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スタンフォード 最強の授業

2017/4/16

スタンフォード 最強の授業

佐藤智恵(さとう・ちえ) 1992年東京大学教養学部卒業。2001年コロンビア大学経営大学院修了(MBA)。NHK、ボストンコンサルティンググループなどを経て、12年、作家・コンサルタントとして独立。「ハーバードでいちばん人気の国・日本」など著書多数。

佐藤:自殺未遂をした、という事実を公にしたのは、TEDでのスピーチが初めてでしたか。

シュラム:そうです。私は自分が2003年に自殺未遂をしたことを、本当に限られた人にしか打ち明けていませんでした。あえて公にしたくなかったのです。

ところが、2010年、転機が訪れます。TED主催の講演会で、ある女性のスピーチを聴いたことです。その講演会には一般の人が参加できる「3分間スピーチ」というコーナーがありました。そこで彼女は、脳腫瘍とともに生きる日々を赤裸々に語り、講演の最後をこのような問いかけでしめくくりました。

「3年後、おそらく私はこの世にいません。生きている皆さんは3年後、どこで何をしているでしょうか」

たった3分間でしたが、本当に感動的なスピーチでした。特に最後の質問が私の脳裏から離れませんでした。「生きている自分は何をすべきだろうか」と。自分がやるべきことは、自殺しようと思っている人たちの助けとなることではないか。生きていることがどれだけ素晴らしいか伝えることではないか。そう考えて、「私も自らの経験を語ろう」と1年後のTEDをめざすことにしました。

2011年、「3分間スピーチ」に応募し、200~300人ぐらいの人の前で講演しました。それが、「自殺未遂者の沈黙を破る」です。

ウェブでの公開にはためらう気持ちも

佐藤:最初の聴衆は300人だけだったのですね。それが現在は150万回以上も再生されていて、世界中の人が、シュラム先生が自殺未遂をしたことを知っている。ものすごい覚悟を持って、講演されたのですね。

シュラム:TEDから、講演をTEDライブラリーに加えて公式ウェブサイトで公開したい、と相談があったとき、私はとても悩みました。300人ぐらいが知っている分にはいいけれど、これを公開してしまえば、世の中の人々から、「あの人は自殺未遂をした人だ」という目で見られることになる。そんな覚悟が自分にはあるだろうかと。

それで最初は「少し考えさせてください」と言って了承しなかったのです。でも3カ月ほど悩んだ末、ビデオを公開することに決めました。きっかけは、私の親しい友人が自殺で亡くなってしまうという悲しい出来事でした。ビデオを公開すれば、自殺を思いとどまってくれる人がいるかもしれない、と強く思ったのです。

佐藤:2011年6月11日にTEDの公式ウェブサイトに公開しました。

シュラム:この日を選んだのは2つ理由があります、1つは、6月11日は私が自殺を図った日で、私が第二の人生を与えられてから8年目を迎えた記念日でもあったこと。もう1つは、夏休み中だったこと。さすがの私も公開直後に、学生を目の前にして授業をする勇気はなかったのです。

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