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国際級のカウンターテナー 藤木大地の美しい日本語

クラシックCD 今月の3点

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NIKKEI STYLE

「死んだ男の残したものは」
藤木大地(カウンターテナー)、福田進一(ギター)、大萩康司(同)、西山まりえ(ハープ)、松本和将(ピアノ)、加藤昌則(同)

2017年4月7日。カウンターテナーの藤木大地(1980年生まれ)はドイツの現代作曲家、アリベルト・ライマンの「メデア」のヘロルド役でウィーン国立歌劇場デビューを成功させた。すでに4年前、東京・日生劇場の「リア」で傑出した歌唱、演技をライマンに高く評価されており、満を持してのウィーン「帰還」だった。

新国立劇場オペラ研修所の第5期生に在籍(2002年4月~05年3月)していた当時は、テノール。同期には、後にロンドンのロイヤルオペラやミュンヘンのバイエルン州立歌劇場で活躍することになるソプラノの中村恵理もいて、ともに03年10月のアンドレアス・ホモキ演出の「フィガロの結婚」(モーツァルト)初演で新国立劇場の大劇場(現オペラパレス)にデビューした。間もなく藤木は奨学金を得てウィーンへ留学、国立歌劇場にも通いつめるうち、テノール歌手としての自身の将来に見切りをつけた。

「最初、残りの留学期間をアートマネジメントの勉強に充てようと考えた。どうしても歌をあきらめきれず、風邪気味のときにカウンターテナーの発声を試したら意外なほどうまくいき、もう一度、歌にかけようと思い直した」。こう語っていたのは11年の秋ごろだが、早くも1年後には日本音楽コンクール声楽部門で第1位。カウンターテナーの優勝は、同コンクール史上初だった。

ウィーン国立歌劇場の晴れ舞台に先立って出たデビュー盤はヘンデルのオペラ「セルセ」の中のアリア、「オンブラ・マイ・フ」から、東日本大震災からの復興支援ソング「花は咲く」までの16曲を収めた。アルバムタイトルの「死んだ男の残したものは」は1965年、ベトナム戦争の反戦集会のために谷川俊太郎が作詞、武満徹が作曲した名作。藤木がテレビで歌った際は、大きな反響を呼んだ。

3曲目のアイルランド民謡、「ダニー・ボーイ」の後半から日本語となり、日本歌曲の名作へと進む。藤木の発声はどこまでも自然で、往年のカウンターテナーにありがちだった「むりやり感」がない。「高校生のころ、新聞記者を目指したことがあった」との背景もあるのか、言葉への感度が鋭く、日本語を日本語として美しく発音し、聴く者の心へとしっかり送り届ける。「名刺代わり」以上の存在感を堂々、主張している。(キング・インターナショナル)

「ファンタジー~モーツァルト&シューマン」
ピョートル・アンデルシェフスキ(ピアノ)

1969年ワルシャワ生まれだから、年齢的に「中堅」から「巨匠」へと成熟する段階にあるはずのピアニスト。だがアンデルシェフスキには今も、多感で傷つきやすい半面、簡単なことでは妥協しない青年の精神がみなぎっている。最後に会ったのは2015年春、東京のホテルオークラ旧本館だった。「間もなく取り壊される」と告げると、音楽の話そっちのけになり「これほど美しい建物なのに(解体は)間違っている」と、文化財保護の大切さを熱く語り出した。

批判の矛先は次第に19世紀後半、革命の時代の熱気を忘れて保守へと急傾斜したブルジョワジー(富裕市民層)に向かい、「何事も彼らが正しいと思う状態、方向に当てはめようとするコンフォーミズム(準拠主義)が音楽の姿までゆがめてしまった」と指摘。ピアノの分野の被害者として、ショパンとシューマンの名を挙げた。

ショパンはピアノ協奏曲の管弦楽が「弱い」と批判され、19世紀後半に多くの作曲家が補強や編曲を試みた。「自己批判にたけたショパンは限界を知り抜き、『弱さ』への礼賛として、あえて控えめな色彩を与えた」との考えは「当時、皆無だった」という。シューマンがライン川に身投げする直前に楽譜を仕上げた「精霊の主題による変奏曲」も、夫人のクララによって出版を封印された。一般には良妻賢母の鑑(かがみ)のように描かれるクララだが、アンデルシェフスキは「19世紀後半の名技主義とブルジョワジーの権化で、夫がみせた『最後の正気』を理解できなかった」と手厳しい。

今回の新譜でモーツァルトの「幻想曲ハ短調K(ケッヘル作品番号)475」、これと一体の「ソナタ第14番ハ短調K457」にシューマンの「幻想曲ハ長調作品17」を組み合わせ、最後に「精霊の主題による変奏曲」を置いたアンデルシェフスキの意図は鮮明、一貫した流れがある。優れた技巧のすべてを譜面の深読みと、作品から立ち上る「気」の再現にささげた音楽。「20世紀初頭に定期演奏会を始め、表現のスタイルが固まってしまったオーケストラと違い、ピアニストは1人だから、もう少しインスピレーションを豊かに膨らませ、一晩の演奏会なり1枚のアルバムを創造できる」と、意識は明快である。(ワーナークラシックス)

「シューベルト歌曲集」
ナタリー・デセイ(ソプラノ)
フィリップ・カッサール(ピアノ)

2017年4月19日、東京オペラシティコンサートホールで開かれた「ナタリー・デセイ&フィリップ・カッサール デュオ・リサイタル」。ナタリー52歳の誕生日と重なった偶然もあり、イタリア語とドイツ語、フランス語の多彩な曲目を通じ、1人の女性の愛と人生の変転を強く印象づける秀逸な内容だった。

ナタリーは20歳で女優志望からソプラノ歌手に転じ、超絶技巧のコロラトゥーラ(装飾唱法)と迫真の演技で世界を制覇した。だが2001年以降は喉の不調に悩まされ、何度かの手術を経た13年、オペラのキャリアに終止符を打った。以後は女優とシャンソン歌手、芸術歌曲のリサイタリストとして、独自の表現世界を究めている。

ピアニストのカッサールは同じくフランス人で、ナタリーより3歳年長。パリ音楽院だけでなくウィーン音楽大学でも学び、ドビュッシーとシューベルトの全曲演奏に定評があるソリストだ。ナタリーとは11年にドビュッシーの歌曲の録音で初めて共演して以降、世界各地でデュオ・リサイタルを重ねてきた。ピアノのふたを全開にしながらも、全盛期の声量ではない共演者の繊細な表現のニュアンスを最大限に生かせるように、「ソロのときとは異なる奏法を何年もかけ、探求してきた」と、カッサールは打ち明ける。

名コンビが新たに取り組んだのが、ドイツ歌曲(リート)の頂点に君臨するシューベルトだ。ナタリーはシューベルトに傾倒するカッサールとともに600曲以上の作品に当たる一方、オーストリアのリート歌手ウォルフガング・ホルツマイヤーの助言も受け、16曲からなる初アルバムを完成した。この新譜を携え、東京から始まった世界ツアーには「ミニヨンの歌」「糸を紡ぐグレートヒェン」など女性心理にまつわる5曲を選んだが、CDは「白鳥の歌」の「愛の使い」、クラリネット(トーマス・サヴィが独奏)を伴った「岩上の牧人」といった有名曲も収めている。「水の上にて歌う」だけはリストの編曲により、カッサールのピアノソロで味わう。

中でもゲーテの詩による傑作、日本の小学校の授業でも聴かされる「魔王」にはデセイとカッサールが達成したシューベルト解釈の特色が、はっきりと現れる。このリートは魔王、父親、息子の3者の心理を交互に語りながら進むが、たいがいはバリトンの低い声で歌われるために魔王寄り、あるいは父親寄りの視点が強調される。ナタリーの細く鋭く、心理描写にたけた声は明確に息子の立場を代弁し、病の恐怖の果てに消える小さな命に対し、ありったけの愛情を注ぐ。こんな震えに彩られた「魔王」は聴いたことがない。(ソニー

(コンテンツ編集部 池田卓夫)

「死んだ男の残したものは」 (CD) [日本語帯・解説・歌詞訳付]

演奏者 : 藤木大地
販売元 : King International
価  格 : 2,114円 (税込み)

ファンタジー~モーツァルト&シューマン

演奏者 : アンデルシェフスキ(ピョートル)
販売元 : ワーナーミュージック・ジャパン
価  格 : 2,808円 (税込み)

シューベルト:歌曲集

演奏者 : ナタリー・デセイ
販売元 : SMJ
価  格 : 2,600円 (税込み)

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