ASUSの円形スマートウォッチ iPhoneとも使える
ASUS(エイスーステック・コンピューター)は2016年12月、スマートウォッチZenWatchシリーズの最新モデル「ZenWatch 3」(3万3000円~)を発売した。
ZenWatch 3は円形ディスプレーを搭載し、サイドのボタンでアプリを素早く起動できるなど、従来機から改良されている点が多い。今回はAndroid Wearを搭載するZenWatch 3を、あえてiPhoneと組み合わせてレビューする。
デザインを一新、完全な円形に
日本で初代ZenWatchが発表されたのは2014年10月のこと。SIMフリー市場の火付け役となったスマートフォン(スマホ)「ZenFone 5」と同時に発表され、注目を浴びた。当時はまだスマートウォッチのバリエーションは少なかったこともあり、ラグジュアリー感を打ち出したデザインは先駆的であった。
初代ZenWatchシリーズは四角形のディスプレーを採用した。アナログ時計でいう「レクタンギュラー(長方形)」よりも横幅が長い、スマートウォッチらしい形状が特長だった。2015年11月に発売されたZenWatch 2でもこのデザインが採用されている。
ただしディスプレーはベゼル部分が広く、ケースの大きさの割に表示部分が小さい、というマイナス点もあった。
新しく発売されたZenWatch 3では、デザインが一新されている。完全な円形ディスプレーを採用し、クロノグラフのようにサイドボタンを搭載した。サイズ感としては男性向け時計に近いが、従来通りのラグジュアリー感は健在だ。
評価できるのは、円形ディスプレーを採用するモデルにしてはきょう体が薄いこと。本革バンドも長時間装着するのに適している。バンド・ケースともに暗めのカラーを選択すれば、普通のアナログ時計に近い感覚でコーディネートしやすい。
スペックとしてはCPUにSnapdragon Wear 2100を搭載。メモリー容量は512MBで、4GBのストレージを備える。また、加速度、ジャイロを含む6軸センサーのほか、光センサーを内蔵。Bluetooth 4.1をサポートしている。
iPhoneと組み合わせて使える
ZenWatch 3はOSにAndroid Wearを搭載する。ZenFoneシリーズのスマホをはじめ、Android 4.3以降、およびiOS 8.2以降のOSを搭載するスマホとペアリングが可能だ。今回はiPhone 7とペアリングして利用してみた。この場合、ペアリングは「Android Wear」アプリ経由で行う。
なお、ZenWatch 3とiPhoneの連携を維持するには、iPhone側でAndroid Wearアプリをバックグラウンドで起動させておく必要がある。
ZenWatch 3のディスプレーサイズは1.39インチあり、大きくて見やすい。文字盤にはカレンダーのウィジェットなども表示でき、タップで素早くアプリを起動できる。タッチ感度も良好だった。
やや不満を感じたのは、たまに英語表記や不自然な日本語が出てくること。アップデートで改善されることを期待したい。
使えない機能は?
iPhoneと接続した状態でも「Google翻訳」や「タイマー」などのAndroid Wearの標準機能が使える。また、音声操作も利用できた。「OK Google」と唱え、「近くのカフェ」などと検索キーワードを言えば、スマホを取り出さずに簡単な検索が行える。
Google検索の結果はiPhoneにも共有可能だ。iPhoneでは通知に「null」と表示されたが、タップすれば検索結果をスマホ画面で確認できた。
一方、iPhoneでは活用できない部分もあった。例えば、ZenWatch用のヘルスケアアプリ「ZenFit」などは、ウォッチ側で起動して数値を計測できるが、iOS版のアプリがないため、スマホ側でデータの管理ができない。
こうしたオリジナル機能を活用するためには、Androidスマホとペアリングする必要があるが、これらの機能にこだわりがなければ、iPhoneとペアリングして使っても不自由はない。
サイドボタンですばやく起動
ZenWatch 3はクロノグラフのようなデザインになっている。サイドには3つのボタンが搭載され、それぞれ異なる機能が割り当てられている。
上部のボタンではアプリをショートカット起動できる。デフォルトでは「ZenFit」を起動する設定となっているが、プリインストールされている「Button setting(ボタンセッティング)」アプリからカスタマイズ可能だ。「カレンダー」など、頻繁に使用する機能を配置しておくことで便利になる。
中部のボタンは押し方によって機能が変わる。1度押しではホーム画面に戻り、2度押しでは「アンビエントモード」や「シアターモード」などの表示機能をオンにできる。また、長押しすればメニューが表示される。
下部のボタンを押すと、「Ecoモード」が起動する。これはバッテリーを長持ちさせたい場合に使用するモードで、端末は機内モードとなり、タッチ操作も不可能になる。
Ecoモードはボタンを押せば解除されることになっているが、再表示されてもタッチできないままになるバグが発生した。この場合には、中部のボタンを押し続けて、再起動させる必要があった。アップデートで早めの改善を希望したい。
Apple Watchとどこが違う?
Android Wearはディスプレーを表示し続けられるのがメリットだ。しかし、その分バッテリー消費が速い。普段Apple Watchを使用している筆者としては、バッテリーに不満を感じた。
例えば、iPhoneとペアリングして使用した場合で比べると、Apple Watchは100%満充電から5時間使用して90%以上残っているが、ZenWatch 3では70%まで減る。毎日の充電は必須だ。
充電ケーブルはマグネット式で、ケースの裏面に貼り付けて充電する。ただし、ワイヤレス給電ではなく、端子で接続するため向きが固定されている。同じマグネット式でもワイヤレスで充電できるApple Watchと比べると、やや不便に感じた。
メリット・デメリットは?
ZenWatch 3のアナログ時計らしいきょう体デザインは筆者には好印象だった。円形ディスプレーになったこともあり、従来機と比べて操作感も向上している。ただし、大きさが増したため好みが分かれるだろう。筆者としては、黒などの落ち着いたカラーがおすすめだ。
OSにAndroid Wearを採用しているが、筆者のiPhone 7とペアリングしても、十分に活用できた。OK Googleを使った音声検索も利用できる。クイック起動ボタンやウィジェットをカスタマイズすれば、使い勝手はより良くなる。
ただし、ASUSのオリジナルアプリはフル活用できないこと、そしてApple Watchと比べるとバッテリーに弱さがあることはデメリットだ。
こうした長所短所を理解した上で、アナログ時計らしいデザインを重視するなら、購入する価値は十分にあるだろう。
(ライター 井上 晃)
[日経トレンディネット 2017年2月2日付の記事を再構成]
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