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「待機児童ゼロ」先送りへ 0歳児保育見直しの声も

2017/4/10

■宇南山准教授「コスト問題から目背けるな」

政府が待機児童ゼロを政策目標に掲げて16年がたとうとしている。保育所を整備すればするほど利用希望者が増えて、いつまでも保育所不足が解決しない。どうすれば待機児童ゼロを達成できるのか。経済学者として長年保育問題をみてきた宇南山卓・一橋大学准教授に秘策を聞いた。

宇南山卓・一橋大学准教授

――供給増が新たな需要を掘り起こす。こんな追いかけっこはいつまで続くのですか。

「足元の待機児童数を目安に保育所をどんなに増やしても待機児童ゼロにはならないでしょう。根本的な問題は保育料が安すぎること。行政が1人の子どもに掛けるコストと比べて、実際に保護者が保育料として支払っているコストが格安です。乳幼児を育てる保護者にすれば家で世話するよりも預けた方が得。なのでいつまでたっても潜在需要を掘り起こし、待機児童はなくなりません」

「例えば東京都大田区のケースでみてみます。0歳児を1人預かるのに、行政は月額約62万円掛けています。対して保護者が支払う保育料は月額上限6万円強。言い換えるならば毎月56万円も公的な補助を受け取っていることになります。もし働かずに家で子どもを世話していれば公的補助はありません。でも保育所を利用すれば56万円の補助を得られます。実際に現金で受け取れるわけではありませんが、どっちが得かは明白です。現状の保育所制度は利用者に手厚い仕組みになっていますが、利益の多寡に応じて受益者が負担するという『応益負担』の原則を導入し、保育料を今より高く設定すべきだと思います。そうすれば利用希望者の増加に歯止めがかかり、待機児童はなくせます」

――確かに保育料を高くすれば、待機児童もゼロに近づくでしょう。でも日本は一方で女性活躍推進にも取り組んでおり、仕事と子育ての両立が困難になっては本末転倒ではないですか。

「すべての乳幼児の保育料を上げる必要はありません。問題は0歳児です。0歳児の保育料を上げるだけで状況はかなりよくなると思います。先の大田区のケースでも、区の負担額は1歳児27万円、2歳児24万円、3歳児12万円、4~5歳児10万円と年齢が上がるにつれて安くなっています。0歳児の負担が突出して高いのです。0歳児保育に応益負担を徹底すれば保育料収入が増える分、財政に余裕も生まれます。増収分を保育士の待遇改善に役立てれば保育士不足も緩和できます」

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