それじゃ炎上一直線! 日本人が避けたい3つの英語
デイビッド・セイン「影の英語」(25)クレームに答える
ひとつの言葉は様々な顔を持っています。日本人の言葉が意図していない意味合いで伝わることもあります。日本人向けの英語教育で豊富な経験を持つデイビッド・セインさんが、日本人が使いがちな言葉から「影にある意味」を紹介します。今回は客先から来たクレームに対応する場面です。
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お客様に販売したものが何事もなくスムーズに動いてくれれば何の問題もありません。どれだけ技術者がその技術力を結集した製品であろうと不測の事態が起こりえないことはないのです。万が一お客様からそのような苦情が寄せられた場合、かける言葉は非常に重要です。お客様にとっては十分すぎるほど不満なはずですから。
The machine I bought from you suddenly stops and then starts again. 「お宅から買った機械なんですけど、突然止まったと思ったら、また動き始めたんです」。さあ、どう答えましょう?
正しい訳:あまり大した問題ではないですね。
影の意味:あなたは心配性ですね。
「いったんは止まったけど、結局動いたんですよね」という気持ちが見え隠れしています。相手を見下す表現になります。
正しい訳:心配しなくても大丈夫です。
影の意味:気にしすぎですよ。
相手の心配する気持ちを無視する言い方になります。
正しい訳:今まではそのようなクレームはありませんでした。
影の意味:あなたは嘘を言っていますよね。
直訳すれば、「この件についてクレームしてきたのはあなたが最初ですよ」。すなわち「そんなことは聞いたことがありません」ということ。実はクレーム対応で意外と多いのが、このひと言。「あなたは嘘を言っていますね(あまり信用できません)」と相手の言葉を信用しないニュアンスが色濃くあります。
これなら「影の意味」はない!
もう少しお聞かせいただけますか?
Could you …? 「~していただけませんか?」は、誰に対してでも、いつどんな場面でも使える依頼の万能表現です。もっと聞きたい、もっと知りたいということで、相手のクレームをきちんと受け止め、誠実に対応しようとしていることが分かります。
お調べします。
相手から事情を聞くことを含めて、こちらサイドとしてもきちんと調査をする必要があります。その姿勢を相手に伝える言い回しです。
どなたか他にもそのような経験をされていないかどうか見てみます。
「こんなことを聞くのは初めてです」ではなく、まずはこのように言って、こちらの姿勢をきちんと示しましょう。
あなたが知らない本当の使い方―― worry
・I was worried sick that you were seriously injured. あなたが重傷を負ったと聞き、とても心配でたまりませんでした。
*be worried sick: 心配でたまらない、とても心配で仕方がない
・We had a big seller last year, so we don't have any money worries right now. 昨年よく売れた商品がありますから、現在お金の心配はありません。
*money worries: お金の心配、お金の憂い
・Inflation worries are growing, so interest rates will probably go up. インフレへの懸念が高まっています。おそらく金利は上昇するでしょう。
*inflation worries: インフレへの懸念 interest rates: 金利
・Don't be such a worry wart. Everything is going to be okay. そんなにくよくよしなさんな。すべて順調に行きますから。
*worry wart: ささいなことをくよくよ気にする人
・I didn't want to worry you, so I fixed the problem myself. あなたを心配させたくなかったので、自分で問題を解決しました。
*worry someone with: ~で人を心配させる、悩ませる fix the problem: 問題を解決する、片付ける
・The client is consumed with worry. 顧客は心配で仕方がありません。
*be consumed with worry: 心配で仕方がない、不安に駆られる
・A: Can you really meet the deadline? 本当に期限に間に合いますか?
B: Not to worry. I'll work on the weekend. 心配ご無用です。週末に作業しますから。
*not to worry: 心配無用、心配には及ばない
・This project has made me physically sick with worry. このプロジェクトの気苦労がたたって体調を崩してしまいました。
* make oneself physically sick with worry: 気苦労/心配がたたって、体調を崩す
*physically sick: 体調を崩して
・I've had this machine for three years, and it's been a constant source of worry. この機械を3年間使って来ましたが、絶えず悩みの種になっています。
*constant source of worry: 絶えない心配や悩みの種
・I've used this machine for three years, and it's been worry-free. この機械を3年間使ってきましたが、まったく心配いらずです。
* -free: ~のない、含まれていない
*worry-free: 心配のいらない、心配いらずである
I worry … とI'm worried …両方ともよく見る表現ですが、実はどこが違うのでしょうか。簡単に言ってしまえば worry は「気を揉む、心配する、思い悩む」ということであり、be worried about であれば「気を揉んでいる、心配している、思い悩んでいる」という意味になります。前者は「動詞」ですが、特に「動作」を表しているわけではなく、be worried about と同じく「状態」を表していると考えればよいでしょう。
ただ、その「状態」が「常に」であるのか、「現在」であるのかと考えると分かりやすいかもしれません。
もうすぐ市長選があります。「色々問題を抱えたこの市のことが心配でならない」と言うのであれば、この心配はずっと、そして常にあるので I worry about the future of the city. になります。でも、「明日の選挙結果が心配でならない」と言うのであれば I'm worried about the results of the election. と言うとしっくりきます。
また息子に関してI worry about him. と言う時、父親や母親の気持ちの中には「息子の将来を案じる」含みが強く、例えば息子が何か犯罪を起こさないか、息子が悪い友人と付き合っているのではないかのように、重大なニュアンスが感じられます。
一方、 I'm worried about him. と言うと「約束の時間に来ていない、ちょっと遅れそうだ」というように「今の状況について心配している」というイメージになります。
Do your best!
:D セイン
米国出身、20数年前に来日。企業や学校の人気セミナー講師。英語関連の出版物の企画・編集を手掛けるAtoZ(http://www.atozenglish.jp)・AtoZ 英語学校代表。