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四季島、瑞風、ななつ星 鉄ちゃん視点で見る豪華列車

日経トレンディネット

2017/5/21

6月17日から運行を始める「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」(左)と5月1日から運行を始めた「TRAIN SUITE 四季島」(右)
日経トレンディネット

「極上の鉄道旅」をテーマにした取材で、2017年5月1日に走り始めたクルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」(JR東日本)、6月17日運行開始予定の「TWILIGHT EXPRESS 瑞風(みずかぜ)」(JR西日本)の車両を見学する機会を得た。

車中泊しながら観光スポットを周遊するクルーズトレインのパイオニアが、2013年に運行を始めた「ななつ星in九州」。運行開始から3年たっても、未だに定員の20倍を超える申し込みがある人気列車だ。今年運行を始める2列車は、ななつ星の成功を見て本州のJR2社が“後追い”したものともいえる。

しかし、完成した車両を見ると“三社三様”の考え方があり、車両のコンセプトがまるで異なっていることに驚く。鉄ちゃん的視点で、3つのクルーズトレインの違いを紹介したい。

■(1)「どこでも走れる」驚きの秘密

クルーズトレインの運行区間は、東北本線、山陽本線といった幹線だけではない。風光明媚な車窓や観光スポットはローカル線の沿線にあることも多く、四季島は磐越西線(新津-会津若松-郡山)、ななつ星は久大本線(久留米-湯布院-大分)など、今まで夜行列車が走っていなかったような区間もコースに組み込まれている。こういったローカル線は電化されていないことが多く、現在、特急列車の主流である電車は走ることができない。

その問題をななつ星は“原始的”な方法で解決した。動力の付いていない客車をディーゼル機関車が引っ張る、「ブルートレイン」と同じ方式を採用したのだ。客車にエンジンやモーターがなく、静粛性を保てる点もメリットだ。

一方、後発となる2列車は最先端技術で対応している。四季島は通常は電車として走行。電化されていない区間ではディーゼル発電機を用いてモーターを動かすことにした。発電機は10両編成を動かすために巨大なものとなり、両端の展望車に搭載。1両の重さは60トンといい、これは機関車並みの重量だ。

展望スペースの後ろにあるルーバー部分に発電機が載っている
右側の白い部分が発電機スペース。片側が廊下になっている

車両が重いと線路や橋梁への負担が大きくなり、保守管理が大変になる問題がある。ただ、四季島が走るローカル線・磐越西線は「SLばんえつ物語」の運行区間。重量が100トンを超える蒸気機関車に対応できているので、特に問題はなかったようだ。

四季島がさらにすごいのは、新幹線の線路も走れること。もっとも、線路の幅が広い新幹線に乗り入れられるわけではなく、北海道新幹線と在来線が共用する青函トンネルに対応しているのだ。この区間は線路の幅こそ在来線だが、電圧は新幹線と同じ交流2万5000ボルト(在来線は2万ボルト)、保安システムも制限速度が運転台に表示される「デジタルATC」が採用されている。

これらに対応した結果、四季島は直流1500ボルト、交流2万ボルトと2万5000ボルト、ディーゼル発電という4つのモードを搭載することになった。

では瑞風はどうか。こちらはクルマの世界でメジャーになったハイブリッド方式を採用。ディーゼル発電機で発電した電力とバッテリーアシストを組み合わせてモーターを駆動させている。素人目には四季島と同じようにも思えるが、瑞風は電化区間であってもディーゼル発電機を使い続ける点が異なる。

ディーゼルカーのエンジン音は電車のモーターの音より大きめで、寝台列車には不向きとされてきた。瑞風ではエンジンを両端の展望車と食堂車、ラウンジカーの4両だけに配置。各個室がある車両には置かないことで、就寝時の騒音を最小限に抑えている。ちなみに、ディーゼルエンジンで直接駆動させるのではなく電気モーターを使ったハイブリッド形式にしたのは、発電機の部分以外は電車と同じ構造で、保守点検がしやすいためという。

5号車のラウンジカーの床下にはエンジンやモーターの制御装置などがびっしりと取り付けられている

■(2)ななつ星はクラシック、四季島はモダンなデザイン

ななつ星では、水戸岡氏が手掛けたぜいたくな内装が大きな話題を呼んだ。天然木を使い、組子欄間など細かな装飾が施されている。全体としてはクラシカルなデザイン。その理由について、水戸岡氏は「クラシカルなものは、誰にでもその良さが理解しやすいから」と話す。

実は、水戸岡氏が当初提案したのはモダンなデザインだったという。しかし「JR九州の唐池恒二社長(当時)に、モダンではなくクラシックなデザインにしてほしいと言われた」(同氏)。見たことのないモダンなものは、その良さを理解するまでに時間がかかる。これに対し、長い歴史の中で良いものだけが残ってきたクラシカルなデザインなら、誰しもが上質だと感じられるという考え方からだ。とはいえ、見た目はクラシックだが、技術は最先端。例えば壁や天井は一見木でできているようだが、実際はアルミ板に0.2mmと極薄にスライスした木を貼りつけた「突板」を使っている。

これと真逆のアプローチなのが、四季島。デザインしたのはフェラーリなどのデザインで知られる奥山清行氏。天然木や和紙、漆など伝統的な素材を使いながらも、全体としてはモダンなテイストにまとめられている。いわゆる「和モダン」なデザインにしたことについて、奥山氏は「ただ昔のものをまねするのではなく、新しい日本の伝統というものを作り出さなければと考えている」と話す。過去のデザインを引用しつつ、現代に合った形にするのが奥山流。デザイナーズホテルのような空間になっている。

「デラックススイート」。壁には木や漆が使われているが、ソファは明らかに現代風
5号車の「ラウンジ こもれび」。木をイメージしたオブジェや窓の形が奇抜。北欧デザインの雰囲気を感じる
6号車の「ダイニング しきしま」。中央のシャンデリアは最新の有機EL技術を用いている

では瑞風はどうか。モチーフとなったのは昭和初期に流行した「アール・デコ」という様式。クラシカルな装飾でありながらも直線を基調としており、モダンな一面も備えている。重厚な雰囲気で、伝統あるシティホテルのような雰囲気だ。

車両のデッキ。格子模様のタイルや照明の装飾がアール・デコ調だ
メインとなる客室「ロイヤルツイン」。ストライプ柄の椅子はアール・デコ調らしい
メインとなる客室「ロイヤルツイン」。ストライプ柄の椅子はアール・デコ調らしい

「伝統」こそが瑞風のキーワード。列車名に冠する「TWILIGHT EXPRESS」の名は、1989~2015年まで大阪~札幌間で走っていた豪華寝台特急から受け継いだ。目的地が北海道から山陰・山陽へと180度変わり、「全く新しい列車」(JR西日本)という位置づけではあるものの、随所に旧列車の面影が残る。

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