市川中学・高校理事長の古賀正一氏

 古賀氏は理事長を兼任したが、東芝でもパソコンや家電部門など全体を統括するなど業務はますます忙しくなった。学校経営自体は副理事長らに任せていたが、少子化もあり、進学実績が伸び悩んだ。

千葉県の私立校の代表格だったが、渋谷教育学園幕張高校(千葉市)など新興校が急進。「東大合格者も2人とか、3人とか、数える程度に落ち込んだ」。校舎も老朽化しており、1995年の阪神大震災もあり、安全対策を打つ必要性も出ていた。

新校舎建設、男女共学制に

「学校のシステムなどソフト、校舎などハードもすべて変えよう」。2000年、古賀氏は東芝退任を機に、学校経営に本腰を入れることを決めた。03年に市川市郊外に校舎を全面移管し、巨大な最新校舎を建設。男子校だったが、男女共学制に移行した。

学校改革を推進するため、ビジネスで培ったノウハウを活用した。理事長や校長ら9人で構成する「教育経営会議」を設け、意思決定の場とした。

だが、「学校とはなんて遅れているんだ」と驚いたという。「いつまでに何をやるのか」と尋ねても、先生たちは「手の空いたときにやります」という具合だ。市川中高の専任教師は約120人で職員を含めると約200人、まず教師の人材育成の必要に迫られた。

PDCAも回す

企業のように中期計画を策定し、PDCA(計画、実行、評価、改善)を徹底することにした。先生たちに目標を立ててもらい、施策の発表、実行後は評価する。個人評価を嫌がる先生が少なくないが、賞与の0.5カ月分は評価で決める。

「あえてPDCAを回すことにしたが、一方で先生たちの負担も減らした。とかく教師は繁忙すぎる。自分で何でもやるため、コピー取りも1時間以上かけている。これではダメ。教師は授業の準備と生徒との対話に時間を割かないといけない」と補助業務をサポートするため多くのパートを雇用した。

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オープン授業を導入