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トップは逆境を超えて

2017/2/25

トップは逆境を超えて

創業メンバーが次々と辞めていった

――そうした施策をとるようになった原点を教えてください。

「会社を立ち上げたばかりのころ、創業メンバー5人中3人が次々に辞めていくということがありました。私は仕事がしたくてしたくて仕方がなかったので、みんなも同じだと思い、がんがん働かせていたんですね。そうしたら次々と倒れていった。私はもともと体育会系なので、『根性がない』『本人のせいだ』と勝手に思っていたんですが、ある経営者と出会い、『原因自分論』という考え方を教わりました。自分に原因があったんだと」

1年間で1000人の経営者に会って経営を学んだ

「そこから1年間で1000人の経営者に会いに行き、学ぶことを決めました。早朝から午後まで、勉強会や懇親会に参加して、先輩経営者に話を聞いてもらいアドバイスを仰ぎました。仕事は日中は従業員とメールでやりとりしながら、それでも足りないところは会社に帰ってからやっていました」

「そうしたなかで感じたことは、『素晴らしい経営者は社員を大切にしている』ということでした。そこで、それを徹底的にやっていこうと。社員を大切にしているというレベルじゃなくて、『社員第一主義』というくらいに持って行こうと考えました」

「私自身は就職したことがないのですが、自分が就職したい会社ってどんな会社だろうと考えました。やりたいことをやらせてもらえたらうれしいし、ちゃんと評価してもらいたいし、休みもほしいし、すばらしい仲間に恵まれてたいし、会社の事業も面白い――。そうしたことを、妥協せずに追い続けてきたということはありますね」

――1000人の経営者と会った結果、まず何をしましたか。

「翌年、一気に会社の改革に取り組みました。まず、自分の魂が入った経営理念をつくろうと思いました。以前はIT企業なので『経営理念なんていらない。面白い製品をつくって稼げればいいや』と思っていたんですけど、ちがうと。『会社の柱となり、最後の砦(とりで)になるのが経営理念だ』と考えるようになりました。経営理念すなわち経営者ですから、経営理念の前に自分の理念が必要だと思い、真剣に考えました」

「そこでたどり着いたのが、『自分の周りにいる人を幸せにするために自ら積極的に行動する』という理念です。『周りの人』は何かというとまずは自分。自分が幸せでないのに他人を幸せにすることはできない。次に家族、社員、顧客、地域、日本、世界と、同心円状に幸せにする人の輪を広げていく。経営陣は社員のことを考え、社員は顧客のことを考え、満足してもらうということなんです」

シリコンバレーに軸足 世界を知る

――シリコンバレーを拠点にしていますが、どのようなメリットがありますか。

「生活の基本は向こうで、妻と子供2人も米国に住んでいます。私は1、2カ月に1回、日本に戻っています。去年は2、3カ月に1回でした。1回の滞在は2週間ほどですから、去年はトータルで2カ月も日本にいなかったですね」

「成果はいろいろありますよ。売り上げという意味ではまだまだですが、グローバルと日本の働き方、マネジメント、マーケティングの違いなど、日本国内では得られなかった知見と経験が得られています。経営者としても幅が広がったかなと思います。米国にヒト、モノ、カネ、すべてが集まるじゃないですか。そこに行かないと得られない情報やチャンスがたくさんあります」

――米国進出にあたり、どのような苦労がありましたか。

「シリコンバレーに拠点を設けた際、1年間のビザ(査証)だったのですが、それが更新できず、一時帰国していた日本から米国に戻れなくなってしまいました。全てをかけて挑戦していたので、目の前が真っ暗になりました。落ち込んで何もできず、最初の3日間くらいずっとシャワーを浴びていました。『ワーッ』って叫びながら」

「日本発のITサービスが世界で当たり前のように使われるようにしたい」

「1年のビザを取るのも大変だったのですが、更新するときには、『雇用を生むか』『税金を落とすか』で判断されます。最初の1年はある意味、試用期間みたいなものです。弁護士からは『半年のうちに契約社員が2人いたら更新できる』と言われましたが、心配だったので4人雇ったんです。『絶対通る』と思っていたら、落ちたんですよね」

「2、3週間悩んだんですが、『再申請してだめだったら、なかったことにしよう』と気持ちを入れ替えました。いい弁護士を紹介してもらい、4人の契約社員のうち2人を正社員という扱いにして再申請したら、それが通ったんです。払っている給料も変わっていないのに」

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