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東京ふしぎ探検隊

世界の地下、一番深い場所は? 日本一は新潟県に

2017/2/24

JR上越線の土合(どあい)駅=PIXTA

 大都市の地下は迷路のようだとよくいわれる。「東京ふしぎ探検隊」ではこれまで、東京の地下空間を様々な角度から検証してきた。だが世界に目を向けてみると、地下はさらに奥深い。そもそも世界で一番深い場所はどこなのか。人類はどこまで深く到達できたのか。調べてみた。

■ロシアに12kmの穴があった

 まずは世界一深い人工の穴。石油技術協会によると、ロシア北西部、ノルウェーとの国境近くにある「コラ半島」に、地表からの深さ1万2261メートル(m)の穴があるという。キロに直すと約12キロだ。

 実に富士山の高さの3倍。世界最高峰のエベレスト(8848m)と富士山(3776m)を足してようやく届く深さだ。地上から1万2000mというと、国際線の飛行機が到達するあたり。海底でみても、最も深い太平洋マリアナ海溝の約1万900mより深い。

 ロシアは何のためにこれほどの穴を掘ったのか。石油技術協会の資料によると、目的は科学掘削という。地下深くはどんな岩石からできているのかなど、地下環境を科学的に調べるためだ。

 地球は大きく分けて3つの層からなっている。表面を「地殻」が覆い、その下に「マントル」、中心部に「核」がある。卵に例えるなら、地殻は卵の殻で、マントルが白身、核が黄身といった具合だ。

 穴が掘られたのは旧ソ連時代。1970年に掘り始め、92年に最深部に達した。計画では1万5000mを目指してさらに掘り進めるはずだったが、地下の高温に阻まれた。石油技術協会の資料には「坑底温度 205℃」と書いてあった。

■地下開発は温度との戦い 200℃超の場所も

 長年、土木工事に関わってきた地下の専門家で、地下空間利・活用研究所所長の粕谷太郎さんは「地下の掘削は温度との戦い」と話す。粕谷さんはかつて、高温で油の粘性が弱まり、油圧式の機械がうまく動かなくなったことがあったという。

 場所によっても異なるが、一般的に深く掘るほど高温になりやすい。火山が多い日本では6000m前後で200℃に達するといい、新潟県で資源調査のために掘られた6300mの穴でも、底面の温度は200℃前後まで上昇したという。

 実は日本でも、1万mまで掘る計画があった。その名も「日本列島における超深度掘削と坑井利用観測(JUDGE)計画」。候補地は静岡市周辺、千葉県の房総半島南部、神奈川県の三浦半島南部の3カ所で、フィリピン海プレートの動きを直接監視するのが狙いだ。

 90年代前半から議論され、日本経済新聞朝刊でも「深~い穴掘り 地震探る」(93年3月7日付)として取り上げた。技術的に乗り越えるべき壁が多く、いまだに大きな進展はない。

 ただ、1万m(10km)の深さといっても、地球全体からみればほんの表層だ。地殻の厚さは30~50kmあるといわれており、人類の英知を結集したプロジェクトも、ごく一部をつついたにすぎない。

■南アの鉱山は4000m スーパーカミオカンデは1000m

 科学的な掘削は機械が到達した穴だ。では、人類が降り立った最も深い場所は、どのくらいになるのだろうか。

 「公表されている範囲では、南アフリカの金鉱山が最も深いのでは」と粕谷さん。ムポネン鉱山、タウトナ鉱山がともに4000m前後まで掘り進められているという。両鉱山を運営するアングロゴールド・アシャンティ社の年次報告書(2015)を見てみると、ムポネン鉱山では3900m、タウトナ鉱山だと3480m付近で採掘されているようだ。到達ベースではもっと深いと思われる。

旧神岡鉱山の地下にあるニュートリノ実験施設スーパーカミオカンデ(日経サイエンス提供)

 「これほどの深さでは温度と酸素不足が問題になる」と粕谷さんは話す。空調設備をそろえ、空気を送り込みながらの作業になるという。10年にチリで起きた落盤事故でも注目されたが、地下深くにある作業現場は、人間にとっては過酷な環境だ。

 国内の深い鉱山では岐阜県飛騨市のスーパーカミオカンデが有名だ。旧神岡鉱山の跡地にあり、深さは地下1000m。東京大学宇宙線研究所が運用する観測装置で、15年に梶田隆章さんがノーベル物理学賞を受賞したのは記憶に新しい。

 人工的な鉱山ではなく、自然にできた深い穴もある。洞窟だ。世界にはとてつもなく深い洞窟がある。現在、判明している中で最も深いとされているのが、ジョージア(グルジア)にある「クルベラ洞窟」。2196mまで確認されている。

 日本では、新潟県糸魚川市に深い洞窟が集結している。日本最深が「白蓮洞」で513m。次いで「千里洞」の405mだ。2000m級と比べると浅く感じるが、それでも東京タワー(333m)がすっぽり入る深さになる。

 「福井や愛知は東日本? 東西境界線の謎」(16年10月7日公開)でも触れたが、糸魚川市といえば、東日本と西日本を分ける「糸魚川静岡構造線」で知られる場所。地理好きには興味深い土地だ。

■ホームまで10分 群馬県に地下70mの駅

 一般の人が入れる場所ではどうか。以前、東京周辺で調べたときは、東京湾アクアラインで57m、都営大江戸線六本木駅で42.3mだった。「B8には何が… 知られざる地下の背比べ」(16年1月15日公開)を参照してほしい。

 国内では、上越新幹線の大清水トンネルが1300mと深い。ただしこれは地表からの深さになるので、山岳地帯だと数字が大きくなりがち。青函トンネル内にかつてあった吉岡海底駅が149.5m。現存する駅ではJR上越線の土合(どあい)駅が70.7mだ。

首都圏外郭放水路(埼玉県春日部市)は地下50mにある

 土合駅は「日本一のモグラ駅」の愛称で知られている。時刻表を見ると、欄外に「ご注意…土合駅は改札口から下りホームまで約10分かかります」と注意書きがあるほど。地下好きなら一度は訪れたいスポットだ。

 世に高い場所が好きな人がいるように、地下にロマンを感じる人もいる。バブル期には地下はフロンティアとして脚光を浴びた。建設各社が発表した地下都市計画、通称「ジオフロント構想」だ。

 最近ではリニア中央新幹線が大深度と呼ばれる地下40m以深を走る予定。地下の開発競争は、まだまだ終わらない。

(生活情報部 河尻定)

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