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キャリアの原点

行政も稼がねば 離島を再生した「よそ者」町長 島根県海士町長 山内道雄氏(上)

2017/5/5

内部部局の職員数を減らし、産業振興や人口問題の担当に振り分けた(海士町役場)

総務など内部部局の職員数を減らし、その分を産業振興や人口問題の担当に振り分けた。重点的に人を配置したのは、観光と定住を担う「交流促進課」、第1次産業の振興を図る「地産地商課」、新たな産業の創出を目指す「産業創出課」です。この3課に関しては、拠点を本庁から島の情報発信兼交流拠点である「キンニャモニャセンター」や、第三セクターの作業所へ移しました。観光を担当する職員が、役場の奥に引っ込んでいてもしかたがないですから。

観光客が島へ来るのは土日・祝日なのに、役場の担当課が開いてなくてどうするんですか。一般に「地産地消」と言いますが、うちは「消」ではなくて「商」。島の外に産品を売らなければ、商売は成り立ちません。土日も関係なく、課長たちは島を売り込むために飛び回っています。

■個人ではなく、「仕組み」に投資する

今、一番力を入れて取り組んでいるのは、就農者を増やすことです。農業・漁業に関しては、汗をかく人よりも、農協・漁協のスーツを着たサラリーマンが楽をしてきた。これでは、後継者など育つわけがありません。

一時金はたくさんあります。だけど焼け石に水で。金が出るなら、もらおう。それもいいですよ。しかし、それじゃあ政策にはなりません。

海士町には東京から移住してきた宮崎雅也君というのがおりますが、彼が干しナマコを作って産業化する時も、議会にさんざん反対されました。加工場を建てるのを、町が支援したからです。たった一人のためにそんなもんを造るのはおかしい、と言われた。だけど、何を言うか、と。「宮崎に支援するんじゃない、島の漁業を支援するために金を使うんだ」と反論しました。

彼が本気で海士町に根をおろして干しナマコを売れば、そこにナマコを出荷する地元の漁師たちも助かる。彼は中国にいた経験がありますから、海外で日本産の干しナマコが高級食材として高額な値段で取引されているのを、よく知っておったんです。

山内町長は「職員が安心してチャレンジできる環境をつくるのが町長の仕事」と語る

第三セクター「ふるさと海士」が運営している「CAS凍結センター」。あれを建てる時も、議会には随分と反対されました。そんな4億円以上もかけて、回収できるのかと。だけど、あれは流通における離島のハンディを克服するには必要な施設でした。それ以前は、島から市場へ出すとどうしても鮮度が落ちてしまうため、足元を見られて安く買いたたかれていた。おかげさまで、「ふるさと海士」は7期連続の黒字です。

今度、コメの乾燥・精米・低温貯蔵のできるライスセンターを、約1億円かけて造ります。それだけのお金をかけるのは、絶対、手抜きができんようにしたいから。地元のJAが文句を言うから、「農協が本気で百姓のコメを売ろうとしたことがあるかい!」と。「あんたらが売らんから、わしが売ってあげようと思っとる」と言い返しました。

町が支援して生産組合さんに作ってもらっている「本氣米」は、東京の三越でキロあたり1800円の値がつきました。これも、売ることに関しては、Iターンのみなさん方に随分とお世話になりました。JAを通じて売ったら、農家の収入はキロ200円にしかならない。これでは続かないですよ。

■職員の心に火をつけるのが、リーダーの役目

私はね、職員が安心してチャレンジできる環境や意識をつくるのが町長、つまり経営者の仕事だと思っています。環境を整備して初めて、職員たちは自分が何をすべきかを理解できる。

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