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依存に注意 お手軽「スマホ育児」 1日1時間目安に

2017/5/29

「子どもがどうスマホとつきあうか」について保護者に教える桑原光子さん(鹿児島県志布志市)

 幼児や小学生の段階からスマートフォン(スマホ)に接する子どもが増えている。小学生で自分のスマホを持つ子どもが少なくないうえ、電車内や料理中、子どもにスマホを渡して静かにさせる「スマホ育児」をする親も目立つ。幼少期から使い続けると、スマホへの依存が強まる心配もある。現状と対策を追った。

 「健康によくないと思いながらも、手軽なためつい渡してしまう」「公共の場で子どもがむずかる時は本当に助かった」

 4月22日、鹿児島県志布志市の志布志幼稚園で、子どものスマホ利用についてのセミナーが開かれた。集まった60人の保護者たちは、グループディスカッションの場で、スマホと子どもの関わりについて、現状や悩みを打ち明けた。

 セミナーは、志布志幼稚園の依頼を受け、インターネットの安全利用を促すNPO法人イーランチ(静岡県焼津市)が主催した。同法人の桑原光子理事は「同じ悩みを持つ親は多いということを、お互いに知ってほしい」と話す。

 スマホを未就学児に使わせる親は少なくない。総務省の調査では、0、1歳児で10%台。3歳児では35.4%に増え、5歳児だと41.5%と半数近い親が子にスマホを使わせていた。

■視力・寝付き悪く

 子どもがスマホを使うことに対し桑原理事は「発育上、いいことはない」と懸念する。視力が落ちたり、興奮して眠れなくなったりするうえ、運動量の減少にもつながるという。志布志幼稚園の原口済園長は「保護者の間でスマホを使わせれば育児が楽、という声をよく聞いた。このままでは危ないと思った」とセミナー開催のきっかけを話す。

 セミナーに参加した保護者の鮎川俊一さん(37)は、5歳の娘にどう使わせればいいか悩む。「雨の日に仕方なくスマホで遊ばせることがある。外で遊べないことがかわいそうで、つい渡してしまう」。3人の子を持つ下唐湊潤子さん(36)も「使わせてもいい時間の上限も分からず心配」と気をもむ。

 不安を抱く親が多い中、学識経験者などで組織する「子どもたちのインターネット利用について考える研究会」(子どもネット研)は3月、保護者向けのチェックリストを公開した。「使用は1日1時間以内」「利用時は親子で一緒に見ている」といった望ましい使い方をしているかとの問いに答えることで、子どもがどのくらいスマホに依存しているかを自己診断してもらうのが狙いだ。

 同研究会が未就学児を持つ親へスマホなどを使わせた経験をたずねたところ、総務省の調査よりも比率が上昇。各年齢で20%以上も高くなった。調査結果を踏まえ、具体的な情報を提供するに至った。

 「多くの親はどうすればいいか分からず、漠然と不安を感じている」。同研究会の委員を務める相模女子大学の七海陽准教授は指摘する。「時間の目安や使わせ方を伝えることで、少しでも不安を和らげることができれば」と狙いを話す。

 七海准教授は幼稚園の教員免許講習で、乳幼児期のメディア利用についての講義もしている。「始めて3年になるが、当初は『これは家庭の問題。教える必要はない』と敬遠する声が多かった。今では優先項目に挙がるまでになった」

 小学校では自分のスマホなどを持つ子どもが多くなっている。「ここ数年でスマホや携帯電話を持つ子は増えた。高学年に限れば半分は持っている」。そう話すのは練馬区立大泉第二小学校の鈴木祐一副校長。「自分のスマホなら時間の制限なく使える。そうなると依存が心配だ」と話す。

■小学校で講習会

 練馬区は対策として、5年生を対象に「情報モラル講習会」を開いている。1時間分の授業時間を割き、スマホなどの使いすぎを注意するため、講師を招いたりビデオを見せたりしている。鈴木副校長は「スマホの使い方をもっと勉強したいと、自分から希望する児童もいる」と成果を語る。

 ネット依存の啓発団体「エンジェルズアイズ」代表の遠藤美季さんは、「ここ数年は中学、高校だけでなく、小学校からの講演依頼も増えている」と話す。原因の一つとして格安スマホを挙げる。「料金が安く済むのであれば、早くから持たせようと考える親が増えたのでは」とみる。

 遠藤さんは「スマホが家族の会話を奪うのではなく、子どもへの無関心や放置がスマホへの依存を生む」と指摘する。「スマホの使いすぎを心配する保護者には、子どもと話す時間が減っていないかを気にかけてほしい」と話す。スマホを与える際には、子どもとのコミュニケーションに気を配る必要がありそうだ。

■親の使い方、子どもに影響

 相模女子大学の七海陽准教授は「親のスマホの使い方も、子どもに影響する」と指摘する。

 スマホを操作しながら子どもと会話をすると、子どもは「スマホをいじっているからパパやママは今忙しいんだ、話しかけてはいけない」と感じてしまうという。「子どもは善悪の判断がつかない。そのため、親の行動が正しいと思い、さみしい気持ちを伝えられなくなる」と話す。

 子どもネット研の調査では、親自身もスマホの使い方に気を配っている様子がうかがえる。子どもの手本となるよう、自身の使い方を気にしている親は7割以上にのぼった。しかし「意識するだけで、使うのを控えている保護者は少ない」(七海准教授)。

 エンジェルズアイズ代表の遠藤美季さんは「共働き家庭が増え、親が子どもと接する時間が減っている。スマホを使うことで、その時間をさらに削るのはもったいない」と指摘している。

(田村匠)

[日本経済新聞朝刊2017年5月23日付]

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