ドローンのミニ四駆? だれでもレース楽しめる新機種

日経トレンディネット

京商のDRONE RACER。近未来の世界を描いた映画に出てくるクルマのようなスタイルが個性的なデザインだ。価格は、送信機やバッテリーが付属した「レディキット」が2万2000円前後
京商のDRONE RACER。近未来の世界を描いた映画に出てくるクルマのようなスタイルが個性的なデザインだ。価格は、送信機やバッテリーが付属した「レディキット」が2万2000円前後
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ドローンで速さを競うドローンレース。それを簡単に楽しむためのドローンとして、古くからR/Cカー(ラジコンカー)などを手がけてきた京商が2016年末に発売したのが「DRONE RACER」(ドローンレーサー)だ。

ドローンを使ったレースは、これまでFPV(ファーストパーソンビュー、一人称視点)で飛ばすスタイルが主流となっていた。ドローンに積んだカメラから送られてくる映像をモニター用のゴーグルで見ながら操縦する仕組みで、ドローンを直接見ながら飛ばすよりもはるかに難しい。さらに、レース用のドローンはシャシー(機体)やモーター、コントローラー、カメラといったパーツを用意して組み立て、さらに自身で調整をする必要がある。難易度が高いことから、現状では一部の詳しいマニアが手を出すにとどまっている。

DRONE RACERはFPVのレース用ではなく、ミニ四駆のようにDRONE RACER同士でレースを楽しむための専用機だ。多くの人にドローンでレースを楽しんでもらえるよう、何よりも手軽さを重視したのがポイントだ。機体は完成済みなので購入後の調整はいらず、フライトは機体を見ながら操縦できるので、FPV方式のドローンよりもはるかにとっつきやすい。外観は、F1をはじめとするフォーミュラーカーを模した親しみやすいデザインに仕上げ、“未来のクルマ”というコンセプトでファミリー層を中心にファン獲得を狙う。

DRONE RACERは、フォーミュラーカーを連想させるデザインに仕上げた。ボディータイプは2種類で、こちらは「G-ZERO」(ジーゼロ)
こちらは「ZEPHYR」(ゼファー)だ。いずれも塗装済みで、買ってきてすぐに飛ばすことができる

操縦方法も工夫した。一般的なドローンは前後左右に加え、上昇下降と左右回転という4つの動きを制御するために、4ch(チャンネル)以上の操作系を持った送信機を使う。2本のスティックで4つの操作を同時にこなさなければならず、慣れないとスムーズに操作するのは難しい。

DRONE RACERでは、R/Cカーと似た構造の送信機を採用し、前後進をピストルグリップのトリガー(引き金)で、右左折をステアリングホイールで操作できるようにした。ステアリングホイールを左右に回すことで、機体の左右と左右回転の動きを自動的に調整するので、クルマが進むのと同じように左右にカーブを描きながら曲がっていく。

操縦しやすさの最大のポイントは上下方向の操作を不要にしたことだ。機体に搭載した超音波センサーと気圧センサーで高度を一定に保つ機能を持つ。R/Cカー感覚で簡単に操縦できる。R/Cカーを楽しんだことがある人はもちろんのこと、初めての人であっても直感的に操作できるだろう。

離陸と着陸は、送信機のスイッチ操作で自動的にできる。飛行高度は、原則として常に地面との距離を一定に保つため、飛行コース上にジャンプ台のような急な上り坂があっても地形に合わせて高度を上げてくれる。変化に富んだ地形の飛行も容易なのが頼もしい。

機体下面に装備された超音波センサー。内蔵された気圧センサーとともに、高度を自動制御するのに機能する。高度は、送信機のスイッチで地上約35cmもしくは60cmが選べる

ミニ四駆のようにパーツ交換でチューンアップの楽しさも味わえる

DRONE RACERはR/Cカーと同じく、ポリカーボネート製のボディーカウルを採用する。製品は最初から塗装されているが、オプションパーツの透明なボディーカウルを購入すれば、市販の塗料を使って思い思いのカラーリングを楽しむことも可能。ボディーカウルのほかには、標準よりも高出力のモーターや高回転型のギア、軽量のネジといったオプションパーツが豊富に用意されていて、飛行スピードを高めるといったチューニングを施す楽しみもある。

DRONE RACERのオプションパーツ。透明なパーツは、自分で好きな色に塗装できるクリアボディーだ
よりスピードの出るモーターやギアのセットも用意されている

ドローン練習場でドローンレース大会を実施

DRONE RACERを使った日本で初めての本格的な競技会が、2017年2月4日にドローン練習場「ドローン・サーキットSPLASH横浜ベース」(横浜市青葉区)で開催された。SPLASH横浜ベースは、おもにFPVレースドローンの操縦を訓練したり、レースイベントを提供する場として2016年秋にオープンした。ドローンは航空法で飛行できる場所や方法が定められていて、人口密集地がほとんどを占める東京や神奈川、埼玉などではドローンを飛ばせる場所があまりない。それを受け、工場や倉庫といった大きな空間のある施設をドローンのために流用した施設が首都圏の近郊に続々とオープンしている。SPLASH横浜ベースは、そんなドローン練習場のひとつだ。

ドローン・サーキットSPLASH横浜ベース内に設置された1周約30mのコース
透明な梱包用フィルムで作られた上り坂は上級者用。ここに沿ってDRONE RACERを飛行させると、自動的にこの坂を上っていく
機体同士が至近距離を追い抜き追い越せで飛行する接近戦が繰り広げられていた

夜の19時30分から始まったイベントは2時間ほどで決勝レースを終え、22時過ぎには参加者が家路についていった。R/Cカーのレースの多くは、早朝から日没まで一日がかりのイベントとなるのが一般的なので、それと比べるとあっさりしている。

「ドローンレースの楽しさ、奥の深さを広く知ってもらいたい」と語る京商の鈴木明久社長

京商の鈴木明久社長は「R/Cカーのレースは内容があまりに先鋭化したことで、ユーザーがレースから離れてしまう傾向があった。DRONE RACERはその反省をもとに、誰でも気軽に参加できるように心がけた。その1つが開催時間。まる1日参加者を拘束してしまうようでは途中で脱落する人も出てくるし、はなから敬遠されてしまう。そこで、2時間で終わることを目標にイベントを企画した」と語る。この“誰でも気軽に楽しめる”というコンセプトが、DRONE RACERの大きな特徴といえる。

気軽に始められるよう参加のハードルを下げる一方で、パーツ交換でさらなるパフォーマンスアップを目指したり、PCを接続してコントローラーの設定を変更するとスピードや操縦性を高めたりできるようにした。ミニ四駆にも通じる“いじる楽しみ”も盛り込んだわけだ。この日のイベントも、親子連れの参加者が多数見受けられた。

京商で広報・マーケティングを担当する矢嶋孝之グローバルマーケティングマネージャーは、「今回のレースは京商が開催したが、あまりメーカーがレースにかかわりすぎると、いきおいレースがとがったものになりがち。今後は、DRONE RACERのオーナー同士でレースを開いて楽しんでもらえる環境作りをサポートしていきたい。より多くの人にDRONE RACERに触れてもらえるよう、体験会などのイベントも用意する」と話す。

レーシングカーに似たスタイリングと操縦感覚から、ドローンユーザーに多いR/C飛行機やR/Cヘリコプターなどの経験者だけでなく、圧倒的に多いR/Cカーのユーザーも親しみやすいのがDRONE RACERのポイントだ。ドローン特有の難解な操縦性や扱いを極力排したDRONE RACERは、世代を超えてユーザーの幅を広げることも期待されている。子どものころにミニ四駆で遊んだことが、大人になってプラモデルやR/Cカー、さらには実車に興味を広げるきっかけとなったように、このDRONE RACERでドローンに興味を持ち、空撮をはじめ測量や点検といった職業としてのドローンパイロットを子どもたちが目指すきっかけになるかもしれない。

レースで30名、体験会で約20名の参加があった今回の大会は、子ども連れのファミリーの姿も目立った。SPLASH横浜ベースでは、今後も同じような競技会を開催していく予定だという

(ライター 青山祐介)

[日経トレンディネット 2017年2月14日付の記事を再構成]

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