実力勝負、起業が女性の生きる道 性差気にせず挑戦20代で増加

2017/3/20

自分にしかできない事業を実現しようと20代で起業する女性が増えている。事業を成長させることは男女問わず難しいが、実力が問われる分、性差を気にせず挑戦できる。もがきながらも自分らしい生き方を追求するスタートアップ企業の女性経営者の姿を追った。

画像分析を使い市場調査 山浦真由子さん

「やりたいことをしていない間は、自分の時間を他人のために切り売りしているようなもの」。米アップルの創業者スティーブ・ジョブズ氏の言葉を聞いた時、山浦真由子さん(28)は自分も起業しようと心を決めた。

山浦さんは画像分析を使い市場調査やマーケティング情報を提供するedison.ai(東京・港)の共同創業者。前身となる会社の設立から2年たつ。フェイスブックなどSNS(交流サイト)に掲載された無数の画像を人工知能(AI)で分析し、どの商品がどんな場面で使われているのかをリサーチ。大手消費財メーカーからの受注も獲得し、事業は花開きつつある。

独自の画像解析技術で市場分析を手掛けるedison.aiを起業した山浦真由子さん(東京都港区)

国内の大学から米大に移り、マーケティングを学んだ。米大卒業後もそのまま現地の市場調査会社で働いていたが、「このままでは日本で生活できなくなる」との思いが募り帰国した。

大きかったのは現在の共同代表のIT技術者、ティーティー・チュウさんとの出会いだ。写真の中のブランドのロゴなどを正確に認識し、撮影場所や人物の年齢性別まで特定する人工知能を開発する技術力があった。

「これならマーケティング事業として十分に生かせる」。起業の夢が現実味を帯びた。2015年に現在の前身になる会社、Brand Pitを立ち上げ事業に専念。「日本発のグローバルなIT企業を目指したい」と抱負を語る。

そこに性別の差はない

起業に踏み切るのは勇気が必要だったが、「そこに性別の差はない」(山浦さん)。むしろ、女性起業家が少ない中で名前を覚えてもらいやすかったり、セミナーへの参加で優遇してもらったりと「女性だからこそ得する部分も多かった」という。

お祭りの企画・支援 加藤優子さん

「『加藤さんだから応援したい』と言ってもらえる。それが支えです」。日本各地の祭礼や商店街の「祭り」の企画や支援を手掛けるオマツリジャパン(東京・新宿)の代表取締役、加藤優子さん(29)も成長中のスタートアップ企業経営者の一人だ。

少子高齢化で担い手や参加者が減り、消滅の危機にある祭りは多い。加藤さんは全国各地の祭りの参加者の募集や演目の企画、場合によっては消防や警察の手続きを代行する。これまで10カ所以上の祭りのプロデュースを手掛けてきた。

事業を立ち上げたきっかけは、東日本大震災の直後の2011年。母親の実家のある青森のねぶた祭で久しぶりに明るい笑顔を見たことだ。「地域の祭りの魅力を高めることが日本全体を元気にする」と意気込む。

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時間制約なく働ける環境を~取材を終えて~