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「高スキル主婦」再び輝く 出産退職、大学で学び直し 英語・財務みっちり 修了後は経営支える

2017/5/23 日本経済新聞 朝刊

■ハッピーキャリアプログラムで実践力磨く ワンゲインの島千佳さん

専業主婦生活を経て再就職した島千佳さん(右)。左は梅千得社長(大阪市浪速区のワンゲイン)

人口減少が続き、人手不足が深刻な状況で政府も家庭に眠る主婦の人材掘り起こしに目を向ける。安倍晋三首相は今年1月、国会の施政方針演説でリカレント教育の重要性に言及した。その中で島千佳さん(47)は先駆事例として実名を挙げて紹介された。

島さんは関西学院大学「ハッピーキャリアプログラム」の修了生だ。90年に大手証券会社に就職するも、5年で退社。以来、2人の娘の子育てに専念していた。同プログラムを経て、13年に電源機器の輸入販売などを手掛けるワンゲイン(大阪市浪速区)に入社。昨年11月にはマネジメント部長に昇格した。主に人事・総務の責任者として会社の経営を支えている。

ハッピーキャリアプログラムの特徴はビジネススクール並みの教育内容にある。毎週事前に課題を与えられ、授業では集団討論などで実践力を身に付ける。島さんは「16年間も専業主婦をしていて再就職に不安もあった。プログラムで学んだ論理的思考やモチベーション論が今の仕事に生きている」と強調する。

■スマートキャリアプログラムで輝き取り戻す

「仕事経験を思い出してみてください。あなたの強みと弱みは何ですか」。講師の問いかけに約50人の女性が熱心に聞き入る。明治大学が15年から主催する「女性のためのスマートキャリアプログラム」の一幕だ。4~9月の半年間にわたって、ビジネス英語やマーケティング、財務、IT(情報技術)リテラシーなどを合計120時間以上しっかり学ぶ。

受講生の大半は再就職を目指す主婦。プログラムコーディネータの小川智由教授は「能力もやる気もあるのに出産や夫の転勤でやむなく仕事を辞めてしまった女性たち。企業社会が彼女たちを生かせていないのはもったいない」と指摘する。

半年学ぶと受講生はかつての経験を思い出し、輝きを取り戻す。ただ多くの企業はそんな彼女たちの採用に今も慎重な姿勢を示す。15~16年で約100人がスマートキャリアプログラムを修了した。就職希望者はほぼ再就職できているが、フルタイム正社員に就けるのは1割程度だ。

小川教授は「年功序列といった雇用慣行が根強く残っていて、中途採用に二の足を踏む。少子化で人手不足がますます顕著になっていくなか、企業も意識を変えてほしい」と訴える。

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■一歩踏み出す勇気を~取材を終えて~

1986年の男女雇用機会均等法施行以降、女性の大学進学率と就職率は急速に高まった。ただ、仕事と家庭の両立環境はその後も整わず、結婚・出産をきっかけに多くの女性が職場を去った。総務省の就業構造基本調査(2012年)でみると、大学・大学院卒の40代女性の有業率は73%。現在無業の35万人のうち19万人は働きたいと希望している。人手不足が深刻な状況で、高等教育を受けた貴重な人材をみすみす見過ごしてはいられない。能力と経験に見合う再就職先があれば高学歴主婦の就労意欲はさらに高まるだろう。

島千佳さんが勤務するワンゲインは従業員十数人規模の会社だ。事務補助的な役回りから始めて、3年で部長に就いた。梅千得社長は「この企業規模だと優秀な人材が採りづらい。就業経験のある主婦は貴重な即戦力」と話す。主婦と企業の双方が一歩踏み出す勇気を持てば人手不足解消に道は開ける。

(編集委員 石塚由紀夫)

[日本経済新聞朝刊2017年5月22日付]

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