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白河桃子 すごい働き方革命

働く場所も時間も自由 ユニリーバの先進働き方改革 ユニリーバ・ジャパン「WAA」(前編)

2017/5/18

──カルビーでは、無制限テレワークを導入する前に、席をダーツで決めることで、近くに顔が見えない状況に慣れることからスタートしたといいます。こうして土壌をつくったことで、割と抵抗がなかったといわれていますよね。

島田さんは他社にもWAAの働き方を広めていく活動に取り組んでいる

 つまり、テレワークなどの新しい働き方は、「慣れ」の問題だということです。

 人間は生物学的に考えると、自分の安全を守ることを最も大事にします。分かっていることや知っていることは安全だと思っているから、心地いいですよね。逆に未知の場所に行くときは、不安に感じるのは当たり前です。

 残業時間を「45時間以下」にという目標を定めたことにも、すごく反応があったんですよ。とうとうユニリーバもブラック企業になるのか、と(笑)。

──長時間労働をしないということなのに、なぜそんな声が出たんですか(笑)。

 「45時間までしか残業代を払いませんという意味だ」と受け取った人がいたんですね。実際は、そんなこと、誰も言っていないんです。未知の制度に対して不安が先に増大してしまうから、こんな意見が出るんですよね。

 会社としては、社員からの質問には一つ一つ答えて対話を繰り返し、理解してもらえるように努めました。

■案ずるよりやってしまう方が早い

──WAAが始まった時、社員の皆さんはちゃんと制度を利用しましたか? 制度があっても、慣れないと結局利用せず、みんな会社に来てしまって何も変わらなかったという話も結構あるんです。例えば、マイクロソフトでテレワークを導入した時、結局なかなか利用されなかったそうです。そんな中で東日本大震災が起こり、当時の樋口泰行社長が2週間の出社停止宣言をして、「世界のどこでもいいから仕事をしてください」と表明したんです。こうして図らずも社員全員がテレワークを経験して、何も問題がないことが分かり、一気にテレワークを受け入れる風土が広がったという話があります。このように、本当に食わず嫌いをする会社が多いんですよね。実際にやってみると、「いい制度だ」と気付いてやるようになるんですけど。その点は、何か工夫されましたか。

 WAAは「絶対に社外で働きなさい」というものではありません。会社で働きたい人は、従来通り会社に来てもいい。家やカフェ、図書館で働きたい人は、そうしてもいい。つまり、選択肢を広げているだけなんです。そのことは社員にもしっかり伝えています。

 WAAについては、導入前から、絶対にいい制度だとリーダーシップチームとして確信していました。実際に、対外発表した直後からSNS(交流サイト)や新聞で「画期的な制度だ」「こういう企業がもっと増えるといい」という反響をたくさんいただきました。あまりにも大きな反響に驚いたと同時に、「やっぱりね」って思ったんですよね。みんな、これまで当たり前だとされていた働き方はおかしいと思っていたんじゃないかという確信を得ました。

 そこで私は、当社だけではなく、この新しい働き方を世の中に伝えていこうと思いました。定期的に説明会を開いたり、会社を変えたいと思っている人を集めてディスカッションする「Team WAA!」を結成するなどといった活動を続けています。

 来てくださった人たちと意識やマインドセットを地道に共有しながら、新しい働き方を導入する日本企業が増えていくといいなと思っています。少しずつですけどね。(24日公開予定の後編ではWAA導入後の反応や成果、成功した5つの要因などを伺います)

(写真:吉村永)
白河桃子
 少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。「一億総活躍国民会議」委員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「婚活時代」(山田昌弘共著)、「妊活バイブル」(講談社新書)、「産むと働くの教科書」(講談社)、「専業主婦になりたい女たち」(ポプラ新書)、「進化する男子アイドル」(ヨシモトブックス)など。「仕事、出産、結婚、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。

(ライター 森脇早絵)

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