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代ゼミ復権のカギを握るSAPIX 競う中学受験トップ

2017/2/11

SAPIX・代ゼミ共同代表の高宮敏郎氏

 大手予備校や塾などを展開するSAPIX・代々木ゼミナールグループ。地方の代ゼミ校舎を閉鎖するなど構造改革を断行したが、再生の切り札とするのがグループの学習塾「SAPIX」だ。11日までに首都圏の中学受験の最終結果が確定するが、2017年もSAPIXが有名進学校の合格者数でトップを守るのは確実だ。関西圏にも進出、幼児教育・中学受験から大学までの一貫体制を構築し、受験の覇者復権を狙う。

■開成中に200人超合格 今年もトップ

 「あった!」「受かったのか」――。2月3日の昼すぎ、東京・西日暮里の開成中学でどよめきが起こった。開成中の入試結果の掲示がされたためだ。受験生や保護者に交じって目立つのが塾関係者だ。今年、開成中の受験者は前年より9人多い1142人、うち合格したのは395人(1学年の定員枠は300人)だ。

SAPIX・代々木ゼミナールグループの本拠地「代ゼミタワー」

 「現時点で開成中のうちの塾からの合格者は205人でトップです。例年、補欠合格者を繰り上げるのでまだ伸びますよ」。6日、東京・代々木にある地上26階建ての高層ビル「代ゼミタワー」で、SAPIX・代ゼミ共同代表の高宮敏郎氏(42)はこう話した。代ゼミを創った高宮行男氏(故人)の孫にあたる。中学受験の場合、首都圏の有名進学校合格者の最終的な結果は11日ごろに確定する。開成中など都内の多くの有名中は1日に入試を実施、中学受験は短期決戦だが、この日に向け進学塾は激しい戦いを繰り広げる。

 各塾が競うのが、開成のほか筑波大付属駒場中学(筑駒)、麻布中学、女子校の桜蔭中学、女子学院中学など東京都内の受験トップ校の合格者数だ。

 「開成中のほか、麻布、筑駒、桜蔭、女子学院などもうちがトップを守っていますね、6日時点では筑駒は79人(全体の合格者数127人)です。特に桜蔭は184人(同269人)と躍進しています。あんまり数字にこだわりたくないのですが、どうしても塾はそこが求められますから」と高宮氏は話す。

 ライバルの早稲田アカデミーは6日時点で開成が82人、筑駒が27人、桜蔭が53人。それぞれ前年を上回る実績を上げているとしているが、いずれもSAPIXが合格者の占有率では5割を超えている。今年も首都圏の受験トップ校の中学受験に関してはトップを維持したといえそうだ。

■講師は専任制、半年はサブ

 なぜSAPIXは中学受験に強いのか。

 「まずは現場の先生の力です。講師は1教科専任制にしています。国算理社とそれぞれ専任講師としていますが、意外とほかの塾は小学生が相手だからと国語と社会とか、兼任しているところもある」(高宮氏)という。SAPIXの講師の数は約1000人。講師は半数近くが大学生・大学院生などの非常勤講師というが、学科試験をパスし、教科長などの面接を受けて選抜する。高宮氏は「しかも講師は時間をかけて育てます。最初から授業を持つのではなく、サブとして半年余りサポート業務を担い、授業力を磨いてもらう」と強調する。

 講師の時間給は2500円程度からと、他の学習塾と比べると若干高めの設定だ。「評価の高い講師になると、大企業の部長級以上の年収の方も少なくない」と高宮氏はいう。転職組の約7割は他の塾の講師出身だが、大手メーカーの研究職などから転職する講師も毎年10人単位でいるそうだ。

■入塾テスト、クラスは成績順

 ただSAPIXには入塾テストがあり、誰でも簡単に入れるわけではない。高宮氏は「ほかの塾さんとは違い、入塾テストがあります。低学年の方はほぼみんな受け入れられるのですが、高学年になると、ついてこられなくなるお子さんもいるので」という。SAPIXは原則、成績順にクラス分けする。1クラスの生徒数は15人から20人前後。個別指導塾が台頭しているが、「みんなと話したり、互いに競ったりする方が結果的にプラスになる」と高宮氏は話す。

 SAPIXに通っていた東京大学工学部3年生の男子学生は「海外から戻ったばかりなので、何をどう勉強すればいいかよく分からなかったが、SAPIXではそんなところから教えてもらった」という。桜蔭高校から東大理三に進学した女子学生は「医学部に来る子は、小学校の時はSAPIX、中学校から『鉄緑会』に通う人が多い。学校は違っても塾は同じなので、『塾友』として長くつきあう子が少なくない」という。

■関西の雄、浜学園と直接対決

代ゼミは幼児教育・中学受験から大学までの教育一貫の体制にシフトしてきた

 今春のSAPIX小学部の卒業生徒数は5004人。首都圏の1都3県に40強の教室のほか、大阪府・兵庫県に4教室を展開する。「関西に進出してまだ5年ですが、灘中学(神戸市)の合格者を伸ばし、首都圏と関西圏でのトップ塾を目指したい」(高宮氏)という。関西には「浜学園」という灘中受験に強い名門塾があるが、浜学園の本部がある西宮北口(兵庫県西宮市)にも教室を設け、関西でのブランド確立に躍起だ。一方の浜学園も駿台予備学校グループと組んで東京に進出。中学受験界では「東のSAPIX、西の浜学園」といわれるが、東西の両雄が直接対決を始めている。

 かつて代々木は浪人生の街と呼ばれた。1957年、高宮行男氏が設立し、代々木を核に全国展開した。90年代初頭には浪人生の数は全国で30万人規模になったが、現在は6万~7万人だ。2014年に地方の予備校校舎を大幅に削減することを表明した際は「代ゼミの凋落(ちょうらく)」と騒がれた。一方で09年から段階的にSAPIXをグループに取り込み、幼児教育・中学受験から大学までの教育一貫の体制にシフトしてきた。

■カドカワとも提携

 高宮敏郎氏は慶応義塾大学経済学部卒業後、三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)に入社。しかし、祖父に請われて25歳の時に代ゼミに入った。その後、米国に留学し、ペンシルベニア大学で教育学の博士号を取得。浪人生が激減するなど受験業界のニーズが変わるなか、新たな教育ソリューションのあり方を模索してきた。

 SAPIXを核とする戦略に見直し、川上量生社長が率いるカドカワと組み「代ゼミNスクール」を開設したり、「YGC」と呼ぶ海外大学の進学コースを新設するなど独自の試みを次々仕掛けている。今年は代ゼミが誕生して60年の節目の年。高宮氏は「2020年には大学の入試改革がスタートするが、グローバル化の進展するなか、幼児・小学生の段階から社会のニーズにあう人材教育を支援してゆきたい」という。代ゼミ復権のカギを握るSAPIX。新たな受験の覇者になれるのか、塾戦争はさらに白熱しそうだ。

(代慶達也)

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