男性が女性より短命なのには、深いワケがあった東京大学大学院・近藤尚己准教授に聞く「ストレス社会への処方箋」(2)

日経Gooday

一方、女性は貧困だけでは寝たきりのリスクは上がりませんでした。ただ、貧困にプラスして、知人や友人がいないとか、経済的な理由で趣味活動などができないという「交流」の要素が制限されると、女性の寝たきりのリスクは1.7倍くらいに跳ね上がるという結果でした[注3]

つまり、女性は、お金がなくても生きる力を持っていますが、繋がりまで失うと耐えられないということです。もちろん、男性はその両方がリスクとなりますので、より寝たきりのリスクが高いといえます。

「お金と同じように、人との繋がりも資源だ」という考え方がありますが、まさにそれを反映している調査結果となりました。

[注3]Saito M.,et al. Gender differences on the impacts of social exclusion on mortality among older Japanese: AGES cohort study. Soc Sci Med 2012;75:940-5.

――そういえば、男性と女性とでは、平均寿命も異なりますよね。

男女で平均寿命に差があるのは、日本だけでなく世界中で見られる現象です。ちなみに日本人の場合、女性は87.05歳、男性は80.79歳(2015年、厚生労働省調べ)となっています。女性の方が寿命が長い。この理由も、もしかすると単に生物学的に女性のほうが強いとか、男性が弱いということだけではなくて、社会的側面が関係しているのかもしれません。つまり、「人と繋がる力」とか、「社会の中に適応する力」に男女差があり、女性の方が強いから、という可能性があるのです。

――これまでのお話で、人との繋がりがこれほどまでに健康に影響することに驚きました。

人間にとってコミュニティーや社会というものは、不可欠というよりも、それが人間という生き物の特徴そのものなのではないかと思います。

もちろん、職場もコミュニティーの一つですから、職場環境が悪ければ病気になりやすくなります。近年、「ブラック企業」という言葉がよく聞かれますが、これも職場環境の劣悪さのことですよね。職場環境は、労働時間などの労働条件に関する法律だけで決まるわけではありません。従業員の努力がちゃんと認められる環境になっているだろうか、働きやすい環境だろうか――。そういったことを規定する企業の経営理念やそれを決めている経営層には、非常に重い責任があります。

◇        ◇        ◇

孤立は不健康に繋がり、ひいては寿命を縮めることがある。興味深いことに、女性よりも男性の方がリスクの要素が多いという。では、男性にとって特に重要なコミュニティーである会社とストレスの関係はどうなのだろうか。次回は、職業や職場での役割とストレスについて、詳しくお話を聞いていこう。

近藤尚己さん
社会疫学者、医師、医学博士 東京大学大学院医学系研究科准教授。東京都町田市生まれ。2000年、山梨医科大学医学部医学科を卒業。その後、ハーバード大学公衆衛生大学院での客員研究員、山梨大学大学院医学工学総合研究部社会医学講座講師などを経て、2012年より現職。専門分野は、社会疫学、公衆衛生学、健康格差対策、健康に影響を与える社会的な要因の研究。

(ライター 森脇早絵)

[日経Gooday 2017年2月24日付記事を再構成]

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