2017/4/5

90秒にかけた男

「このほか、福岡で実物の商品を手に取れる体験型店舗を開設しました。ここは売り上げを上げるための店舗ではなく、お客様に実際に商品を触っていただいてその時の声を商品開発や制作に生かすためのものです。実際、体験型店舗でのお客さまの反応(リアクション)を承諾を得て、テレビ通販で流すといったこともしています。だから体験型店舗自体には売り上げ目標はありません。地元の九州での出店にとどめ、首都圏に出す計画はありません」

――業績面では明さんがいなくなった影響はあまり認められませんが、何か気にかかることはありますか。

「もっと制作や商品に力を入れたい」と語る

「現在はグループ8社のうち5社のトップを私が務めていて、本来は持ち株会社や商品や制作関連に力を割くべきところが、できていません。父は経営者としての仕事の7~8割を制作や商品に割いていました。私は3割ぐらいしか割けていません」

「通販番組で以前だったら言わない表現も出てきました。そういうのを気付くたびに止めていますが、そうした売り方が広がると、ジャパネットらしさがなくなると懸念しています。そこが一番怖いところです」

「例えば煽(あお)り文句を使いすぎると、最後にはお客様はわかってしまいますからね。信頼を失い、ジャパネットがジャパネットでなくなります。こうした危険をわかる社員も増えてきているのですが、危ない場面があるとつい心配してしまいます。私がもっと制作や商品に力を入れ、そうした点を修正していかなければならないとは考えています」

家族的な関係性を大事にできなくなったら、ジャパネットではなくなる

――非上場をこれからも貫くのですか。

「この点こそ父の影響を強く受けているところだと思いますが、利益はあくまで結果であり利益を目的として行動する考えはありません。一時的にお金がかかっても、お客さんにとってベストなことをやろうと決めるには上場はできないなと思っています」

「上場したら、株主への配当などが先に立って、長期的な視点で経営することが難しくなるからです。V・ファーレン長崎の支援も株主から理解を得るのは難しいでしょう。これまでもメーンスポンサーとして支援してきました。父がサッカースタジアムに行くと、サポーターの皆さんがジャパネットの歌を歌ってくれるんです。そういう光景を私は見ていたので、長崎でジャパネットが育ててもらった恩返しとして決断しました。こうした家族的な関係性を大事にできなくなったら、ジャパネットではなくなるでしょう。だから私も父の時代と同様、非上場を続ける方針です」

(シニア・エディター 木ノ内敏久)

前回掲載「スター創業者引退、『言い訳できない』働き方を追求 」では、カリスマ創業者の引退後、新たな会社の在り方を模索する今を語ってもらいました。