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パリ・オペラ座バレエ団来日公演 若手スターに聞く

2017/3/1

 世界屈指のバレエ団、パリ・オペラ座バレエ団が3年ぶりに来日。3月2日から8日間、10回にわたる公演を行う。古典からモダンな作品まで織り交ぜたプログラムだが、注目は19世紀にパリ・オペラ座で初演され、バレエ史に決定的な変革をもたらしたといわれる「ラ・シルフィード」。どんな作品なのか。魅力や見どころについて、主役を務めるトップダンサーたちに聞いた。

 パリ・オペラ座バレエ団は17世紀、フランスの「太陽王」ルイ14世が創設した王立舞踊団が始まりで、350年を超える歴史のある世界最古のバレエ団だ。

 狭き門をくぐって入団がかなったダンサーのうち、エトワールというトップスターになれるのはごく一部。中でもカリスマエトワールと呼ばれる、オレリー・デュポンが2016年8月にバレエ団の芸術監督に就任した。初の来日公演には実力派だけでなく、伸び盛りの若手のダンサーや振付師を採用した演出に注目が集まっている。

インタビューにこたえるパリ・オペラ座バレエ団のエトワールのレオノール・ボラックさん(右)とマチアス・エイマンさん。聞き手は槍田真希子(2月27日、東京都港区)=撮影 田上龍一

 バレエ団の強みはどこにあるのか、今回主役を務めるエトワール2人に尋ねた。実力派のトップスター、マチアス・エイマンさんがまずあげたのが、バレエ団の真の実力を計るとされる群舞の美しさ。「ダンサーの一糸乱れぬ動きは、他のバレエ団に比べても抜きんでていると思う」

 昨年末に抜てきされたばかりの新星エトワール、レオノール・ボラックさんは「衣装や舞台装置の細かい装飾へのこだわりには驚かされる。間近で見ても、本当に美しい」と話す。

 今回の演目の一つ、「ラ・シルフィード」はロマンチックバレエの傑作で、1832年にパリ・オペラ座で初演された。人間の青年と白い空気の精「ラ・シルフィード」の神秘的な恋を描いた作品は、チュチュと呼ばれる白く透ける布でつくる妖精の衣装や、つま先立ちで軽やかに踊る技法などが見る人を魅了し、一大ブームを巻き起こした。その後、上演が途絶え、失われかけていた作品を1972年にフランスの振付師ピエール・ラコットが現在の姿に復元した。

パリ・オペラ座バレエ団の「ラ・シルフィード」上演シーン=(c)Ann Ray/OnP 

 パリ・オペラ座バレエ団の元エトワールで、現在教師を務めるジャン・ギヨーム・バールさんによると、この作品の見どころは「妖精を演じるダンサーの動きの軽やかさ。今は足を高く上げる振り付けがはやりだが、この作品では手も足も低い位置で、空気のようにふわっと動かさなくてはならない。他にも速いステップや、空を舞うようなジャンプなど高い技術と演技力が必要となる」。

 公演を控え、目黒区の東京バレエ団のスタジオで練習するエイマンさんとボラックさんの様子をのぞいた。音楽に合わせた振り付けのタイミングや、足の位置、目線といった細かい調整が続いていた。驚いたことに、高いジャンプや早いステップを踏んでも、ほとんど足音が気にならない。常に笑みを絶やさず、ゆったり、楽々踊っているように見えるが、流れる汗と合間の激しい息づかいから大変な運動量であることが伝わってくる。

 エイマンさんは、今回演じる青年について、「婚約者がいながら妖精に心を奪われ、最後には全てを失う。古典ながらも現代に通じる物語だから、共感を持って見てもらえるよう、日常の動作や表現を取り入れながら踊りたい」と話す。

 このほか今回の来日公演では20世紀の巨匠の傑作とされるジョージ・バランシンの「テーマとヴァリエーション」や、ジェローム・ロビンズの「アザー・ダンス」などが上演される。クラシックから現代作品までレパートリーの幅が広く、さまざまなスタイルを踊りわける高い技術や表現力を持つパリ・オペラ座バレエ団の魅力がつまった公演となりそうだ。

(映像報道部 槍田真希子)

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