最安iOS機となった新iPad 欠点はズバリ、液晶
戸田覚のデジモノ深掘りレポート
そろそろ新しいiPadの発表の時期ということで、10.5型などのモデルを期待していたのだが、ふたを開けてビックリ! なんと、新しく発表された「iPad」は廉価モデルだった。「iPad Pro」は完成度が高いので、簡単に新モデルは出せないということなのだろう。
新iPadは、現行のiPadの中では一番安く、iPod touchを除くiOS搭載端末としても最も安価である。このモデルはタブレット市場に一石を投じることになるのではないだろうか。安いので学生などにも売れること間違いなし。ひょっとしたら一括導入に踏み切る学校も出てくるかもしれない。
もちろん、価格が安いのだから、それなりに妥協すべき点もあるはずだ。このモデルを否定するつもりは毛頭ないが、今回は意外に気付きにくい欠点もズバリ指摘したいと思う。
まずは32GBモデルのスペックと価格をiPad Proと比較してみよう。
●サイズ:240×169.5×7.5mm●重量:469g(Wi-Fiモデル)●液晶:9.7型(2048×1536ピクセル)●チップ:A9●カメラ:800万画素●価格:3万7800円~
●サイズ:240×169.5×6.1mm●重量:437g(Wi-Fiモデル)●液晶:9.7型(2048×1536ピクセル)●チップ:A9X●カメラ:1200万画素●価格:6万2800円~
デザインは古いが処理は高速
新iPadの本体は、iPad Proと比べるとやや分厚い。サイズは2世代前のiPad Airと同じ、要するにデザインが古いのだ。特にセルラーモデルの背面の仕上げはiPad Proと大きく違い、高級感では遠く及ばない。
とはいえ、実物を手にしたら古めかしいという印象はほとんど受けないだろう。iPadのデザインがそれだけ完成されているということだ。実は「iPad Air 2」が登場したときに少し薄くなったのだが、僕は、それだけの理由で買い換える気にはならなかった。
新iPadが素晴らしいのは、高速なA9チップを搭載していることだ。2013年に発売された「iPad Air」はA7チップだったので、かなり進化している。当面は問題なく使えるだろう。もしもiPad Airが2万円程度で販売されていても、僕なら迷わず新iPadを選ぶ。現役で使える期間が間違いなく長いからだ。
スペックでは分からない液晶の差
新iPadとiPad Proのディスプレーは共に同じ9.7型で、解像度は2048×1536ドットだ。スペック上は差がないのだが、実物を見比べると違いがあまりにも大きい。
iPad Proは液晶とガラスの間に隙間のないダイレクトボンディング(フルラミネーション)なのだが、新iPadにはわずかながら隙間がある。そのために光が乱反射して、角度によっては画面が白っぽく見えるのだ。
また、iPad Proは反射防止コーティングが施されているのに対し、新iPadは耐指紋性撥油コーティングのみだ。しかも、色度域の広さ、True Toneディスプレイなどの機能も新iPadは搭載しないし、Apple PencilやSmart KeyboardはiPad Proでなければ使えない。
ひと言で言うなら、新iPadとiPad Proでは、液晶の美しさが雲泥の差ということだ。とはいえ、あまり細かいことは気にしない、価格が大きく違うから妥協できるというなら、新iPadの液晶もありとは思う。
撮影して分かるカメラ性能の違い
カメラはiPad Proの1200万画素に対して、新iPadは800万画素にとどまる。しかも写真の色域に差があるために、写真を撮影して比較してみると差がはっきりする。
新iPadにはフラッシュがないし、そもそもiPadで写真を撮るのか……という意見もありそうだ。僕の場合は書類などを取り込むケースが頻繁にあるが、そんな使い方なら新iPadでも問題ない。
新iPadは、世代の古いボディーに高性能なCPUを搭載し、価格を抑えたモデルだ。液晶やカメラの性能に欠点はあるが、用途によっては問題なし。予算不足で今までiPadの購入を見送っていた層も、これなら手が届くかもしれない。他社の製品と比べても、コストパフォーマンスは高いだろう。例えば、エイスースの「ZenPad 3S 10」は、同じ9.7型液晶を搭載するライバルモデルだが、価格の安さ(直販サイトで4万2984円)という優位点はなくなってしまった。
新iPadは、年配の親へのプレゼント、中学、高校、大学の入学祝いにもいいと思う。春のシーズンに、あえてこんなモデルを投入したことは高く評価したい。なお、ストレージを128GB搭載したモデル(4万8800円)もあるが、僕なら32GBのWi-Fiモデルを買って、ストレージを節約して使う。安くないと意味がないからだ。
1963年生まれのビジネス書作家。著書は120冊以上に上る。パソコンなどのデジタル製品にも造詣が深く、多数の連載記事も持つ。ユーザー視点の辛口評価が好評。
[日経トレンディネット 2017年4月13日付の記事を再構成]
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