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官民に「情報銀行」構想 個人データを預かり「運用」

2017/5/23

消費者の購買・検索などの履歴は宝の山

あなたの生活に関する情報を預けていただければ、対価をお渡しします――。そんな「銀行」があったら利用しますか?

「情報銀行」と呼ばれるこの構想は、政府のIT総合戦略本部の検討会が今春まとめた報告書に盛り込まれました。大学や企業でも研究が進んでいます。個人の検索履歴や預貯金といった「パーソナルデータ」を情報銀行が預かり、使いたい企業に貸します。そこで得た収入はお金やポイントなどの形で個人に還元するイメージです。

構想がでてきた背景にはデータを巡る地殻変動があります。

グーグルやフェイスブック、アマゾン。日本でも身近なこれらのサービスは、使えば使うほど、検索や購入の履歴から利用者の関心事や消費の傾向といったデータが会社に蓄えられます。これはモノやサービスを売りたい企業には垂ぜんの的。うまく使えば莫大な利益を生みます。個人の嗜好に合わせた広告がけん引し、世界のネット広告市場は20兆円規模に成長しました。IT(情報技術)と結びつき、パーソナルデータは「21世紀の石油」と称されるほど価値あるものになったのです。

こうしたデータを企業が独占することに異を唱えたのが欧州連合(EU)です。「消費者の手に取り戻す」と本人にデータをコントロールする権利があることを決めました。これを侵した企業には2018年から制裁金を科します。

この先にあるのが情報銀行です。手元に戻ったデータをタンス預金のようにしまい込むだけでなく「運用」できないか。野村総合研究所の城田真琴・上級研究員は「データの活用に踏み込む世界でも類を見ない試み」と話します。

実現には課題もあります。例えば銀行は誰が運営するのか。民間だと倒産リスクがある一方、政府が担うことにも反発が出そうです。「基本的には民間を考えている」(内閣官房)といいますが、具体的には決まっていません。

とはいえ、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」や自動運転が普及すれば、蓄積できるデータは爆発的に増えていきます。それを誰がどう活用するのがよいか。消費者も考えてみてもいいかもしれません。

■柴崎東大教授「AI時代、名寄せデータに価値」

パーソナルデータはどのような可能性を秘めているのだろうか。産学でつくる情報銀行の検討組織「インフォメーションバンクコンソーシアム」の責任者、柴崎亮介・東京大学教授に話を聞いた。

柴崎亮介・東京大学教授

――パーソナルデータを個人の手に取り戻そうという動きについてどうお考えですか。

「10年くらい前からそうした考え方は出てきていたが、欧州連合(EU)がデータポータビリティー権の創設を決めたことで一気に現実が帯びてきた。日本がどうするかということについては、別途、議論が必要だと思う。個人の情報を預かる『情報銀行』構想については、大学で小規模な実験をしている段階。だれがいつ立ち上げるというような具体的な状況にはない」

――パーソナルデータにはどのような価値がありますか。

「パーソナルデータはつながることで価値が生まれる。例えばメンバーズカードを発行している百貨店Aは、お客さんの購買履歴をすべて把握しているかもしれない。でも、そのお客さんは百貨店Bやインターネットでは別の物を買っているかもしれない。なぜそのお客さんはある商品を百貨店Bで買って、百貨店Aで買わないのか、ということがわからなければ、本来販売戦略は立てられない。包括的なデータにこそ価値がある」

――個人がパーソナルデータを管理することでなにが変わりますか。

「いまはそうした包括的なデータを持つのがグーグルやアマゾンなどの企業だ。だが、もし個人が包括的にパーソナルデータを持てるようになれば、企業はそこにアクセスすることで包括的なデータを手に入れられるようになる。人工知能(AI)時代には、1000万人のバラバラなデータよりも、名寄せされた10万人の深いデータのほうが価値がある。そこから無限の戦略が立てられるからだ。そうしたことに向き合わなければ、政府も企業も国際競争力を保っていけないだろう」

(福山絵里子)

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