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「酒は百薬の長」は本当? 実は条件付きだった

日経Gooday

2017/5/1

「少量飲酒であっても、リスクが上がるのは主に高血圧、脂質異常症、脳出血、乳がん(40歳以上)などです。これらの疾患は、飲酒量に比例してリスクは直線的に上がっていきます。つまり、少量でも飲酒すればリスクは上がります。乳がんは遺伝的な要素が強い疾患ですが、それでもアルコールを飲まないより、飲むほうが罹患(りかん)リスクは上がります」(樋口さん)

「肝硬変の場合は、指数関数的な傾向を示します。飲酒量が増えるとリスクが上がるのは同じですが、少量の場合のリスクの上がり方は穏やかで、ある水準を超えると一気にリスクが高くなります」(樋口さん)

樋口さんの挙げる疾患名を聞いて、恐れおののく。高血圧も脂質異常症も乳がんも、いずれもミドル以上におなじみの病気だ。しかしそうであれば、なぜ全体の死亡率については、「適量の飲酒でリスクが低くなる」という傾向が見られたのだろうか。

「上のグラフにあるように、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患、脳梗塞、2型糖尿病などは、少量飲酒によって罹患率が下がる傾向が見られます。そして、心筋梗塞などの心疾患が死亡率に及ぼす影響はとても大きいのです。つまり先に挙げた少量飲酒によってリスクが上がる疾患より、心疾患などリスクの下がる疾患の影響が大きいために、全体の総死亡率としては、Jカーブのパターンになっているのです」(樋口さん)。このほか、樋口さんによると、(高齢者の)認知機能低下についても、発症するリスクが低くなることが確認されているという。

なるほど、そういうことだったのか。では、これらの結果をどう受け取り、飲酒をどうしていけばいいのだろうか。樋口さんに聞いてみた。

樋口さんは、「高血圧、脂質異常の持病を持った方、肝機能の数値がおもわしくない方、乳がんに罹患した人が身内にいる方などは、少量飲酒でもリスクが高まるわけですから、通常の方より飲酒量を抑えるように注意したほうがいいのは確かです」と話しながら、こう続けた。「とはいえ、飲酒はコミュニケーションツールであり、日常のストレスから解放してくれる楽しみの一つでもあります。例えば高血圧の方が飲酒量を抑えた方がいいのは確かですが、過度に神経質になる必要はありません」(樋口さん)

注意するに越したことはないが、過度に神経質になり過ぎることはない。これを聞いてちょっとホッとする。ムチャ飲みせず、楽しむ程度にたしなめば、酒は決して怖いものではないのだ。

ここまでの説明で、飲酒によるリスクが病気により異なることはよく分かった。では、アルコールに対する耐性が弱い人、つまりお酒を飲んですぐ顔が赤くなる人はどうなのだろうか。また、高齢者の飲酒のリスクは? 次回はそれとともに、飲酒量を減らすコツについてご紹介する。

樋口進さん
独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター院長。1979年東北大学医学部卒業。慶應義塾大学医学部精神神経科学教室などを経て、1982年国立療養所久里浜病院(現・国立病院機構久里浜医療センター)勤務。2012年から現職。日本アルコール関連問題学会理事長、WHO研究・研修協力センター長、WHO専門家諮問委員(薬物依存・アルコール問題担当)、国際アルコール医学生物学会(ISBRA)前理事長。

(エッセイスト・酒ジャーナリスト 葉石かおり)

[日経Gooday 2017年4月4日付記事を再構成]

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