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「ロボット税」欧米で議論 失業対策、日本も必要に?

2017/4/24

PIXTA

ロボットから税金をとるというSFのような話をご存じですか?

人工知能(AI)を搭載するなどの高度なロボットが工場や職場に行き渡ると多くの人が職を失うので、失業者の支援に使うために税金を取ろうという議論です。

この話が盛り上がったのは欧州連合(EU)の議会で昨年、ロボット税の提案があったからです。今年2月に否決されましたが、ロボットが無制限に増えないように法律の制定を検討するそうです。

課税案には米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が賛同しました。ノーベル経済学賞をとったロバート・シラー米エール大教授も「ロボット税を職業訓練にあてれば労働者の痛みを緩和できる」と理解を示しています。米国では働く人の半分近くが仕事を失うとの予想もあります。大量の失業で経済が回らなくなることへの危機感が背景にありそうです。

日本でも、税に詳しい東京財団の森信茂樹上席研究員は「大量の失業に備えて、新しい税制を考える時期が来た」と話しています。政府が技術開発を支援したAIやロボットの特許などの無形資産に課税する仕組みを唱えています。ただ今のところ国内では大きな議論にはなっていません。

日本はロボット先進国です。製造工程の機械化で効率を上げ、競争力を高めてきました。自動車産業のロボット導入は米国やドイツの約1.4倍とのデータもあります。競争力の源泉だけにロボットへの課税は議論にはなりにくいのかもしれません。経済産業研究所の岩本晃一上席研究員は「課税したら最も稼いでいる自動車産業の工場が海外に移り、雇用は悲惨なものになる」と指摘しています。

32年前、日本でも当時の社会党議員だった安恒良一氏が「ロボットへの課税を真剣に議論すべきだ」と国会で提案したことがあります。その後、新たに生まれたサービス業などが雇用を吸収し、同氏の懸念は杞憂(きゆう)に終わりました。ただロボットにできる仕事が急速に増える今後も同じような道をたどるとは限りません。

ロボット税を「むちゃな話」と笑っているうちに、AIが私たちの税金を計算する日が来るかもしれませんね。

■経済産業研究所の岩本氏「ロボット税、自動車産業に打撃」

人工知能(AI)やロボットの導入と人間の雇用との関係をどう考えたらいいか。経済産業研究所の岩本晃一上席研究員に聞いた。

経済産業研究所の岩本晃一・上席研究員

――そもそもロボットやAIは人間の仕事を奪うのか。

「技術進歩が雇用に与える影響については幅広い試算がなされている。たとえば『米国で今後10~20年内に労働人口の47%の仕事が消滅するかもしれない』という英オックスフォード大研究者の有名な試算は極端な前提をおいている。研究者のマイケル・オズボーン氏に直接話を聞くと『試算は技術的な可能性を示しただけで、雇用が増える効果は一切考慮していない』と言っていた。ドイツのシンクタンクが推計を詳細にやり直すと、米国で失われる雇用は47%ではなく9%だった。さらに産業構造の変化も加味すると、ドイツでは技術進歩によって雇用が増える結果となった」

――雇用の心配をする必要はないのか。

「多くの研究者で意見が一致しているのは、ロボットの導入で失われるのは繰り返し作業の多い中程度のスキルの仕事だ。こうした仕事に就く層に対しては、新しい技術が普及しても働けるように職業訓練を充実させるべきだろう」

「日本で問題なのは、雇用の流動性が乏しいことだ。米国は2000年代に中スキルの仕事が大きく減った代わりに高スキルの仕事が増加した。日本はこうした変化が小さかった。技術進歩にもかかわらず、企業が旧態依然とした雇用を続けることで競争力が失われ、気がついたら大リストラということになりかねない」

――ロボットの所有者に課税して雇用対策の財源にあてるという考え方もある。

「日本が導入するのには反対だ。2016年の米国経済白書によると、日本の自動車産業は労働者1万人当たりのロボット台数の比率が米国やドイツに比べて高い。日本で最も稼いでいる自動車産業のロボットに課税したら、工場がますます海外に移転し、下請け企業が倒産するなど結果は悲惨なものになるだろう。自動車産業にはロボットを使ってもっと稼いでもらい、利益に対する課税を雇用対策の財源にあてるのが筋だ」

(高橋元気)

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