【疲労が長期にわたって続いた場合の症状】

○全身倦怠感がひどくなり、頭も体もボーっとして思うように働かなくなる。仕事の効率は大幅に低下する。また大小様々なミスや人間関係トラブルがしばしば発生する。
○食事を楽しむ気力がなくなり、食欲が低下してやせてくる。
○免疫機能が低下し、風邪や感染症にかかりやすくなる。
→長期的にはがんを発症しやすくなる。
○糖尿病、高血圧、心臓病、脳血管障害になるリスクが高まる。
→最悪の場合は過労死。
○自律神経の働きが崩れ、動悸(どうき)、めまい、胃腸障害など体調不良が本格化してくる。
○正常な思考力、判断力が低下し前向きな発想ができなくなる。本格的な不眠症やうつ病が発生する。
→最悪の場合は自殺。
このように疲労の蓄積がもたらす恐ろしい悪影響は枚挙にいとまがありません。しかもこれは男女の別なく、誰にでも起こり得るれっきとした医学的な事実なのです。
過労は「サイレントキラー」
さらに恐ろしいことに、過労はいわば「サイレントキラー」です。本人が気付かないままじわりじわりと疲れが蓄積していき、元来が丈夫で健康な人ほど決定的な症状が出てくるまで時間がかかります。そのためぎりぎりの状態になるまで気付かない人も多く、実際、過重労働面談をしていると、体力や気力がなまじある男性ほど、先述の過労の初期症状が起こっていても無頓着でまったく気付いていないとことがよくあります。
そして最も怖いのが「過労死」です。疲労が高度に蓄積すると、何の持病も持っていなかったはずの人が急に不整脈、心筋梗塞や脳出血、脳梗塞といった致命的な病気を発病して頓死してしまうことがあるのです。
そんな事態を防ぐためには、働く人自身のセルフケアだけではなく、経営者や管理者の安全配慮に対する意識改革が大変重要になってきます。次回は主に経営者や管理者が知っておかねばならない重要事項についてお伝えしたいと思います。
精神科医(精神保健指定医)・産業医・作家。1992年山口大学医学部卒。精神科臨床および都内18カ所の産業医として日々多くの働く人のメンタルケア・ヘルスケアに関わっている。執筆活動にも力を入れており「1分間どこでもマインドフルネス」(日本能率協会マネジメントセンター)、「一流の人はなぜ眠りが深いのか」(三笠書房)など著書多数。日本マインドフルネス普及協会を立ち上げ、日本人にあったマインドフルネス瞑想(めいそう)の普及も行っている。