術表現)「AXYZ(アクシズ)」。映像と音が建築と一体となっていて、時刻、天気、太陽電力の発電量などで、その場のリアルタイム情報を取りこみながら変化していくとのこと。ディスプレーには常設の設備としては日本初となる全天候型3.9mmピッチ仕様のものを採用し、それぞれのディスプレーが一体となる映像演出を実現しているそうで、変化に富んだ映像は見ていて飽きなかった。

柱に溶け込むように設置されたインスタレーション「AXYZ(アクシズ)」。大小計18台の高精細LEDディスプレーと、27台のサウンドシステムによって、時刻、天気、季節などのリアルタイム情報を取り込みながら変化している

もともとこの通りは渋谷と原宿を結ぶ裏動線だったが、2006年に表参道ヒルズが開業したことにより渋谷から表参道にショートカットできる道にもなり、さらにブランド力のあるストリートになっている。「明治通りのこのエリアは1日に約1万人が通るといわれている。街歩きを楽しむ人が多いが、意外に座れる場所が少なかった。この広場には休憩できるベンチがたくさんあるし、Wi‐Fiも利用できるので、出先で仕事をしたいときにも便利。今後は広場で夏祭りを行うなど、地元の方との融和も図っていきたい」(東京急行電鉄 都市創造本部 開発事業部 渋谷開発二部 新屋潤課長補佐)。

渋谷は2019年以降、南平台プロジェクト、渋谷駅街区東棟、道玄坂一丁目駅前地区、渋谷駅桜丘口地区などが、続々と開業していく予定だ。

(ライター 桑原恵美子)

[日経トレンディネット 2017年5月2日付の記事を再構成]

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